ソフトバンクグループの株価は今後どうなる 2つの注目ポイント

2025年10月22日の東京市場で、ソフトバンクグループの売買代金が1兆0332億円となり、個別銘柄の売買代金として初めて1兆円を超えました。その日の東京市場全体の売買代金がおよそ6兆円でしたから、1銘柄で16%ほどを占めたことになります。


同社株価は2025年4月にはトランプ関税ショックの影響もあり、5730円を付ける場面がありました。そこから、10月21日には上場来高値となる25735円付ける急騰ぶりでした。安値からの上昇率は4.5倍。わずか半年の期間でここまで上昇するとは驚かされます。


上昇の要因はいくつかありますが、一つはAI関連銘柄として人気を集めた点です。OpenAIへの出資が好感されているのはもちろん、傘下の英Armも半導体企業として、AI特需の恩恵を受けるとして買われてきました。


もう1点は高市トレードによる日経平均の急上昇です。日経平均株価は10月だけで45000円から一時5万円に迫る水準まで短期間で5000円も上昇してきました。そのことがソフトバンクグループの株価をも押し上げることにつながった面があります。


というのも、ソフトバンクグループは指数寄与度の高い銘柄として市場では知られています。指数寄与度とはその株が上昇したときにどれだけ日経平均株価を押し上げるかを示すもので、これは銘柄ごとに異なっています。指数寄与度が高い銘柄としてよく言われるのは、ファーストリテイリング<9983.T>やアドバンテスト<6857.T>などで、ソフトバンクグループも同様に寄与度の高い銘柄の一角を占めています。そのため、指数と連動して上がりやすい面があったと言えるでしょう。


ソフトバンクグループ日足チャート


今後の株価の見通し


では、今後の同社の株価はどう推移するでしょうか。見るべきポイントは同社のNAV(純資産価値)にあります。NAVは同社は保有する有価証券などの資産から負債を引いた実質的な価値を示す指標です。公表されている一番新しい数値は2025年6月末時点のもので、1株当たりNAVが22748円となっています。


同社株価は長年、このNAVを下回るディスカウント状態でしたが、前述したように10月21日に上場来高値25735円を付けました。公表されているNAVより高い、いわゆるプレミアムの付いた状態ということもできるかもしれません。


しかし、筆者自身はそれを否定する立場です。というのも公表値はあくまで2025年6月末時点のものです。そこから英Armの株価はさらに上昇していますし、2025年10月には出資するOpenAIの評価額も直近の投資家との取引において、企業価値の評価額が約5000億ドル(約73兆4000億円)に達したとも報じられています。


これらを考慮すれば同社の1株当たりNAVは30000円程度まで上昇していてもおかしくはないでしょう。市場はこれを先んじて織り込みにいったものと考えています。最新のNAVについては11月11日に予定されている同社決算発表時に明らかになると思われますが、数値がどの程度上昇しているかが同社の株価を左右することになるでしょう。


2つ目のポイントは指数ウエートに関してです。指数寄与度に関して先ほど述べましたが、日経平均株価を算出する日本経済新聞社では、1銘柄の指数への影響が上がりすぎないよう、指数にウエートキャップを設けています。現在は10%を超えると調整がかけられることになっています。


実例としてはファーストリテイリングがこのウエートキャップを超えたことで調整を受けました。ソフトバンクグループも直近の上昇でたびたび10%を超える場面が見られます。超えた時点ですぐさま調整がかかるわけではなく、判定時期に基準を超えていたらということになりますが、同社が今後も高値を維持した場合、日経平均株価の水準にもよりますが、ウエート調整が実施される可能性があります。


この調整が実施された場合、指数に連動するETFなどに投資するパッシブファンドと言われる投資家は、その比率にあわせて機械的にソフトバンクグループの株式を売却することになります。それは需給面での売り圧力となるほか、警戒したその他の投資家による売りが出る場面があるかもしれません。


株価は急激な上昇の反動もあって10月22日、23日と売られる場面が見られますが、これで天井を打ったと言い切れるわけではないと思います。まずは前述した決算で最新のNAVを確認したいですね。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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