一般社団法人投資信託協会は、毎月、国内籍の投資信託の残高や資金の流出入などのデータを集計し、公表しています。先日公表された2025年9月末時点の「統計データ」や「投資信託概況」から、投資信託の現状をまとめました。
2025年9月末の投信残高は約277兆円、うち株式投信は約260兆円
2025年9月末時点の、国内籍の公募証券投信全体の純資産総額は、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)などの公社債投信やETF(上場投資信託)を含む全体で276兆8,189億円、前月比9兆5,265億円増加し、5ヵ月連続で過去最高額を更新しました。投資信託協会では、国内外の株式市場が堅調だったこと等による好調な運用増加等が純資産総額増加の主な要因とみています。
投信の純資産総額が増減する要因は、主に2つあります。1つは投資している証券などの値動きや為替相場の変動による時価の増減です。もう1つは、投資家が投信を購入したり解約・償還したりする資金の出入りによるものです。
公社債投信を除いた公募株式投信は、9月に運用資産の時価が8.3兆円増え、資金の出入りは1.6兆円の純流入でした。収益分配金を支払った後の純資産は9.7兆円の純増となり、純資産総額は260兆3,810億円でした。一方、公社債投信は1,662億円の純減です。
公募株式投信からETF(上場投資信託)を除くベースでは、運用による時価の増加が4.7兆円で、純流入額が1.3兆円、収益分配金を支払い、5.7兆円の純増となりました。純資産総額は159兆9,926億円と、160兆円にあと一歩という水準で、5ヵ月連続で増加し、こちらも過去最高を更新しました。
なお、ここで集計している「国内籍の投資信託」とは、日本国内で設定されている投資信託のことで、投資対象は国内に限りません。
海外投信の純資産は半年で10兆円以上増加
【グラフ1】は、国内籍の公募株式投信(ETFを含む)を投資対象地域で分けた純資産総額です。
国内が122.7兆円で全体の47.1%を占め、半年前の2025年3月末の105.0兆円よりは増えたものの、残高のシェアは47.4%に低下しています。好調なのは海外投信で、3月末の61.0兆円から72.3兆円へと、半年で約11兆円増加しました。残高は全体の27.5%から27.8%へと拡大しています。国内と海外のミックス(内外)は65.4兆円の25.1%で、3月末に比べて微増です。
純資産総額は、投資地域が国内のみの投信と海外を含む投信でおおよそ半々ですが、月ごとの推移は徐々に海外を含む投信(投資対象が海外+内外の合計)の割合が増えています。
海外株式投信とバランスファンドに資金が集まる
次は、資金フローを見ていきましょう。資金フローとは、投信の設定額から解約金額や償還金額を差し引いて求めた、投資信託への資金の出入りのこと。プラスの月は、購入額が解約・償還の金額を上回る「純流入」で、マイナスは「純流出」を示します。
2025年9月の資金フローは、国内籍公募株式投信全体で1兆7,187億円の純流入となりました。1兆円を超える純流入は4月以来です。ETFを除くベースでは1兆2,554億円の純流入で、2023年6月から28カ月連続の純流入となっています。
資金フローを投資対象別にみてみましょう。【グラフ2】は、国内籍公募株式投信における主な投資対象別の資金動向です。
月ごとに見るとやや細かいですが、グラフの全体を眺めると、棒グラフの色で大まかな傾向がつかめます。過去10年間のうち、前半は国内株式投信への純流入が多く、内外株式も比較的純流入額が多くなっています。
2020年頃から変化が見られます。内外株式投信が比較的資金を集め、次第に海外株式投信の純流入額が増え始めます。海外株式は2019年12月から70カ月連続の純流入で、特に2023年以降は純流入額の規模も目立ちます。
一方で、近年の国内株式投信は、純流出の月が増えてきます。株価が上がると売りが先行する傾向です。2025年9月は日経平均株価が5.2%上昇しましたが、国内株式投信(ETFを除く)から337億円が純流出しました。
なお、国内株式投信は時おり純流出額の大きな月が目立ちますが、純資産総額が大きなカテゴリであることから、純流出入額の規模も大きくなりがちです。
内外株式と内外資産複合は、いずれも2024年1月から21ヵ月連続の純流入となりました。2024年1月といえばNISAが改正されて新NISAになったタイミング。内外株式は、全世界株式(オール・カントリー)が属するカテゴリです。内外資産複合は、投資地域は全世界で、投資対象は株式、債券、不動産などで、国際分散投資を目的とした運用の投信が属しています。
9月の投信概況から、海外やバランス型の投信への資金流入が続いている現状が確認できました。中長期を見据えた資産形成が広がっているようです。このようなデータを活用し、市場全体の動向を定点的に見ていくことは、個人投資家にとっても資産形成のヒントになるでしょう。
【参考サイト】
●一般社団法人 投資信託協会「統計データ」