ドル円、1月以来の157円台
高市政権発足に伴い、財政拡大期待を背景に株高と円安が進みました。最近は、積極財政による財政悪化懸念で国債の利回り上昇と円安が進んでいます。ドル円は1月以来の高値水準となる157円台まで上昇し、10年国債利回りは約17年半ぶりの高水準となる1.8%台に上昇しています。
どっちみち、円相場は円安方向に進んでいます。円安と本邦の金利上昇に歯止めがかからなくなっているが、足元で円買いの材料は乏しい中、米12月利下げ観測も後退しており、日銀の12月利上げ気運が高まっても円の買戻しは限られそうです。日本の政府要人からは円安けん制発言が伝わっているものの、口先介入だけでは効果が見られず、円安を止めるには実弾の円買い介入しかなさそうだが、介入に踏み切っても足元では「絶好の買い場になるだけ」の可能性も高いでしょう。
高市政権の経済対策
高市政権の経済対策の規模は、子ども1人2万円給付や電気ガス料金の補助のほか、食料品支援などの物価高対策を盛り込み、経済対策の規模は21.3兆円程度とコロナ後最大となりました。裏付けとなる補正予算の規模は、17.7兆円程度と、コロナ禍後では最大となります。
高市首相は物価対策を急務として取り上げたが、高市政権の経済対策は物価高を招くかもしれない政策もありそうです。高市首相は「政府投資の拡大」を進めていて、AI・半導体・造船・量子・エネルギー安全保障などの17分野での「危機管理投資」を打ち出し、「重要物資を海外に頼らなくても済むように国内生産の強化」を狙おうとしているが、そもそも生産を海外に依存している一番の理由はトータルコストが安いからであり、経済安全保障を理由に日本生産にしようとすると、コストは高くなる、つまり物価は高くなります。
高市政権の経済対策の裏付けとなる2025年度補正予算の一般会計歳出を17兆7000億円程度とする方針です。昨年度の規模を上回り、歳入不足を補う国債発行も前年度を超える公算が大きいです。市場では経済対策を巡って不安が広がり、政権誕生により勢いづいた株式相場の上昇が頓挫するなど懸念が強まっています。高市首相が政策面での信認を失えば、日本売り(国債利回り上昇・株安・円安)が一段と進む可能性があります。
インフレと円安
インフレが進むと、為替は円安に動きやすくなります。インフレになってモノの値段が上がると、相対的にお金の価値が下がります。同じものを買うためにたくさんのお金を払うので、円の価値は下がっているといえます。円の価値が下がると、円と外貨の為替レートにおいても円安・外貨高となります。
逆に、円安がインフレを招くこともあります。円安になると、海外では日本の製品が安くなり買いやすくなります。輸出が増えて企業の業績があがると景気が良くなります。好景気は賃上げと消費増につながり、インフレが起きやすくなります。また、円安は輸入品の価格の上昇にもつながるので、インフレ圧力を強めることになります。
インフレには、良いインフレと悪いインフレがあるといわれています。良いインフレは、景気が良くなり、物価が上がるインフレです。景気が良いときは、給与も上がりやすいため、モノの値段が上がっても、それほど気にならないかもしれません。一方、悪いインフレは、例えば原材料の値上がりなどで、モノを作るための費用が高くなり、モノの値段が上がります。円安により輸入材料の値段が上がれば、企業はコストが増加し利益は減少します。企業の利益が増えなければ、給与は増えにくく、物価高が生活を圧迫することになります。



