退職後の確定拠出年金 自動移換の手数料改定へ

iDeCo(個人型確定拠出年金)の運営主体である国民年金基金連合会は、自動移換の手数料の見直しを行うことを発表しました。変更は2026年4月1日からで、対象となるのは管理手数料と移換手数料です。退職後、確定拠出年金(DC)の手続きを放置すると運用が止まり、手数料が引かれます。あらためて確認しておきましょう。


確定拠出年金の「自動移換」とは?


自動移換とは、退職などで確定拠出年金の加入者資格がなくなった月の翌月から半年以内に移換手続きをしなかった場合に、個人別管理資産が国民年金基金連合会に自動的に移換されることです。


例えば、3月31日に退職した人の場合、加入者資格がなくなる日は4月1日です。10月31日までに移換手続きを行わないと、それまで投資信託などで保有していた年金資産は現金化され、国民年金基金連合会に自動移換されます。


自動移換された資産は、現金として管理されますので、運用はおろか利息もつきません。また、加入期間にも算定されません。


運用もされず利息もつかないのに、ジワり毎月かかる手数料


加入者資格がなくなって半年放置し、国民年金基金連合会にいよいよ自動移換されるというときには、4,348円の手数料がかかります。それだけではありません。自動移換された日の4ヵ月後からは、資産の保管のために特定運営機関に対して月額52円(税込)の手数料が発生し、個人別管理資産から差し引かれます。この手数料の額が、2026年4月1日から月額58円(税込)になるというのです。


さらに、国民年金基金連合会に対しても、新たに月額40円(税込)の手数料が設けられました。自動移換者の資産管理コストが高騰しており、新規自動移換時の手数料だけでは賄いきれなくなってきたためです。


現金で保管され、利息もつかない資産から毎月手数料が引かれるのは避けたいところです。自動移換された資産をiDeCoに移換するにも、やはり移換手数料として1,100円(税込)がかかりますが、こちらは2026年4月1日から550円(税込)に引き下げられます。自動移換者が、企業型DCやiDeCoに移換しやすいように見直されることになっています。



退職するとき、企業型DCはどうなるの?


退職などで企業型DCの加入者でなくなると、それまで積み立てられていた年金資産は、他の企業年金制度やiDeCoに移換することになります。移換時には、全ての運用商品が自動的に売却(現金化)されます。 また、売却日の指定等ができません。


手続きは、退職後の働き方などの状況に応じて、以下の方法があります。


(1) iDeCoに移換して運用を続け、加入者として新たな掛金も拠出する

(2) iDeCoに移換して、新たな掛け金は拠出せずに運用指図者として移換した資産を運用する

(3) 転職し、転職先で制度がある場合、その企業型DCに移換する

(4) 脱退一時金を受け取る(一定の受給要件あり)

(5) 転職し、転職先に確定給付企業年金(DB)がある場合で、DCからの移換を受けられる規約が定められている場合、そのDBに移換する

(6) 企業年金連合会が実施する「通算企業年金」に移換する


これらのうちのいずれかの手続きを取らずに半年が経過すると、個人別管理資産が自動移換され、運用せずに国民年金基金連合会に現金で保管されるうえに、毎月手数料が引かれてしまいます。


国民年金基金連合会「iDeCoの加入者等の概況」によると、自動移換者は2025年3月末時点で約138万人(うち4割強は資産がなく記録だけを管理している人)で前年同月に比べ7.4%増えています。退職直後は、様々な届け出や手続きをしなければならず、半年などあっという間に過ぎてしまうかもしれません。


とはいえ、これまで運用してきた年金資産を、現金の保管のために手数料が引かれていくというのはもったいない話。忘れずに手続きをするようにしましょう。


【参考】

国民年金基金連合会「自動移換にかかる手数料改定のお知らせ

国民年金基金連合会「FAQ



ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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