中国には有名な長者番付がいくつかあり、以前取り上げた「胡潤百富榜(胡潤富豪ランキング)」(「胡潤百富榜」:英会計士が趣味で始めた長者番付、トップは農夫山泉の会長を参照)もその1つとなりますが、米経済誌『フォーブス(中国語で福布斯)』が発表する「中国内地富豪榜(中国本土富豪ランキング」が最も有名なものとして知られています。上場企業の株価などを基に資産額を算定し、上位100人をランキングにしたもので、2003年から発表が始まりました。25年は人工知能(AI)ブームに加え、景気低迷や米中貿易摩擦を背景に中国政府が景気対策を打ち出すとの期待から中国株式市場は上昇が続き、ランクインした100人の資産総額は合計で1兆3500億米ドルと前年の1兆300億米ドルから31%増加しています。
農夫山泉会長、資産総額771億米ドルで5年連続トップ
11月上旬に発表された最新の25年版ランキングをみてみると、トップはボトル入りウオーターの中国最大手、農夫山泉(09633)の鐘センセン会長で、資産総額は771億米ドルと前年から263億米ドル増え、5年連続で首位を守っています。続く2位は人気動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック、抖音)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)創業者の張一鳴氏で、資産総額は693億米ドルと前年から237億米ドル増え、順位を前年から1つ上げています。一方、中国のインターネットサービス大手、テンセント(00700)の馬化騰会長は資産総額が628億米ドルと前年から160億米ドル増えましたが、順位を1つ下げています。
4位には世界最大の車載電池メーカー、CATL(03750/300750)創業者の曾毓群氏(資産総額は535億米ドル)、5位にはオンラインゲーム大手、ネットイース(09999)創業者の丁磊氏(475億米ドル)、6位には電子商取引(EC)プラットフォーム、ピン多多(PDD)創業者の黄崢氏(453億米ドル)、7位には中国のスマートフォン大手、小米集団(01810)創業者の雷軍氏(368億米ドル)がそれぞれランクインしています。一方、2018-20年に3年連続でトップに君臨していた中国のネット通販最大手、アリババ集団(09988)創業者の馬雲氏(310億米ドル)は8位まで順位を落としています。

ポップマート創業者、Labubu大ヒットで資産は4倍に
トップ10以外で注目されるのは、人気キャラクター「Labubu(ラブブ)」が世界的にヒットしているポップマート(09992)創業者の王寧氏で、資産総額は222億米ドルと前年の55億米ドルから約4倍に急増し、順位も前年の68位から13位に大きく上げています。また、AI半導体大手、中科寒武紀科技(688256)の陳天石会長兼最高経営責任者(CEO)も資産総額は210億米ドルと前年の72億7000万米ドルから3倍近くに拡大し、順位を46位から15位に上げています。
半面、中国の生活関連アプリ運営大手、美団(03690)の王興会長兼CEOは資産総額が84億米ドルと前年の146億米ドルからから42%減少し、順位も16位から55位に下げています。美団を巡っては、ネット出前などを巡ってアリババ集団やJDドットコム(09618)との競争が激化しており、株価は下落基調が続いています。
一方、今年新たにランキングに加わったのは8人で、中国の生成AIスタートアップ、DeepSeek創業者の梁文鋒氏(資産総額115億米ドルで34位)などが含まれています。ランキングから外れたのは14人で、過去にトップとなったこともある中国大手コングロマリット、大連万達集団を創業した王健林会長などが含まれています。
胡潤百富榜でもトップは農夫山泉の会長
10月下旬に発表された胡潤百富榜の25年版をみてみると、福布斯富豪榜と同様に農夫山泉の鐘センセン会長が首位となっています。上位100人をランキングにした福布斯富豪榜とは異なり、胡潤百富榜は資産総額50億元以上の人をランキングしたものであるため、25年のランクイン者数は計1434人、資産総額は合計で30兆元近くに上り、前年から42%増加。資産総額が1000億元を超えたのは41人、米ドルで10億を超えたビリオネアは1000人超に上っています。
一方、13位にランクイン(前年は16位)した世界最大の暗号通貨取引所であるBinance(バイナンス)創設者の趙長鵬氏は、胡潤百富榜で資産総額が1900億元と前年から41%増えたとされていますが、趙氏はSNSでランキングは「でたらめだ」と不満を表明。資産総額は概ね100で割った数値が妥当と明らかにしています。
中国ではこの手のランキングに名前が載った途端、税務調査などが厳しくなることもあると言われており、胡潤百富榜を巡っては、悪意をもって資産総額を釣り上げ、注目度を高めた後、金銭と引き換えにランキングからの除外が提案されるとのうわさもあり、趙氏の投稿を支持する人も多くいるようです。




