中東情勢の緊迫化や世界的な金融市場の変動を背景に、株価上昇益(キャピタルゲイン)よりも安定的な配当収入(インカムゲイン)を重視する投資家が増えており、香港市場でも配当利回りが高い「高配当株」への注目度が高まっています。
米国とイスラエルが2月末にイランへの攻撃を開始して以来、香港市場では値動きの荒い展開が続いており、ハンセン指数は3月に1800ポイント超下落しました。4月には1000ポイント近く戻したものの、5月に入って再び心理的節目の26000ポイントを割る水準まで下げており、こうした環境の下、景気敏感株よりも安定収益と継続配当が期待できる高配当株が存在感を増しています。
ハンセン指数の高配当株、中心は食品株や通信株
具体的にみてみると、ハンセン指数構成銘柄のなかでは、食品や通信、REIT(不動産投資信託)などのセクターが高配当の中心となっています。最も高い利回りを示しているのが豚肉生産の世界最大手、万洲国際(00288)で、直近1年の配当利回りは10%近くに達しています。特別配当(1株当たり0.30HKドル)の影響が大きいものの、この影響を除いても6%超の水準を維持しており、株価調整局面で投資妙味が高まった代表例といえます。
また、アジア最大の上場不動産投資信託、Link REIT(00823)も6%強の高い利回りとなっています。投資対象は香港や中国、豪州、英国の商業施設・駐車場・オフィスビルなどで、小売市場の回復がパフォーマンスを一段と押し上げる可能性もありそうです。通信株では、中国の3大通信キャリアの安定した配当が評価されています。チャイナ・テレコム(00728/601728)、チャイナ・ユニコム(00762)、チャイナ・モバイル(00941/600941)はいずれも5%超の利回りを提供しており、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ性が魅力となっています。
このほか、台湾系の即席麺・飲料大手、康師傅控股(00322)や、香港のコンテナ海運大手、東方海外(00316)、華潤グループ傘下の大手電力会社、華潤電力控股(00836)などが代表的な高配当株として挙げられます。

配当利回りに加え配当性向にも注目、美的集団など
一方、足元では、高い「配当利回り」に加え、高い「配当性向」に着目する動きも広がっています。利益の大部分を株主還元に回す企業は、株主を重視する姿勢が明確であるため、市場で高い評価を受けています。なかでも注目されるのが、100%前後の配当性向を維持する企業で、食品・消費関連では、統一企業中国(00220)や康師傅控股が長年にわたって高い配当性向を維持しています。
また、中国の家電大手、美的集団(00300/000333)は、現金配当に加えて大規模な自社株買いと消却を実施しており、株主への還元を重視する姿勢が際立っています。2026年の予想配当利回りは約5.4%ですが、自社株買いを含めた総株主還元利回りは6%台後半に達する可能性があり、単純な配当利回り以上に株価下支え効果への期待がある点は見逃せません。

株価下落で利回り上昇、見かけ上の高利回りに注意
香港市場では、地政学リスクや市場変動性の高まりを背景に配当利回りや配当性向の高い銘柄が投資対象として注目されていますが、配当利回りは増配だけでなく、株価下落によっても変動する点には注意が必要となります。株価下落に伴う「見かけ上の高利回り」の可能性もあるため、業績の安定性やキャッシュフロー、配当継続能力を総合的に評価する姿勢が重要となりそうです。





