特定の銘柄の値動きを1カ月間追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は2025年9月に取り上げた三井不動産の値動きを振り返ります。
1カ月後の株価は小幅安
10月3日の株価は1548.5円でした。9月3日の株価は1573.5円でしたので、値動きを見た1カ月では25円の下落となりました。15万7350円が15万4850円となり、25円×100株で2500円の下落(手数料・税金は考慮せず)、下落率は-1.6%となりました。
なお、実際にこの期間に株式を保有していた場合、9月末に中間配当を得る権利を有しています。会社の中間配当予想は1株あたり16.5円(2025年8月5日時点)となっています。
中間配当が実施されればその分がオン(16.5円で100株の場合は1650円)されますので、実質的にはほぼ横ばいであったといえます。
9月中旬にかけてやや失速
それでは、この間の値動きを見ていきましょう。
8月後半には軽めの調整が入りましたが、9月前半には見直し買いが入りました。石破茂氏が自民党の総裁を辞任すると発表したことで日銀の早期の利上げはないとの見方が強まり、9月8日には1660円まで上昇。この期間の高値をつけました。
米国では9月のFOMCで利下げが決定されましたが、事前に利下げが織り込まれていましたので、材料視する向きは限られました。
一方、日銀は9月の金融政策決定会合で保有するETFとREITを市場で売却していくことを決定しました。この日の日経平均は日銀の結果発表前は大幅高となっていましたが、発表後には一時800円を超える下落となるなど、振れ幅が大きくなりました。
この日の三井不動産株はプラスで終えましたが、注目イベントであったFOMCや日銀会合がそれほど不動産株の押し上げ材料とはならなかっただけに、9月後半にかけては上値が重くなりました。配当落ちの影響もあって水準を切り下げると、10月初旬には1600円を割り込み下値を模索しました。期間中の安値は10月3日の1529円となっています。
高市氏の自民党総裁選勝利には好反応
値動きを見た期間では小幅な下落となりましたが、10月6日には一転大きく上昇しており、この時点での上場来高値を更新しました。この日は自民党総裁選で高市早苗氏が勝利したことを受けて、日経平均が2000円を超える上昇となりました。その中で不動産株は動きの良い部類に入っています。
高市氏からは日銀の利上げをけん制するような発言が出てきており、高市政権が誕生した際には日銀が利上げを実施するハードルが高くなるとの見方から不動産株に買いが入りました。
目先は高市氏の発言や日銀からのメッセージに不動産株が振り回される機会が多くなりそうです。高市氏が日銀の金融政策に対して独自の強い意見を持っていたとしても、日銀がその意向を汲むとは限りません。日本の長期金利の絶対水準はまだ低く、日銀が2025年の残り2回の会合のどちらかで追加利上げに踏み切る可能性はあります。
自民党総裁選前の大手不動産株は、年内あと1回程度の利上げは織り込んでいたと推測されます。ただ、高市氏の勝利を受けた上昇で当面の利上げ見送りを織り込みにいったようにも見えますので、日銀が年内の追加利上げに踏み切った場合には不動産株にネガティブな反応が予想されます。
一方、日銀が高市氏の意向を汲むような形で利上げに消極的となるようであれば、不動産株にはしばらく追い風が続くとの期待が高まります。米国は利下げを再開していますので、こちらもフォローの材料になると期待できます。
目先は10月29日~30日に開催される日銀金融政策決定会合を無難に消化できるかどうかが焦点となります。その後は、11月7日に予定されている上期決算の発表が大きな注目を集めることになると思われます。日銀のスタンスと折り返しの決算を確認しますので、10月後半から11月前半にかけては振れ幅が大きくなる可能性があります。