S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄に採用されるには米国企業であることが前提で、それは米国内での売上高や固定資産、本社所在地などで判断されます。
このほかの要件には◇過去4四半期の純損益の合計が黒字で、直近の四半期の純損益が黒字◇グローバル産業分類標準(GICS)の分類に基づく産業バランスが適切――などがあります。また、時価総額の基準「227億ドル以上」で、2025年7月に引き上げられた後、変更はありません。
今回は2026年3月に構成銘柄になったコヒレント(COHR)とルメンタム・ホールディングス(LITE)をご紹介します。
コヒレント、一貫生産が強みの光・電子機器メーカー
コヒレントは1971年に創業した光・電子デバイスメーカーです。通信、産業、計測機器、電子機器といった幅広い分野に製品とソリューションを提供しています。
最大の強みは、化合物半導体、先端材料、レーザー技術を活用し、材料からデバイス、モジュール、システムまでを一貫して手掛ける高度な垂直統合型の生産体制です。ヒ化ガリウム(GaAs)やリン化インジウム(InP)などの化合物半導体や炭化ケイ素(SiC)基板、各種光学材料を自社で設計・製造し、半導体レーザーのVCSEL(垂直共振器面発光レーザー)や光トランシーバー(光送受信モジュール)などに展開することで、高性能製品を提供しています。

特にトランシーバーは人工知能(AI)開発を支えるデータセンターには不可欠で、データセンター投資の活発化を受けて需要が急拡大しています。また、VCSELは、低消費電力での直接変調が可能という特性を生かし、光通信モジュール用の光源として利用されています。
AIインフラとも言えるデータセンターの稼働の鍵を握るコヒレントに着目したのが、潤沢な資金を持つエヌビディア(NVDA)です。2026年3月にはコヒレントに加え、次に紹介する光学製品メーカーのルメンタム・ホールディングス(LITE)との提携を発表。エヌビディアは両社にそれぞれ20億ドル出資すると明らかにしました。
エヌビディアはデータセンター事業者などに資金を提供し、自社のAI半導体チップの販路を確保しています。今回の出資を通じ、大規模なデータセンターを効率的に運営するのに不可欠な光学製品を優先的に調達する方針です。エヌビディアはデータセンターを中核とする強固なエコシステムを構築するために資金を投じているとみられています。
コヒレントもデータセンター需要への対応を最優先する方向にかじを切っているようです。多様な製品をさまざまな業界に提供してきただけに2025年6月期までは事業の分類を「ネットワーキング」「素材」「レーザー」に分類してきました。ただ、2026年6月期(2025年7月1日スタート)から「データセンター・通信」「産業」に分類を再編しています。

これまでは製品やソリューションごとに分類してきましたが、販売先の市場ごとに組み替えました。データセンター向けのビジネスが急激に拡大したことを反映したと受け止められそうです。
実際、2025年10-12月期決算は売上高が前年同期比17%増の16億8600万ドル、純利益が104%増の1億4500万ドルと成長していますが、データセンター・通信部門の売上高が34%増の12億800万ドル、部門利益が44%増の3億600万ドルとなり、全体を押し上げています。
ルメンタム・ホールディングス、光通信関連製品が中核
ルメンタム・ホールディングスは光学製品を提供するグローバル企業です。高速光トランシーバーや光接続ソリューションなどデータセンター向けの光通信関連製品を中核に位置づけています。
前述のコヒレントとの共通点は多く、データセンター向けの光学製品の需要増でともに業績が急成長しています。エヌビディアがコヒレントと同様、ルメンタムにも20億ドルを出資し、業務提携に踏み出した点も共通しています。
株価はともに急騰していますが、この1年ではルメンタムの上昇率が大きく、時価総額でもコヒレントを小幅に上回っています。そして今回、S&P500の構成銘柄に採用されるタイミングも一緒だったというわけです。

ルメンタムの事業は「クラウド&ネットワーキング」と「インダストリアル・テック」ので構成されていました。クラウド&ネットワーキング部門では、光・フォトニクスチップ、光部品、モジュール、サブシステムなどの幅広い製品を展開し、クラウドデータセンター事業者、AIインフラ企業、通信事業者、ネットワーク機器メーカーなどが主要顧客でした。
こうした製品の用途は多岐にわたりますが、やはりデータセンター内の高速接続に対応できる点が強みです。AIの急速な普及に伴い、膨大なデータ処理を支えるための高速・大容量通信の需要が急増しており、光接続技術の重要性が一段と高まっているようです。
一方、インダストリアル・テック部門では、短パルス固体レーザー、ファイバーレーザー、ダイオードレーザー、ガスレーザーなど多様なレーザー製品を提供し、産業用途からコンシューマー用途まで幅広く展開しています。

2025年10-12月期決算は売上高が前年同期比65%増の6億6600万ドル、純利益が7800万ドル(前年同期は6100万ドルの純損失)で、黒字転換を果たしました。ただ、同社も事業分類の再編に乗り出し、部門ごとの業績発表を取りやめています。




