FIFA、「歴史に残る一戦」と大絶賛
為せば成る、為さねば成らぬ、何事も。
武田信玄作の歌「為せば成る、為さねば成らぬ 成る業を 成らぬと捨つる 人の儚さ」に因んだ、米沢藩主の上杉鷹山の言葉とされています。
11月23日のサッカーW杯、日本VSドイツの大金星はまさにその言葉通りの展開で、皆様の心を大いに震わせたのではないでしょうか。
今年のW杯は、大会主催者側が開催直前にビールの販売禁止(ノンアルコールはOK)に踏み切ったほか、開催費用は約3,000億ドル(約45兆円)などの数字が飛び出し、シャキーラやデュア・リパといった歌姫を含むセレブリティが人権問題を理由にカタールW杯をボイコットするなどの話題を振りまきました。ネガティブな材料が多い中、日本人の心には初戦の対ドイツで大番狂わせの勝利をつかんだ世紀の一戦が語り継がれることになるのでしょう。
画像:FIFA公式サイトは、「日本代表が強豪ドイツを後半に撃破、W杯の歴史に残る戦いを制す」と称賛。
(出所:FIFA/Twitter)
ドイツを始め、各国メディアのヘッドラインは以下の通り。
〇ゴール:「ドイツ震撼、堂安と浅野が日本に劇的な逆転勝利呼び込む(Germany shell-shocked! Doan & Asano seal incredible Japan comeback)」
〇独ビルト紙「障害発生、対日本戦が2018年の失態を彷彿(Debakel-start, Pleite GeGen Japan Schilmmaste Erinnerungen an 2018)
※2018年のW杯、ドイツは予選リーグで対韓国戦にて2対0で大敗北
〇独ヴェルト紙「ドイツ、対日本戦で赤っ恥をさらす(Deutschland Blamiert Sich Gegen Japan)」
〇独DW「ドイツ、対日本戦で初戦敗北(Germany lose to Japan in their first World Cup match)」
〇ヤフー!スポーツ「W杯2022:ドイツはブンデスリーガが育てた日本のチームに大番狂わせを食らう(World Cup 2022: Germany upset by a Japan team that its own Bundesliga helped create)」
〇英デイリー・テレグラフ紙「日本、ドイツに驚異の逆転勝利(Japan hit back to seal surprise victory over Germany)」
〇米CNN「試合終了!日本が2対1でドイツに勝利しW杯に新たな衝撃(Full time! Japan beats Germany 2-1 in another World Cup shock)」
何より、「ドーハの悲劇」を「ドーハの奇跡」に上書きしたことは大きい。
W杯のアジア地区最終予選の最終戦、日本対イラクで、日本代表が終了間際に相手に得点を許して同点に追いつかれ、あと一歩のところで1994年のW杯出場を逃した時と、真逆の展開だったというのも、運命的です。
この結果を受け、英スポーツ分析会社オプタによれば、日本がベスト16に進出する確率は72%以上に急上昇したといいます。逆に、ドイツはドイツの可能性は37%以下に落ち込みました。現時点で1位はオランダで98%近く、イングランドとフランスがそれに続く状況です。
日本対ドイツ戦のタイミングでのドル円急落、裏に利下げ観測前倒し
さて、この試合の間に為替市場ではドル円141.10円台から139.80円台へ下落、翌24日には約1週間ぶりに138円台まで下落しました。試合中のドル円急落劇は、堂安選手が引き分けゴールを決め、日本が逆転勝利を決定するタイミングだったこともあり、ツイッター上ではご祝儀的な円買いが入ったかと話題になりましたね。
何よりドル円が急落した理由として、W杯開催中は市場関係者が少なくなるため、マーケットが薄くなり値が飛びやすくなった事情も考えられます。事前に発表された米新規失業保険申請件数が24万件と、市場予想の22.5万件を超え、日本時間23時45分に発表された米11月製造業PMI・速報値が拡大・縮小の分岐点50を割り込み、景気減速懸念が強まると同時に、利上げ見通しが修正されたことが大きく響きました。米10年債利回りは日本対ドイツ戦の後、3.8%台から3.6%台まで低下したものです。
チャート:11月23日、ドル円と米10年債利回りの1時間足チャート
FF先物市場では11月22日まで、ターミナル・レート5.25%で利下げ開始は23年12月と織り込まれていました。しかし、同23日には利下げ観測が2023年9月に前倒しされ、同年12月に追加利下げとの予想に修正され、米債利回りの低下とドル円の下落を招いたのでしょう。11月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、〇〇との文言を確認したことも、材料視されました。
チャート:FF先物市場、2023年の9月に利下げ開始予想を前倒し(米経済指標などを受け、頻繁に変動する傾向あり)
こうした背景から、11月27日に予定の日本対コスタリカで日本が善戦したとしても、翌28日に対ドイツ戦後の逆転勝利時のような急落劇の再演は難しいと言えそうです。