「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は2025年10月に上場したテクセンドフォトマスク(429A 以下、テクセンド)をみていきます。
同社は半導体用フォトマスクの製造・販売会社であり、TOPPANグループから吸収分割により事業を継承する会社として設立され、2022年4月より営業を開始しています。
フォトマスクとは、フォトリソグラフィ技術において、対象物に任意の図形(パターン)を転写するための原版となるガラス基板であり、半導体製造工程の一つである露光(リソグラフィ)プロセスにおいて広く使用されているとのことです。
同社は世界各国に製造拠点を有する外販フォトマスクメーカーとして、2024年の半導体向け外販フォトマスク市場におけるシェアは37.8%となっています。
全世界で高いシェアを有する一方、同社は26.3期の業績予想において、「これまでの成長ドライバーであった中国において、当局の支援を受けた現地フォトマスクサプライヤーの拡大と成長に伴い今年度より過去にないレベルで価格競争が激化していくことを想定している」と中国での事業の先行きに関して厳しくみています。なお、25.3期の売上高に占める国別の割合は中国が30%で最大です。次いでアメリカ19%、台湾17%などとなっています。
同社の初値は、競争激化が懸念されるものの、AI(人工知能)向け需要を背景に活況を呈する半導体関連株であることや、Qatar Holding(カタール投資庁子会社)が親引け(266万6600株)に加え、取得金額1600万ドル相当の日本円、または25億円のいずれか低い方に相当する株式数を購入する関心を表明していたこともあり、堅調なスタートが予想されていました。では、テクセンドの上場からの株価の動きをみていきます。
テクセンドの株価推移(上場から2025年11月20日まで)
2025年10月16日に東証プライムに上場した同社の初値は3570円と公開価格3000円を上回りました。上場初日は一時3015円まで値を下げる場面もありましたが、終値は3380円と、公開価格割れが視野に入る水準まで下げたもののしっかりと戻して引けました。
上場2日目からは3日連続で高値を3700円台まで伸ばし、4000円の大台乗せへの期待も高まりましたが、残念ながらその後は徐々に水準を切り下る展開。11月に入り株価は3100~3500円のレンジで推移しています。
このような状況のなか、上場後初めての決算を発表します。同社は2025年11月12日に26.3期上期(4-9月)の決算を発表。連結営業利益(IFRS)は129億円(前年同期比13.3%減)となりました。
外販フォトマスク市場は堅調な半導体市場の需要に支えられ、先端品・基幹品ともに堅調に推移したものの、積極的な設備投資に伴う減価償却負担の増加や、上場に伴う費用、本社機能拡充などが響き、減益になったとしています
この決算を受けた翌営業日(13日)の株価は売りが先行したものの、終値は3495円(前日比+80円)と上昇して引けました。そもそも今期の会社予想が減益となっていることから減益着地は織り込み済みだったと考えられます。
【テクセンドの日足チャート(上場から2025年11月20日まで)】

今後について
同社について最大の懸念は中国事業です。26.3期上期の決算説明会資料では、中国の売り上げ構成比が25.3期通期の30%から26.3期上期は27%と3ポイント低下しています。これはローカルフォトマスクベンダーとの競争激化が要因と同社では分析しています。
このような状況もあり、同社では中国での成長戦略として「高収益かつ技術的な参入障壁の高い先端ノード中心とした製品ミックスへのシフトをめざす」としています。
ただしプロセスノード別の26.3期上期の売上構成は、先端33%(25.3期通期は28%)、ミドル38%(25.3期通期は33%)、成熟39%(25.3期通期は39%)となっており、競争激化の懸念のある成熟が最大の割合となっています。
11月21日に同社株はとうとう公開価格3000円を下回り、一時2800円台まで下落しました。今後、先端ノードの売り上げ構成が順調に高まれば、業績および株価の回復が期待されます。AI投資減速懸念が出始めているなか、本当に先端ノードの売上構成を高めていけるのか、同社株を保有する場合は決算説明会資料などにより継続的に確認することが必要と考えます。



