米連邦準備理事会(FRB)は25bpの利下げを決定したものの、パウエル議長が会見で「12月の追加利下げは既定路線ではない」と発言。マーケットは「利下げ牽制」と受け止めドルが買い戻されました「利下げサイクル一時停止」との見方が優勢となるなか、米経済指標の発表遅延も相まって不安定な展開が続きそうです。
「FRB利下げ牽制」でドル買い戻し
先週、米現地29日に結果が公表された米連邦準備理事会(FRB)では、金融マーケット参加者の大方の事前予想通り、政策金利であるフェデラル・ファンド・レート(FF金利)の誘導目標レンジを25bp(ベーシスポイント、1bp=0.01%)引き下げ、3.75-4.00%とすることが決定されました。
注目されたのはパウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で次回12月会合での利下げについて「既定路線というにはほど遠い」と発言したこと。米利下げ継続への期待感が後退し、米長期金利の上昇とともにドル買いが広がりました。
金融マーケットは「FRB利下げ牽制」と受け止め、ドル円は同日アジアタイムには151円半ばまで調整安となっていましたが、パウエル議長の発言を受けて153円台を回復。翌30日には一時154.45円と、2月13日以来の高値を付けました。

FOMC内で意見相違
パウエル議長は会見で、FOMC参加メンバー間で今後の政策方針を巡り意見の相違が大きかった点に言及していました。実際に今回会合の利下げについても全会一致での25bp利下げではなく、利下げを要求するトランプ政権下で選任されたハト派のミラン理事が前回会合同様に50bp利下げを主張した一方、カンザスシティー連銀のシュミッド総裁が金利据え置きを主張するなど、慎重な意見も出始めた印象です。
据え置きの可能性の根拠の1つとなりそうなのは、労働市場の悪化が当初警戒していたほどではないとの見方です。米政府機関の閉鎖が続いており、労働市場の状況を示す明確なデータが欠如している部分も、拙速に利下げを進めることを躊躇させ、「FRB利下げ牽制」の見方を誘う要因となっていそうです。
民間の雇用調査や求人状況などが労働市場の底堅さを示している点も、利下げ継続への慎重な見方を誘いそうです。パウエル議長が述べていた「(追加利下げや他の措置について)サイクルを待つべきだという声が高まっている」「FRB内部でも次の行動を急がず、様子を見るべきとの意見が強まっている」との内容をマーケットが警戒する状況が続きそうです。
その後、予想を下回った10月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数(結果48.7、市場予想49.4、前月49.1)がドルの頭打ちを誘うなど、米景況をにらんだ振れも交錯しています。しかし、今回のFOMC以前に利下げ継続を規定路線に進んできた流れもあり、しばらく「FRB利下げ牽制」を背景とした巻き戻しでドルが買い戻されやすい地合いが続くかもしれません。
「FRB利下げ牽制」「利下げサイクル一時停止」との認識が強まりつつあります。パウエル議長も述べている「データ次第」との見解が年内の金融マーケットを左右しそうですが、米政府機関の一時閉鎖の影響で公式な経済データの発表が遅延しているなかでは、しばらく混沌とした状況が続くことになりそうで。



