2025年10月4日に高市早苗氏が自民党総裁に就任しました。現在自民党は少数与党であり、また友党の公明党にも連立離脱論が表面化しているため、首相就任まではまだいくつかの「山」があります。
それでも相場の反応は素早く、いわゆる「高市トレード」の兆しが週を明けた10月6日の株式相場から現れました。私たち個人投資家はすぐに乗るべきなのか、それとも不安要素が残る相場として見定めるべきなのか。相場変革期の「始点」を考えます。
責任ある積極財政とは
責任ある積極財政、でインターネットを検索すると、自民党の議員連盟が最上位に表示されます。ここに高市氏自身は掲載されていませんが、今回の総裁選で同氏の支持基盤となった議員も多いことから、立ち位置が読み取れます。ここから個人投資家が現段階で注目したい、方向性を分析してみましょう。
恩恵を受ける産業分野を見定める
いわゆる「ばら撒き」のような財政出動は否定しつつ、積極的な財政運営を唱えています。プライマリーバランス(PB)を何年まで達成するといったカレンダーベースの目標は撤廃し、総供給を上回る国内需要を創出することを目指します(高圧経済)。
この対象は2025年6月に制定された「第一次国土強靭化中期計画」を発展させていくものと考えられます。具体的には以下の5分野において、各種施策が展開されます。
(第一次 国土強靭化実施中期計画の対象)
(1)防災インフラの整備・管理
(2)ライフラインの強靭化
(3)デジタル等新技術の活用
(4)官民連携強化
(5)地域防災力の強化
社会の課題解決を具体化し、投資を拡大する流れが期待されます。まだ所信表明も行っていないどころか、政府の人選も終わっていない段階ですが、筆者が活性化すると予測している事業分野は以下の3つです。
地震対策
上記計画の(1)の部分です。地震の予知から、発生した場合の避難、復旧対応に向けた分野です。南海トラフ地震がいつ発生してもおかしくはない局面において、国際的にも日本がリーダー役を担うべき産業です。一般的な自動車が通行できなくなった場合の代替交通手段や、地震に強い建築物、地盤強化技術などが対象となるでしょう。
医療機関のDX
上記計画の(4)の部分です。中期計画を読み込むと、「病院におけるBCP(事業継続計画)の策定」が記載されています。物価高騰で公立病院の9割が赤字に悩む昨今、政府主導で医療機関の再構築に挑む必要性はとても高いです。まら連立の行く末にもよりますが、社会保険料の削減において「病床の削減」が叫ばれており、ともに緊急性の高い課題として表面化する可能性もあります。
オンライン診療やジェネリック医薬品など、医療機関の経常支出を下げる産業は歓迎されます。また「医師や看護師のマッチング」など人材供給分野も追い風となるでしょう。狭義的な医療機関ではなく、放課後ケアや学童など看護師人材が活用できる産業も注目されていく可能性があります。
ライフラインの強靭化
中期計画の(2)にあたる部分です。地震など災害時の対応インフラと重複する部分もありますが、上下水道システムや送電網の整備です。特に埼玉県の八潮市で発生したような下水道の事故は今後日本各所で起こる可能性があり、早急な予防策が不可欠です。自治体独自の対応では予算的な限界があるため、国の後押しに期待する声が高まっています。
防衛費関連予算の上昇
ここまでは2025年発表の第一次中期計画に記載されていた内容なので、当然ですが高市総理になり第二次計画発表となった際、あらたな分野が追加される可能性があります。それどころか、その分野が最優先となる場合も想定されます。
何が来るでしょうか。筆者は防衛領域だと考えています。
日本は長くGDP比において、防衛費を1%に抑えてきました。昨今の国際社会の緊張において、2025年は1.8%に上昇しています。アメリカは水面下でこの比率を3%に上げることを要求すると報じられており、供給される資金使途としての優先度は間違いなく高いものです。
首相就任後のスタンスはわかりませんが、高市総裁は近隣諸国に対してのスタンスが支持者に評価され、また同時に懸念事項とされています。首相就任後の動きによっては、防衛費拡大の方向性に舵が触れるという可能性も十分に考えられるでしょう。
個人投資家としては、まずは「高市内閣」が滞りなく組閣されるかを注視することです。そして所信表明演説をはじめとした、内閣のスタートを冷静に分析すること。そこから外交日程や国内の政治日程を踏まえて、内閣のスタンスが定まっていくことでしょう。いずれにしてもファンダメンタルの転換点です。しっかりと最新情報をアップデートしていきましょう。