9月第1週は週間プラスが1銘柄
2025年9月第1週(9月1日~5日)のJ-REIT市場では、特異な動きが見られました。
この週は上場している58銘柄の中で、週間で上昇した銘柄が三井不動産アコモデーションファンド(3226)しかありませんでした。
大半の銘柄が売られる中で、日本プロロジスリート(3283)、GLP(3281)、日本ロジスティクスファンド(8967)、CREロジスティクスファンド(3487)など、物流系REITの下げが大きくなっています。なお、第1週のREIT指数は前週末との比較で1.5%安となりました。
財政不安で欧米の長期金利が上昇
この週は、欧米で長期金利が大きく上昇する場面がありました。イギリスやフランスで財政不安が高まったほか、アメリカでも米連邦控訴裁判所がトランプ関税を違憲としたことで、財政に対する不安が高まりました。
長期金利の上昇は、利回り商品のREITにはネガティブな材料となります。REIT指数は欧米の長期金利上昇がクローズアップされた9月3日に大きめの下げとなりました。
なお、長期金利の上昇に関しては一時的なものにとどまりました。9月5日に発表された米国の8月雇用統計が雇用の減速を示す結果となったこともあり、足元では欧米ともに長期金利の上昇には一服感が出てきています。REIT指数も9月第2週に入ると、欧米の金利上昇に対する警戒が和らいだことで底堅く推移しています。
高値圏でトレンドとは逆の動きが発生
第2週の落ち着きを見ると、前の週の下げに関しては利益確定売りにすぎないかもしれません。ただ、REIT指数は8月まで5カ月続伸と強い動きが続いています。指数が高値圏にある中で、多くの銘柄が足並みをそろえて下げたことに関しては注意を払う必要があります。
2024年3月の「先週のJ-REIT市場では●●がゼロでした!」では、2024年3月11日-15日週に下落銘柄がなかったことを取り上げました。この時のREIT指数は下値模索が続いていました。振り返ってみると、ここで下げ止まったわけではなく、同年8月や12月にも下を試す場面がありました。ただ、2024年3月の安値は1657pで、同年12月の1611pで底打ちしています。底値圏に近いところで多くの銘柄が拾われています。
弱い動きが続く中で多くの銘柄に買いが入れば、大底が近いとの期待が高まります。逆に、強い動きが続く中で多くの銘柄が一斉に売られた場合には、天井感が意識されやすくなります。
物流系の弱さは景気減速を示唆?
物流系の銘柄が弱かったことも気になる動きではあります。
市場は9月のFOMCでFRBが利下げを実施することを織り込んでいます。大幅な利下げがあるかもしれないとの見方もあります。米国の経済指標が弱ければ利下げに対する期待は高まりますが、その一方で米国の景気減速に対する警戒も高まります。
世界的に景気が減速した場合には、物流の停滞が予想されます。それを意識して物流REITが敬遠されているのだとしたら、単なる利益確定売りではない可能性を考える必要が出てきます。利益確定売りであれば、それまでに値動きが良かったものが売られやすくなりますが、物流系は他の属性に比べて今年のパフォーマンスが良いわけではありません。
ちなみに、9月第1週に唯一上昇した三井不動産アコモデーションファンドは住居系ですが、住居系は景気減速に対して相対的に強い属性とみられています。
戻せず1850pを割り込んでしまうと要注意
ここからは、まずはREIT指数が下げ止まるかどうかが注目されます。9月第1週に多くの銘柄が下げたとはいえ、その手前までの動きは強かったですし、この先、米国が複数回の利下げを実施するのであれば、世界的に長期金利が上がりづらくなることでREIT向きの地合いが継続することは十分期待できます。というよりも、現時点ではそういった見方の方が多数派であると思われます。
9月10日のREIT指数の終値は1907.35p、直近の高値は8月27日につけた1943.27pで、この日以降の安値が9月5日につけた1880.31pとなっています。大崩れすることなく1900pより上をキープできるようなら、今回の下げは天井を示唆するものではないと考えられます。
一方、もたついてしまったり、戻しきれないうちにもう一段の下げに見舞われた場合には、それが一時的な調整であっても下に値幅が出る展開は想定されます。心理的節目の1850pをあっさり割り込んでしまうようだと上昇一服感が出てきますので注意が必要です。