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第162回 自民党総裁選と金融市場

日経平均、初めての4万4000円台

石破首相が辞任を表明した後、日経平均は堅調な動きが続いており、今週は史上初の4万4000円台を記録しました。新総裁の誕生によって政治の停滞が解消し、経済活動が活発化するとの見方があるようです。現時点において金融市場関係者の間で、有力視されているのは高市早苗前経済安全保障大臣と小泉進次郎農相です。高市氏は積極的な財政支出の拡大と金融緩和の継続を従来から主張しており、円安・株高を誘発するイメージがあります。一方、小泉氏は明確な方針は示していませんが、政策遂行能力に対する期待がありそうです。

 

市場が読むポスト石破

財政規律派と目されていた石破首相の辞任を受け、日本市場では今後積極的な財政出動を伴う景気刺激策の発動や日銀の追加利上げ時期が遅れる可能性が意識され、株式は大きく上げ、為替は円安、債券は先物に買いが見られています。

 

自民党総裁選は22日に告示し、10月4日に投開票を行うことになりました。今後、実際の立候補者を見極めながら、金融市場は思惑含みでボラティリティーの高い展開になる可能性があります。石破首相の退陣は緩和的な財政政策につながると受け止められているが、この場合、「インフレ上振れリスク」に対し日銀がどう対応するかが注目されます。

 

有力候補の高市氏

高市氏の政策スタンスは積極財政と金融緩和の組み合わせにより、市場ではハト派と見なされています。仮に高市氏が勝利すれば、日本株にとってはポジティブ材料となり、円相場は円安方向、債券市場はイールドカーブ(利回り曲線)のスティープ(傾斜)化につながる可能性が高いです。

 

有力候補の小泉氏

小泉氏は日銀の政策正常化を継続することに前向きとみられており、同氏が総裁選に勝利すれば、為替市場での円高進行とイールドカーブのフラット(平たん)化が想定されます。

 

総裁選の位置づけ、昨年と異なる

金融市場にとって今回の総裁選の位置づけは、昨年とは異なります。昨年の総裁選時には、与党は衆参両院で過半数の議席を維持していたが、現在は両院で過半数の議席を失い少数与党となっています。

 

従って、総裁選を勝ち抜き首相になっても、その人が掲げる政策は野党の協力がないと実現できません。高市氏が掲げる積極財政・金融緩和政策は、野党の協力が得られて初めて実現するものだが、野党との連携は、総裁選後までかなり不透明です。

 

新政権、連立が大きな注目点

現在、市場は誰が新総裁に選ばれるかに焦点を集めているが、総裁選で誰が選ばれるかだけでなく、その後、与党と野党との間にどのような連携がなされ、あるいは連立が組まれるかが注目されます。

 

高市氏は消費税の軽減税率を一時ゼロにする政策を掲げています。そうした減税策や積極財政政策は野党の主張と重なる部分があるため、野党の協力を得て実現できる可能性はあります。ただ、高市氏の右派色が強い外交・安全保障政策に野党が強い拒否反応を示す可能性も否定できません。

 

小泉氏が首相になれば、日本維新の会との連携は強まるとみられ、連立の可能性もあります。改革派のイメージを強め、日本維新の会の改革志向と重ねれば、規制緩和など改革が進むとの期待から株式市場には好影響が及ぶ可能性があります。

この連載の一覧
第162回 自民党総裁選と金融市場
第161回 英国の財政懸念
第160回 FRB理事の解任騒動
第159回 11人の次期FRB議長候補
第158回 「基調的な物価上昇率」
第157回 中国の政策金利
第156回 今年後半の米経済
第155回 日米合意、今後のドル円は?
第154回 トランプ氏、人民元の影響拡大の引き立て役になるか
第153回 香港ドル、キャリー取引が活発化
第152回 英国でもトリプル安
第151回 中東リスクに円買いではなくドル買い
第150回 悪いドル安
第149回 FX、マイルールを徹底
第148回 FX詐欺の手口
第147回 信認低下のドル、売り圧力が継続
第146回 半導体を制するものが世界を制する
第145回 米中会談、過度な期待は禁物
第144回 加ドル、米加首脳会談に注目
第143回 日米協議、円安是正に一安心も警戒残る
第142回 関税方針、トランプ氏の正念場
第141回 トランプ氏の脅かし、中国には通用しない
第140回 トランプ関税、ポンド相場への影響
第139回 RBA、追加利下げは5月か
第138回 英中銀、慎重な利下げペース維持
第137回 ドイツの大規模な財政拡大策
第136回 中国、今年GDP成長目標を5%前後に
第135回 米消費者信頼感指数、消費鈍化を示唆
第134回 リーダー不在のEU
第133回 各国中銀の利下げも、トランプ関税効果を薄めるか
第132回 円と加ドル、IMMポジションの変化
第131回 FX取引、投資詐欺に注意
第130回 FX、リスクも把握した上で取引を
第129回 トランプ氏VS中国
第128回 トランプトレードはいつまで続くか
第127回 ポジションの手仕舞い
第126回 今年最後の日米金融政策会合
第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる
第124回 尹韓国大統領の戒厳令騒動
第123回 ポジションの管理
第122回 ドル円、160円台復帰はあるか
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
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【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
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【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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