インフレ下で投資家が注目したい業種・企業の銘柄を解説!

株はインフレに強い資産と言われていますが、原材料費・人件費が高くなりモノの値段が高くなる「コストプッシュ型インフレ」の場合は業種、企業の「価格転嫁率」が重要となります。


製造・販売などのコストが増加する一方で、価格に転嫁する力の高い企業は利益を維持できますが、低い企業は収益が圧迫されてしまいます。

今回はインフレと株価の関係、2025年10月現在何故モノの値段が上がっているのか、インフレ下で注目したい業種・企業の銘柄を解説していきます。


直近1年間で物価は上昇中、株価もさまざまな要因で上昇基調に

ここ1年、物価は上がり続け消費者物価指数のうち参考指標として用いられる「生鮮食品を除く総合指数」は108.7から111.6に上昇しました。(2020年を100とした値)


 


 

出典:総務省統計局「消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)8月分」


一方で、日経平均株価は2025年5月以降上昇し、10月に入ってから過去最高を更新しています。株価上昇の背景には、アメリカを始めとした世界的な株高、海外マネーの流入、自民党の新総裁高市氏への期待感やソフトバンクグループなどAI関連銘柄の高騰などさまざまな要因が複雑に絡み合っています。

 

出典:TradingView(以下のチャートも同様)


株式はインフレに強い資産と言われていますが、物価が高騰している中で「この先どうなるのか」と心配になる投資家は多いのではないでしょうか。


インフレと株価の関係性、消費者の見通しとは

株式は「インフレに強い資産」と言われており、理論上はモノの値段が上がるインフレの方がデフレ(モノの値段が下がる)に比べると企業の利益が拡大し業績が改善、株価が上がりやすいと言われています。


ただし、企業・業種によってインフレで上がる銘柄もあれば下がる銘柄もあります。

「インフレ」と一口に言っても、景気が良くなり需要が拡大するタイプのインフレもあれば、原材料費・人件費などのコストが高騰する「コストプッシュ型」インフレもあります。

現在のインフレは後者のコストプッシュ型インフレと言えるでしょう。


コストプッシュ型インフレの下では原材料費や人件費が上昇するため、企業のコストが増加する一方で価格転嫁力の高い企業は利益を維持できますが、低い企業は収益が圧迫されるのです。


景気動向について消費者はどのように感じているのでしょうか?

内閣府が、消費者の今後の景気や見通しなど消費動向を調査する「消費者態度指数」を見ていきましょう。

 

 


出典:内閣府「消費動向調査(令和7 (2025)年9月実施分)結果の概要」


2025年9月は持ち直したものの、指数は不安定な状況で特に「耐久消費財の買い時判断」は低下しています。一方で、「収入の増え方」「雇用環境」は悪くない状況です。


インフレ下で注目したい業種・企業の銘柄とは

一般的に生活必需品セクターと公益事業セクターは、小売りや旅行銘柄などと比べ景気に左右されにくく安定した銘柄と言われています。金利が上昇傾向にありますので、銀行株にも注目が集まっています。他には上で触れた価格転嫁率の高い企業です。


生活必需品セクター

公益事業セクター

銀行株

その他価格転嫁率が高い企業



1.生活必需品セクター

トイレ・バス用品、ティッシュペーパーなどの日用品、寝具・カーテンなどの家具、冷蔵庫・洗濯機・電子レンジなど家電製品、調理器具など「衣食住」に欠かせない生活必需品は、生活になくてはならないものですので物価や景気にかかわらずモノが売れます。

企業にとっては、価格転嫁がしやすく収益が安定しているセクターですので、今後不況に陥っても株価の下落は他のセクターよりおさえられる可能性があります。


2.公益事業セクター

電力・ガス・水道・通信など生活インフラに携わる公益事業銘柄は、景気に左右されにくいと言われています。


3.銀行株

インフレになると、中央銀行(日銀)は金利を上げるためお金を貸し出す銀行の収益は上がりやすくなります。


4.その他価格転嫁率が高い企業

原材料費・人件費が高騰している中でこれらのコスト上昇を、「どのくらい販売価格に上乗せできたか」を示す「価格転嫁率」が高い企業はインフレ下でも利益を生み出すことができるでしょう。


株式会社帝国データバンクによると、2025年7月の価格転嫁率は39.4%で、調査開始以来最低となっています。

理由としては人件費などの上昇分に対する転嫁が進んでおらず、度重なる値上げに対する抵抗感からさらなる価格転嫁に踏み切れずにいることなどが考えられます。


価格転嫁率はどうやって調べるのでしょうか?

業種別の価格転嫁率は、帝国データバンクの「価格転嫁に関する実態調査(2025年7月)」を参考にしましょう。

中小企業の価格交渉や、企業別の価格転嫁に関しては中小企業庁の「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果」というデータがあります。

この調査は、中小企業を対象に主な発注企業との間で、どの程度価格交渉・価格転嫁が行われたかを尋ねるアンケート調査です。


2025年3月の価格交渉促進月間フォローアップ調査における、受注者として価格転嫁してもらえている業種(上位にある業種)の実施状況の業種別ランキングは、以下の通りです。


 

出典:中小企業庁「2025年3月の価格交渉促進月間フォローアップ調査」


2025年3月の段階では景気敏感株と言われる小売りも、価格転嫁率は極端に低くありません。


2025年の中小企業白書には、同調査をまとめた中小企業・小規模事業者の価格転嫁の動向について記された「価格転嫁」の項もありますので気になる方は目を通しておきましょう。


まとめ

2025年10月現在のインフレや株価について、インフレ下で投資家が注目したい企業・業種を解説してきました。不況に強い銘柄、価格転嫁率が高い企業をポートフォリオに組み込んでおくことで、今後の情勢が変わっても損失をおさえられるかもしれません。


ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

CFP(R) 認定者。日本FP協会会員。 会社員を経て独立し、金融・投資・相続・法律などの記事を執筆している。 自身でも米国株やETF・投資信託等を運用中。

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