株の「買い時」とは、単に株価が下がった瞬間ではありません。企業の業績や成長性、配当・株主優待制度の魅力、権利確定日など様々な情報を踏まえて判断する必要があります。
9月に株主優待の権利確定日を迎える「森永製菓」と「極楽湯」はどちらも大手企業ではあるものの、株価下落や上場廃止の噂がささやかれています。今回は、この2銘柄について詳しくご紹介するとともに、「今買うべきなのか?」という点についても考察します。
森永製菓(2201)
森永製菓は、お菓子やアイスクリーム、栄養補助食品などを製造・販売する老舗食品メーカーです。特にチューイングソフトキャンディ「ハイチュウ」は海外でも人気が高く、アメリカや中国を始めとした世界30か国以上で販売されています。
食品販売事業のほかにも、業務用食品の開発や食物アレルギー検査キットなどの食品関連事業や、不動産賃貸事業、ゴルフ場経営など多岐にわたる事業を展開しています。
株価下落の理由と現在
2025年8月時点の株価は約2400円です。2014年までは約500円前後だった株価は、「森永製菓」と「森永乳業」の経営統合の噂に期待が高まり、2015年頃から上昇し始め、2017年には約3600円の高値が付きました。
しかし、2017年に経営統合の検討が終了すると、株価は急落し、2021年にかけて約1700円まで下落しています。その後約2年ほど約2000円前後を低迷していましたが、2023年以降は「ハイチュウ」での海外事業が拡大している影響から、株価は回復傾向にあります。
株主優待の自社製品詰合せはいつ届く?
森永製菓の株主優待は、毎年9月末の権利確定日に、100株以上の株式を6ヶ月以上継続して保有する株主に対して、株式の保有数および保有年数に応じて贈呈されます。贈呈される株主優待の内容は、自社製品詰合せまたは同等金額の寄附です。
自社製品詰合せは、毎年2月末から3月中旬頃に発送されます。毎年11月頃に送付される「株主優待のご案内」を参考に、「自社製品詰合せ」か「寄附」を選択した申し込みが必要です。ただし、申し込みをしなければ自動的に自社製品詰合せが選択されます。
2025年8月時点で、株式の保有数および保有年数に応じて贈呈される株主優待の内容は、下記の一覧表をご確認ください。
2026年度の配当金は年2回に変更
森永製菓の配当金は、これまで3月末の期末配当にのみ年1回配当されていましたが、2026年度は9月末の中間配当も行われます。配当金額は、9月末の中間配当で32.5円、3月末の期末配当で32.5円の、年間1株当たり65円となる予想です。
この金額は、2015年度15円、2016年度の17.5円、2017年度の22.5円、2018年度の25円、2019年度の33円、2020年度の36円、2021年度の40円、2022年度の45円、2023年度の50円、2024年度の55円、2025年度の60円から11期連続で増配しています。
森永製菓の利回り
1株2400円で100株購入した場合、投資金額は24万円です。配当金は6500円のため、配当利回りは約2.7%になります。また、6ヶ月以上継続して保有した場合、株主優待として年間で約1500円相当の自社製品詰合せが贈呈されるため、優待利回りは約0.6%、配当と優待を合わせた利回りは約3.3%です。
株式の保有数および保有年数に応じた配当と優待を合わせた利回りの一覧は、下記の表をご参考ください。
極楽湯ホールディングス(2340)
極楽湯ホールディングス(以下、極楽湯)は、国内外に53店舗を構える店舗数日本一のスーパー銭湯「極楽湯」および「RAKU SPA」を経営する企業です。アニメやゲームなどとのコラボイベントが人気の一つで、それらのイベント企画やECサイト運営も自社の子会社が行っています。
上場廃止危機からの脱出
極楽湯は、2020年に新型コロナウイルスによる影響から業績が悪化し、2022年3月末に債務超過による上場廃止の危機に陥りました。しかし、コロナウイルスの影響が落ち着いたことや、コラボイベントの好調により業績が回復し、2023年3月末に上場廃止の危機から脱出しました。
極楽湯の株価推移
2025年8月時点の株価は約500円です。比較的株価変動が大きく、2012年に約200円だった株価は、2017年に約1400円まで上昇し、2022年には再び約200円まで下落しました。上場廃止の危機を乗り越えた2023年に約500円まで上昇して以降は、約500円前後をほぼ横ばいで推移しています。
極楽湯の株主優待内容と使い方
極楽湯の株主優待は、毎年9月末の権利確定日に、100株以上の株式を1年以上継続して保有する株主に対して、株式の保有数および保有年数に応じて贈呈されます。贈呈される株主優待の内容は、「極楽湯」および「RAKU SPA」で利用できる無料入浴券です。
無料入浴券は、毎年11月末頃に発送され、翌年11月末までの有効期限となっています。「極楽湯」で利用する場合は1名利用につき無料入浴券1枚が必要で、「RAKU SPA」で利用する場合は1名利用につき無料入浴券2枚が必要です。
原則として1名につき1枚の無料入浴券で施設を利用できますが、店舗によっては、別途料金が必要になる店舗や、無料入浴券の利用ができない店舗があるので、注意が必要です。
2025年8月時点で、株式の保有数および保有年数に応じて贈呈される株主優待の内容は、下記の一覧表をご確認ください。
配当金は無配当が継続
極楽湯の2026年度の配当金は、無配となる予想です。2020年度以降、7年連続で無配当が継続しています。
森永製菓と極楽湯は今買うべき?
森永製菓の株価下落の噂は、経営統合による期待感が崩れたことから一時的に株価が下落しましたが、現在は回復しており、極楽湯の上場廃止の噂は、すでに危機を乗り越えています。ただし、極楽湯は業績回復の兆しはあるものの、依然として無配当は継続です。
どちらの銘柄も株主優待の権利確定日が目前に迫っていますが、必ずしも権利確定日前が「買い時」とは限りません。最新情報や業績、株価など様々な情報をこまめにチェックしながら、自分の投資スタイルに合った判断をすることが重要です。