マヨネーズでおなじみの食品大手キユーピーが、ジャムの老舗メーカーであるアヲハタを完全子会社化することが決定しました。これにより、アヲハタは上場廃止となり、株主優待や配当も廃止されることが発表されています。
一見するとネガティブなニュースに思えますが、株価はむしろ急上昇しており、注目を集めています。今回は、上場廃止と株主優待廃止の背景、株価上昇の理由、今後の投資家への影響について詳しく解説します。
キユーピー(2809)
キユーピーは、マヨネーズやドレッシングを製造・販売する食品メーカーです。マヨネーズが特に有名ですが、サラダや惣菜、鶏卵加工品、調理食品など様々な食品の製造を行っています。
また、食品事業以外にも、ヒアルロン酸などの機能性素材を利用した医薬品や化粧品の開発、食品製造用機器の販売、農畜産業や不動産賃貸まで多岐に渡る事業を展開しています。
キユーピーの株価
2025年10月時点の株価は約4300円です。2013年までは約1300円前後だった株価は、2015年には約3500円まで上昇しました。その後は小さな株価変動を繰り返しながら約3000円前後を推移するものの、2020年に約2000円ほどまで下落。一時は約2000円前後で低迷しましたが、2023年頃から徐々に回復しています。
株主優待は自社製品詰合せ
キユーピーの株主優待は、毎年11月末の権利確定日に、100株以上の株式を半年以上継続して保有する株主に対して、株式の保有数および保有年数に応じて贈呈されます。贈呈される株主優待の内容は、自社製品の詰合せです。
自社製品の詰合せは、毎年3月上旬頃に発送されます。株式の保有数および保有年数に応じて贈呈される株主優待の内容は、下記の一覧表をご確認ください。

キユーピーの配当
2025年度の配当金は、5月末の中間配当で32円、11月末の期末配当で32円の、年間1株当たり64円となる予想です。この金額は、2022年度の47円、2023年度の50円、2024年度の54円から、3期連続で増配しています。
キユーピーの利回り
1株4300円で100株購入した場合、投資金額は43万円です。配当金は6400円のため、配当利回りは約1.5%になります。また、半年以上継続して保有すると、株主優待として年間で1000円相当の自社製品詰合せが贈呈されるため、配当と優待を合わせた利回りは約1.7%です。
株式の保有数および保有年数に応じた配当と優待を合わせた利回りの一覧は、下記の表をご参考ください。

アヲハタ(2830)
アヲハタは、フルーツを使ったジャムが有名な食品メーカーです。特に低糖度ジャム「アヲハタ55」は、市場で大きなシェアを誇ります。また、ジャム製品以外にも、介護食品やスープ、カレーなど様々な食品開発を行っています。
アヲハタの株価
2025年10月時点の株価は約3800円です。2015年から2025年までの約10年間に渡り、約2500円前後の株価をほぼ横ばいで推移していました。2025年7月にキユーピーによるアヲハタの完全子会社化が発表されると、株価は約3800円に急上昇しました。
「上場廃止」決定でも株価急上昇の理由
アヲハタは、2025年11月1日に0.91株の割合で「株式交換」されることによりキユーピーの完全子会社化となります。つまり、アヲハタは「上場廃止」となり、代わりにアヲハタ1株あたりキユーピー0.91株が交付されます。
キユーピーの、2025年10月時点の株価は約4300円です。つまり、約3800円でアヲハタ株を購入すると、11月1日には、約4000円でキユーピー株を購入した場合と同等の価値を持つキユーピー株式を保有できることになります。
単元未満株はどうなる?
アヲハタの株式を100株保有する場合、11月1日付で自動的にキユーピーの株式91株に振り替えられます。しかし、キユーピーの単元株数は100株のため、91株では単元未満です。
キユーピーでは、単元未満株の買い増しは行っていません。11月以降にキユーピーの株式を単元株で保有したい場合は、アヲハタ株式の買増請求を10月16日までに行う必要があります。また、11月1日に振替交付されたキユーピーの株式は、11月4日から買取請求の受付開始です。

株主優待はいつから廃止?
アヲハタの株主優待は、2025年7月にキユーピーの完全子会社化が発表されると同時に、11月末の権利確定日に予定されていた株主優待の廃止を発表しました。当初は、例年通り100株以上の保有で1000円相当の自社製品、1000株以上の保有で3000円相当の自社製品が贈呈される予定でした。
アヲハタは配当金も廃止へ
2025年度の配当金は、5月末の中間配当にて、10円が配当されました。当初は5月末の中間配当で10円、11月末の期末配当で10円の、年間1株当たり20円が配当される予定でしたが、キユーピーの完全子会社化決定と同時に、11月末の配当は廃止されました。
まとめ
アヲハタは、キユーピーの完全子会社化が決定したことで、10月末をもって上場廃止となります。これを受け、11月末に予定されていた株主優待や配当の廃止も決定しました。
上場廃止後は、株式交換としてアヲハタ1株あたりキユーピー0.91株が交付されます。投資家としては、事前に買増請求を行いキユーピー株を保有し続けるか、単元未満株を買取請求して利益確定を優先するか、慎重に判断する必要がありそうです。

