今回は、分配型投資信託の収益分配金について取り上げます。
iDeCoやつみたてNISAの普及などに伴い、分配型投資信託は以前ほど注目されていませんが、高齢者を中心に「定期的に分配金を受け取りたい」というニーズは根強いようです。
収益分配金は決算時に運用実績等により支払われます。
投資家の個別元本(投資信託の取得価格)により、収益分配金は普通分配金と特別分配金に区分されます。
分配落ち後の基準価額が基準
収益分配金はファンドの財産から支払われるため、分配金が支払われると、その分基準価額は下落します。
このことを「分配落ち」と言います。
普通分配金は投資家にとって収益からの分配金となるため、課税対象となります。
一方、特別分配金は投資家の元本の一部が払い戻されたことになるため、非課税扱いとなります。
「ご自身で支払った金額が分配金として払い戻された」と考えて下さい。
特別分配金は元本払戻金とも呼ばれています。
区分方法ですが、分配落ち後の基準価額が個別元本を上回った場合、分配金全額が普通分配金となります。
一方、分配落ち後の基準価額が個別元本を下回る場合、下回った分の分配金が特別分配金となります。
注意して頂きたいのは、特別分配金が支払われ他場合、その分だけ個別元本は下落することです。
(1)(分配落ち後の基準価額)≧(その投資家の個別元本)
→全額が普通分配金
(2)(分配落ち後の基準価額)<(その投資家の個別元本)
→個別元本を上回る金額が普通分配金、個別元本を下回る金額が特別分配金
普通分配金の発生事例
実際に例を使って説明していきます。
(例)Aさんの個別元本=9000円
分配前の基準価額=11000円、分配金=1000円
分配落ち後(分配金を支払った後)の基準価額=10000円
※1万口当たりの金額
Aさんは1万口当たり9000円で○ファンドを買い付けました。
基準価額は11000円へ上昇し、分配金を1000円支払うことが決まりました。
分配金支払い前の基準価額は11000円に対し、Aさんは分配金支払い(決算)時点では2000円の利益を出していたことになります。
分配支払い後の基準価額はAさんの個別元本を上回っていることから、収益分配金1,000円は普通分配金となり、課税対象となります。
特別分配金の発生事例
続いて特別分配金が発生する例を紹介します。
(例)Bさんの個別元本=10300円
分配前の基準価額=11000円 分配金=1000円
分配落ち後(分配金を支払った後)の基準価額=10000円
※1万口当たりの金額
Bさんは1万口当たり10300円で○ファンドを買い付けました。
1000円の分配金を支払うことが決まり、分配金支払い前の基準価額は11000円でした。
したがって、Bさんは分配金支払い時点で700円の利益を出していたことになります。
分配金1000円のうち700円は普通分配金となり、課税対象となります。
一方、残りの300円は特別分配金となります。
これは利益からの分配金ではなく、Bさんが払い込んだ元本の一部が払い戻された形となるため、税金はかかりません。
また特別分配金が支払われた分、個別元本は下方修正されます。
Bさんの例では、300円の特別分配金が支払われたため、分配金支払い後のBさんの個別元本は10300円から10000円に下方修正されます。
特別分配金支払い後の個別元本の変動に注意
今回は、(1)個別元本により普通分配金と特別分配金が区分される、(2)特別分配金が支払われたケースでは個別元本が下落する、ということを理解してください。
特に(2)に関しては、特別分配金が支払われた後も「最初の買い付け価格が個別元本」と思い込み、売却時の基準価額が最初の買い付け価格を下回っていた場合、「売却益が課税されない」と誤った認識を持たれている投資家がいらっしゃいます。
この点については、次回以降改めて詳しく説明します。
今後投資信託を購入した場合、個別元本の推移をしっかり把握すること、またすでに投資信託を保有されている方も、改めて個別元本を確認することをお勧めします。