投資信託(以下、「投信」)には、さまざまな角度から見た、商品の特徴ごとに分けた分類方法があります。投信の商品説明で「追加型投信/内外/株式」「追加型投信/海外/株式」「追加型投信/海外/資産複合/インデックス型」といった表示を見たことはありませんか?
これらは、投資家が一目で商品性を理解できるように、どんなタイプの投信なのかを示した商品分類です。投信の商品分類を理解していると、投信選びに役立ちます。
投資信託の「制度上の分類」
投信は、特徴が似ているもの同士のまとまりで分類されています。分類に着目すると、投信ごとの商品性を理解しやすくなります。主な分類の基準として「制度上の分類」と「運用面での分類」があります。
「制度上の分類」としては、主に【表1】のような分け方があります。

<公募と私募>
公(おおやけ)に募集されるか、私的に募集されるかの違い。
「公募」は、「広く一般の投資家から資金を募集する」という意味で、投資家保護の観点から、運用上の規制が厳しい。少額での投資が可能で、多くの情報が開示される。
「私募」は、「限られた少数の投資家から資金を募集する」という意味。主にプロの投資家向けのため運用上の規制は緩やかで、最低投資金額が高額であることが多い。情報は出資する投資家にさえ届けば良いので、一般に公開情報は限定的。
<契約型と会社型>
形態による違い。
「契約型」は、運用会社と信託銀行などの信託会社が、信託契約を結んで運用する形態。
「会社型」は、投資を目的とする投資法人を設立して組成される。不動産投資信託(REIT)はこのタイプ。
<追加型と単位型>
いつでも購入できるか否かの違い。
「追加型」は「オープン型」とも呼ばれ、原則として運用期間中はいつでも購入できる。
「単位型」は、設定当初の募集期間のみ購入可能。募集期間終了後は購入できず、解約はいつでも可能なのかや、解約ができない期間が設けられているかなどは、投信ごとに定められている。
<株式投信と債券投信>
約款に「株式に投資できる」と記載されているかどうかの違い。両者で税制が異なる。
「株式投信」は、約款上、株式に投資できる投信で、実際に株式を組み入れていなくても株式投信に分類される。
「公社債投信」は、約款に株式には投資しないと明記されているもの。
投資信託の「運用面での分類」
運用面での分類は、どのような投資対象かという観点で分けられます【表2】。

<資産分類>
株式、債券、不動産投信など、組み入れられている金融商品で区分したもの。
<地域分類>
主に、どの地域に投資しているかで区分したもの。
投資信託協会の「商品分類」
分類に着目すると、その投信がどこの地域で、どういう通貨の、どのような金融商品に、どのような配分で投資をしているかがわかります。投資対象が明確であれば、基準価額の変動要因を理解しやすくなり、投資判断の助けになることでしょう。
一般社団法人投資信託協会では、国内の投信について、投資家の商品選択に役立つよう、「商品分類」を【表3】のように定めています。この商品分類は、投信の「投資信託説明書(交付目論見書)」のような資料の表紙などに記載されています。

投信協会の指針では、原則として「単位型投信・追加型投信」「投資対象地域」「投資対象資産」を組合せたものを目論見書などの表紙に記載することとし、「独立区分」に該当する場合はその分類も加えて記載することになっています。
また、インデックス型、特殊型に該当する場合には、補足としてその旨を記載することとしています。インデックス型とは、株価指標などに連動する運用を行う投信で、特殊型とは、投資者に対して注意喚起が必要な特殊な仕組みや運用手法の投信です。
投信協会の指針に沿って区分ごとの分類を組み合わせた表記には、以下のような例があります。
「追加型/国内/株式」:追加型で主に国内株式に投資する投資信託
「追加型/海外/債券」:追加型で主に海外債券に投資する投資信託
「追加型投信/国内/株式/インデックス型」:追加型で主に国内株式に投資し、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価などに連動する運用成果を目指す投資信託
「単位型/国内/株式/特殊型(条件付運用型)」:単位型で日経平均の水準が一定範囲に収まれば、元本が確保される仕組みの投資信託
さらに細分化した「商品の属性区分」
さらに投信協会では、「商品の属性区分」として、以下の区分も設け、表紙への記載を努力義務としています。
1. 投資対象資産による属性区分
(1)株式 ①一般・②大型株・③中小型株
(2)債券 ①一般・②公債・③社債・④その他債券・⑤格付等クレジットによる属性として「高格付債」「低格付債」等の併記
2. 決算頻度による属性区分 ①年1回・②年2回・③年4回・④年6回(隔月)・⑤年12回(毎月)・⑥日々・⑦その他
3. 投資対象地域による属性区分:(重複使用可能)
①グローバル・②日本・③北米・④欧州・⑤アジア・⑥オセアニア・⑦中南米・⑧アフリカ・⑨中近東(中東)・⑩エマージング
4. 投資形態による属性区分
①ファミリーファンド・②為替ヘッジなし
5. 為替ヘッジによる属性区分 ①為替ヘッジあり・②為替ヘッジなし
6. インデックスファンドにおける対象インデックスによる属性区分
①日経225・②TOPIX・③その他の指数
7. 特殊型 ①ブル・ベア型・②条件付運用型・③ロング・ショート型/絶対収益追求型・④その他型
投信選びに分類を活用しよう
「投信を始めてみたいけれど、たくさんあって、どれを選んだらよいか分からない」という声をよく聞きます。投信の分類が明確に示されていれば、基本的な性格を直感的に把握できますし、リスクの大きさや値動きの傾向もおおまかに理解しやすくなります。また、「安全と思って買ったら実はハイリスクだった」というようなミスマッチの防止に役立ちます。
「目論見書などの書類を読むのはハードルが高い」と感じる方は、表紙に記載された投信の分類だけでも目を通してみましょう。



