「首相辞任」を受けて為替は円売りが先行しました。しかし政局混乱で日銀が利上げしにくいとの見方を否定する報道も出てきて円買い戻しが進行。次期政権の陣容・方向性が定まるまで為替は一定のレンジで上下しやすい状態が続きそうです。
「首相辞任」ドル円は148円半ばへ上昇
8日に行われる予定だった自民党内での臨時総裁選実施の意思確認を目前に週末7日、石破首相は緊急記者会見を開いて総裁辞任を表明しました。「首相辞任」のニュースに対して為替市場では円売りが先行してドル円相場は一時148.58円と、弱い米雇用統計で下振れた5日の値幅を帳消しにする動きとなりました(図表1)。
石破首相の辞任によって拡張的な財政政策を志向する次期政権が誕生するとの思惑が広がったことが支援となった形です。有力候補として、財政拡張的な政策を採ることが予想される高市前経済安全保障担当相などの名前があがっています。
次期政権への期待感は株式市場へより顕著に表れています。日経平均株価は初の44000円台まで史上最高値を更新しました(図表2)。
日銀利上げ関連報道で円売り一巡、成り行き見定める時間帯へ
ただ、ドル円相場は底堅い株価動向と相まって一定の下支えを得つつも、米利下げ観測の根強さもあって早々に反落しています。さらに9日の欧州市場では「日銀は国内政治情勢が混乱する中でも、年内利上げの可能性を排除しない」との一部報道が円買い戻しに拍車をかけ、8月14日以来の安値146.31円まで下振れる場面もありました。
同日、加藤財務相は「マクロ経済全体の明るい兆しが確かなものとなってきた」など発言。朝方には4-6月期実質GDP改定値が前期比+0.5%(事前予想・速報値+0.3%)、前期比年率で+2.2%(同+1.0%)と、想定外の改善を示していました。
日銀が10月公表の展望リポートで、成長率や物価見通しをともに上方修正するとの見方が高まってふいます。石破首相辞任を受けた不透明感もあって10月の利上げは難しそうではあるものの、次期政権が景気浮揚を意識するなかでも、いつまでも利上げを先送りはできないとの声が聞かれます。
また、次期政権の政策を決め打ちした円売りを一方的に進めることへまだ躊躇(ちゅうちょ)もあるようです。次期総裁の意向がどのような形で明確に示されるかや、連立政権再構築の内容など政局の変化を見極めていく必要がまだあります。
次期政権の方向性をにらんだ物色で底堅い推移が想定される株式市場の動向を支援としつつも、ドル円相場は政権移行に関連した不透明感が晴れてくるまでは一定のレンジ内で上下しやすい状態が続くことになりそうです。