リモートワークがコロナ禍が終わっても継続するなら「通勤産業」はどう変わるのか

世の中の産業の多くは当たり前のことを前提として成立しています。2020年のコロナ禍は様々な常識の変化、いわゆるパラダイムシフトを構築しました。その代表格といえるものがリモートワーク(テレワーク)です。2010年代からリモートワークの便利さは各所で喧伝され、関連したサービスがいくつも提供されましたが、結局浸透しませんでした。コロナ禍を経て、それほど浸透に苦慮したリモートワークが、短期間で当たり前のものになりました。


ポストコロナでもリモートワークが定着すると、通勤産業はどう変わるか


同じくコロナにより甚大な被害を受けた観光・旅行産業は、コロナ前への回帰を喜んでいます。後押しとなる旅行割の開始も決まり、外国人の受け入れも再開してくる中、2019年以前の形に戻ってくることでしょう。

一方の通勤産業にしても、社内コミュニケーションは顔を合わせてこそ、という考え方で主軸をオフィス通勤に戻す会社も多いです。ただ久し振りに通勤時間に電車に乗ると、対コロナ前で70-80%くらいの乗客数と見込まれます。継続するリモートワークによって、どのような産業に影響があるのか、プラス面・マイナス面をともに見ていきましょう。


リモートワークの継続がプラスになる産業


リモートワークの継続がプラスになる産業は自宅での就労環境によって成長が期待できるもの。UberEatsに代表される配達式ビジネスを思い浮かべる方も多いでしょう。2022年に入っても配達式ビジネスを街で見かけることが多く、また新規参入も増えている背景からは、リモートワークが残っていることの裏付けの1つです。

自宅時間が長くなったことによる洗濯や掃除のニーズも見逃せません。リモートワークはパソコンの前に座って勤務時間を過ごしますが、気分転換に洗濯や掃除癖がついた方も多いでしょう。勤務先では絶対にしないパソコンの埃の掃除などが習慣化した方も多いです。机の前でできる簡単な筋トレ道具なども伸びていると聞きます。


リモートワークの継続がマイナスになる産業


代表的なのはオフィス街の飲食店、また夜の接待などもコロナによって大きな影響を受けた職種です。コロナ禍では感染防止から閉店を余儀なくなれたものの、既に政府による閉店要請も終わり、いわばコロナ禍前のように自由な営業が認められています。ただ、いまだに会社で大規模な飲み会は自粛という企業も多いです。一方で個人から数人レベルでの飲み会は復活傾向にあります。人数基準で見ると5-10人以上になると自粛感が強くなる、というところでしょうか。


またビジネススーツやネクタイ、シューズもコロナの影響が大きい職種です。コロナ禍がはじまった当初、パソコンの前でもスーツを着て、緊張感を醸し出していた方も多かったように思います。そのうちスーツに見えるパジャマが出たあたりから転換点となり、いまや思い思いの格好でパソコンの前に座っています。プラスの面にあった家庭での洗濯とは反対に、フォーマルな装いをしなくなったことによるクリーニング業界からも苦しい声が聞こえます。


リモートワークのパラダイムシフトを変えるにはどうすればいいのか


リモートワークに関しては旅行やコンサートなどの、いずれ回帰が見込まれるビジネスとは温度感が異なります。コロナ前の通勤産業に戻るタイミングは到来しているはずなのに、これだけリモートワークが維持されているのであれば既に習慣です。損切りではないですが、思い切った方向転換が必要とわかります。投資メディアとして、リモートワークが習慣化しているからと大転換をしたビジネスを見てみましょう。


街で見かける快活クラブを運営するのは、あの紳士服大手?


複合カフェとして業界1位を快走する快活クラブ。運営するのはなんと、紳士服大手のAOKIホールディングスのグループ会社です。2019年度の売上で368億円、2位の運営する自遊空間(60億円)の6倍以上でしたが、2022年度はM&Aを活用し569億円と更に大きく伸ばしています。

興味深いのは、快活クラブのスタートが2003年であることです。AOKIグループの持つ海外遊休資産の活用が目的でした。コロナの発生が報じられる15年以上も前です。大企業とはいえ基盤としている紳士服の市場が縮小していたわけではないため、関連性の無い複合カフェの並列展開は大きな決断だったと思います。複合カフェのため、高齢者が落ち着く場所という後押しはあったにせよ、コロナ禍が到来し本格的に伸びる下地を作ったといえるでしょう。


ここから応用するに、リモートワークの定着で苦労をしている企業は、現状がコロナ禍に回帰する可能性を願いつつも、定着したときにどのような応用策を出すのかということが気になります。上場株の銘柄選びや社債、またはベンチャー企業の支援に至るまで、その会社の応用力と展開力を見ていきましょう。


10年後、あの時リモートワークがあったから対応したと、後の成功者は述べているかもしれません。有名な話ですが、ダーウィンは絶滅しなかった生物の共通項として、強かったのではなく変化に対応できた種だ、と言ったと今日に伝わります。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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