日々是売買~トレードへの道

第109回「ドル円、10カ月ぶり高値 利上げや介入への警戒高まる」

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ドル円、一時157.89円と10カ月ぶり高値

 

今週のドル円は底堅い動きとなりました。「積極財政」を掲げる高市政権の下で日本の財政悪化への懸念が高まっており、今週は全般円売りが出やすい地合いとなりました。週前半は日銀の早期利上げ観測の後退を背景に円売りが出た面もありました。植田日銀総裁は今週、高市首相と首相官邸で初めて会談。会談後、記者団に対し「追加利上げに関して今後のデータ・情報次第で適切に判断していく」との見解を示しています。なお、ユーロ円は20日に182.01円と1999年のユーロ導入以来の高値を付けています。

 

*Trading Viewより

 

ただ、週末の21日には伸び悩む展開に。ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が「米連邦準備理事会(FRB)はインフレ目標にリスクを与えることなく、短期的に利下げが可能」との見解を示すと、米利下げ観測が高まり全般ドル売りが進行。「増一行日銀審議委員は利上げ判断が近づいているとの考えを示した」との報道が伝わると、日銀の利上げ観測が高まり円買いも。一時156.20円まで上げ幅を縮めています。

 

 

 

12月の利下げを巡りFRB内で見解の乖離

 

21日にはコリンズ米ボストン連銀総裁が「現在の金利水準は現時点では適切」「失業率は比較的低い、インフレは依然として高い」などと発言。また、ローガン米ダラス連銀総裁も「12月の利下げを支持するのは難しい」「しばらくは金利を据え置くべき」と話し、12月の利下げに慎重な姿勢を示しています。

 

19日に公表された10月28-29日分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では「多くの参加者は自身の経済見通しに基づけば、年内は目標レンジを据え置くことが適切になる公算が大きいとの立場を示唆した」ことが明らかとなり、米利下げ観測が後退する場面もありました。

 

一方、17日にはウォラーFRB理事が「12月の利下げをリスク管理の観点から支持する」などと発言。ミランFRB理事も引き続き12月利下げを支持しています。ただ、ウォラー氏とミラン氏はもともとハト派とあって、この発言への反応は限定的となっていますが、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が「短期的に利下げが可能」と述べ、12月利下げの可能性を示唆したことは別格。米利下げ観測が高まる結果となりました。

 

*CMEのHPより

 

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、12月9-10日のFOMCで0.25%の利下げを予想する確率は前日の39.1%から69.4%に上昇した一方、据え置きを予想する確率は60.9%から30.6%に低下しています。

 

ウィリアムズ氏はパウエルFRB議長と歩調を合わせる傾向がありますが、パウエル氏は現時点で12月FOMCまで公の場で発言する予定はありません。そのため、市場では「ウィリアムズ氏の発言は少なくとも、FRB指導部が利下げをあきらめてはいないことを示唆」「それ以上の意味合いを読み取ることも妥当」との声が聞かれています。

 

 

 

株式市場の恐怖は沈静化するか

 

シカゴ・オプション市場(CBOE)でS&P500種株価指数オプションの値動きに基づいて算出される変動性指数(VIX、恐怖指数)は20日、一時28.27まで上昇。米貿易摩擦や米地銀融資を巡る懸念が高まった10月17日の「28.99」に迫る場面がありました。なお、4月のトランプ関税ショック時には「60.13」まで急騰しています。

 

*Trading Viewより

 

また、VIX指数よりも簡単に投資家心理を確認できる便利なツール「Fear & Greed Index(恐怖と強欲の指数)」を見ると、20日には驚きの「6」と「EXTREME FEAR」(極度の恐怖)ゾーン入り。滅多に見ることが出来ないレベルの「EXTREME FEAR」でした。週末21日に米株価は反発していますが、それでも「11」となっています。

 

*CNNのHPより

 

「Fear & Greed Index」は米国のテレビ局CNNが提供している投資家心理に関する指標です。Fearが恐怖、Greedが強欲で「恐怖と強欲の指数」となります。

 

上の表を見て頂くと分かるとおり、この指数は0~100までの数値で表されており、0~25が「EXTREME FEAR」(極度の恐怖)、25~45が「FEAR」(恐怖)、45~55が「NEUTRAL」(中立)、55~75が「GREED」(強欲)、75~100が「EXTREME GREED」(極度の強欲)となっています。

 

なお、株の世界では「0」に近づくほど投資家心理が冷え込み、必要以上に株が売り込まれていることから「株価が割安」と判断され、逆に「100」に近づくほど投資家心理が過熱しており、適正な株価を超えて株が買われていることから、「株価が割高」になっていると言われています。

 

 

 

日銀の利上げ観測や為替介入への警戒感が高まる

 

片山財務相は21日、「足元の動きは一方的、急激で憂慮している」「過度な変動や無秩序な動きには、必要に応じて適切に対応」「為替介入も当然考えられる」などと発言。政府・日銀による為替介入への警戒感も高まっています。市場関係者からは「実際に介入に踏み切るかどうかはともかく、これほど急速に円安・ドル高が進むと当然、介入の可能性が意識されやすい」との声が聞かれています。また、週末には日経新聞の記事「増日銀審議委員、何月かは言えないが利上げ『近づいている』」が伝わっており、来週以降は観測記事(飛ばし記事)などには注意が必要です。

 

*IG証券より

 

なお、現在の私のポジションはドル円ロング@145.327円日銀の利上げ観測や為替介入への警戒感が高まる中、今後は緩やかなペースで円安・ドル高が進むと想定し、現在のポジションを維持したいと思います。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第109回「ドル円、10カ月ぶり高値 利上げや介入への警戒高まる」
第108回「米利下げ確率、1カ月前の94.4%から45.8%まで低下」
第107回「高市トレード(円売り・株買い)継続」
第106回「終わってみればサナエノミクス」
第105回「VIX(恐怖指数)、半年ぶりの高水準を更新」
第104回「忘れた頃にやってくるトランプ砲、でもTACOか?」
第103回「米政府機関の一部閉鎖で投機筋ポジション発表されず」
第102回「ドル円、ついにレンジをブレイクか!?」
第101回「サナエノミクス!ジャパン・イズ・バック!に期待」
第100回「上サイド突破を期待しながらポジションを追加」
第99回「ドル円、結局1カ月前と同様の結果に」
第98回「ドル円、パウエル発言伝わると急落」
第97回「投機筋の円買いポジション、縮小が続く」
第96回「上サイド突破を期待しながらポジションを維持」
第95回「イベント満載の1週間 ドル円は上値重い展開」
第94回「夏休み前、傾いたポジションは整理される傾向に」
第93回「参院選後も円安の流れは変わらずか!?」
第91回「ポジションを切るかどうかの瀬戸際」
第90回「ドル円、来週以降は買い増しを検討」
第89回「投機筋の円ロングポジション、縮小が続く」
第88回「投機筋の円ロングポジション、縮小」
第87回「ドル円、140円割れを目指す展開か!?」
第86回「米国『トリプルA』格付け失う 来週は為替協議の思惑も」
第85回「投機筋の円買いポジション、やや拡大 過去最大を更新」
第84回「投資家心理は改善 恐怖指数=VIXは順調に低下」
第83回「注目は24日予定の日米財務相会談 為替について協議」
第82回「ドル円『1日の値幅は3円超』 売っても買ってもやられる相場」
第81回「虎の子だったはずのポジションが見事に粉砕」
第80回「円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力」
第79回「投機筋の円買いポジション、いよいよ巻き戻しスタートか!?」
第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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