マイケル・バーリ氏が率いるヘッジファンド会社サイオン・アセット・マネジメントが11月3日(米国時間)、AIブームに対して弱気のポジションをとっていることを開示しました。
米証券取引委員会(SEC)に提出された「Form 13F」報告書によって明らかになったものです。同報告書によると、サイオンはエヌビディアとパランティアなどの株価下落で利益を得られるプットオプションを購入していました。
「Form 13F」とは、米国証券取引委員会が大口の機関投資家に対し、四半期ごとに保有銘柄を報告することを義務付けている制度を指します。
マイケル・バーリ氏といえば、2008年のサブプライムショックが現実となる前に住宅市場の崩壊に賭けた「世紀の空売り」で有名になった投資家であり、医学博士号を取得していることでも知られています。
実際にバーリ氏率いるサイオン・アセット・マネジメントが提出した「Form 13F」はこちらで確認することができます。

(米国証券取引委員会に提出されたサイオン・アセット・マネジメントのForm 13FをもとにDZHFR作成)
バーリ氏は「Form 13F」の公開に先立って、SNS上で「sometimes, we see bubbles」からはじまる文章を投稿していました。世紀のビッグショートで名をはせた同氏が次はAIブームに警鐘を鳴らしたということで市場でも話題となり、実際に4日の米国市場でエヌビディアやパランティアの株価も下落しました。
パランティアについては決算発表もされており、バーリ氏のポジション公開が直接的な要因になったとまでは断言できませんが、多くの人が気にしていることは確かでしょう。
この「Form 13F」は前述したように四半期ごとに提出されているのですが、今年の1-3月の期間を対象に公開されたものでも、バーリ氏はエヌビディアの株価下落で利益が得られるプットオプションを取得していました。
トランプ米大統領の関税影響や、DeepSeekショックなどでAIに関する先行き不透明感が増していた期間でもあります。ですが、その後、エヌビディアの株価がどうなったかというと、10月に史上最高値を更新。時価総額で5兆ドルに到達した初の企業となりました。バーリ氏が弱気になったと言っても、すぐさま株価が急落するとも言えないわけですし、これまでにも何度も弱気ポジションを公表したことがあるため、これをもってAIブームが終焉するとまでは言い切れないでしょう。
「Form 13F」では、前述したようにサイオン・アセット・マネジメント以外に主な機関投資のものであれば、ほぼ確認することが可能です。著名な投資家として知られるウォーレン・バフェット氏が引退することが決まっているバークシャー・ハザウェイの保有株もこちらから見ることができます。
ちなみに、このリストには日本の商社株は載っていませんが、それは、「Form 13F」のルールで米国以外の発行体の株式を報告する義務がないからです。そのため、米国内の株式(もしくはADR、ADS)のみ表記されます。
そのほか米国証券取引委員会のホームぺージ(https://www.sec.gov/divisions/investment/13ffaq)では、「Form 13F」の詳細やQ&Aなどを確認することができます。表記は英語ですが、日本語翻訳などを活用すれば、理解することは難しくないと思います。
あしもと米国だけでなく、韓国で、台湾で、そして日本でも急騰していたAI関連銘柄の売りが目立っています。これが日柄調整にとどまるのか、それとも本格的な下落につながるのか、マイケル・バーリ氏のポジションとともに見守りたいと思います。



