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「欧州熱波」:中国エアコンメーカーに商機、美的集団が一歩リード

欧州で記録的な猛暑が続くなか、中国のエアコンメーカーに対する市場の注目度が急速に高まっています。フランスやスペイン、ドイツ、英国では40度前後の高温が相次ぎ、これまで限定的だった冷房需要が急速に拡大しており、中国メーカーが欧州市場向けに投入した「工事不要」の移動式セパレートエアコンが各地で品薄となっています。


欧州は依然として「低普及市場」

日本や米国ではエアコン普及率が約90%に達する一方、欧州は普及率が約20%にとどまり、世界の先進国の中でもエアコン普及率が極めて低い市場となっています。国別にみても、普及率はドイツが約3%、英国が約5%と低く、多くの家庭では現在も扇風機や夜間の換気などで暑さをしのいでいます。


欧州でエアコンの普及が進まなかった背景には、これまで夏の気温が比較的穏やかだったことに加え、歴史的建造物が多いことが挙げられます。欧州では古い集合住宅や歴史的建築物が多く、外壁への穴あけや室外機の設置に厳しい規制があります。加えて、EUでは脱炭素政策が進められ、冷房設備の導入に慎重な姿勢が続いてきました。


ただ、近年は、気候変動の影響で猛暑が常態化しつつあり、高温はもはや一時的な異常気象ではなく、公共衛生上の課題として認識され始めています。学校の休校や医療機関への負担増加なども報じられており、「エアコンはぜいたく品」という従来の考え方は大きく変わり始めています。


中国メーカーが欧州市場の課題を解決

今回の猛暑を受けた需要拡大で、存在感を高めているのが中国メーカーです。というのも、従来の壁掛け型エアコンは設置工事が必要で、西欧では工事費だけで1000-2000ユーロに達するケースもあるほか、日本と同様、夏場は施工業者が不足し、設置まで数週間から1カ月以上待つことも珍しくありません。


これに対し、中国メーカーが手掛ける移動式セパレートエアコンは欧州で高い人気を集めています。室外機をベランダや窓際に設置することが可能で、外壁工事は不要。消費者自身でも設置できる点が最大の特徴です。従来の移動式エアコンより冷房能力も高く、賃貸住宅や歴史的建築物にも適しています。


こうした製品は欧州市場のニーズに合致し、フランスやドイツ、スペインでは在庫切れが相次いでおり、一部モデルは中古市場でも新品価格を大きく上回る価格で取引されるなど、供給不足が続いています。


中国メディアが引用した税関データによると、2026年1-5月のフランス、オランダ、ベルギー向けエアコン輸出額は前年同期比で倍増しており、西欧向け輸出全体も大幅に拡大しています。業界関係者によれば、現在、欧州の家庭用エアコンの約80-90%は中国から輸入されたものとなっています。


個別では美的集団が一歩リード

中国本土や香港に上場するエアコン関連銘柄としては、美的集団(00300/000333)や海爾智家(06690/600690)、珠海格力電器(000651)が代表的な銘柄として挙げられます。


3銘柄のうち最も有望視されているのが美的集団で、欧州向け製品「PortaSplit」は大ヒット商品となり、今年に入って販売台数はすでに20万台を突破するなど好調で、フランスやスペイン、ドイツ、英国では空調販売が70%超伸びています。同社は広東省にある順徳工場で増産を進め、旺盛な需要への対応を急いでいるほか、高効率化やAIによる省エネ、環境対応冷媒など次世代製品の開発も進めており、製品競争力の高さも評価されています。シティグループはリポートで、同社の欧州における一般消費者向け空調システム(HVAC)の売上高が2026年4-6月期に前年同期比20%超増加し、通期でも高い伸びを維持すると予想。中国メーカーの中ではトップピックに位置付けています。


海爾智家も欧州で強固な販売網を構築しており、有力銘柄の一角です。海爾智家は家電全般でブランド認知度が高く、欧州事業の基盤は厚いものの、空調事業の売上構成比は美的集団より低いこともあり、今回の欧州猛暑による利益押し上げ効果は相対的に限定的とみられています。ただ、欧州の空調市場が中長期的に拡大すれば、恩恵を受ける可能性は十分にあり、安定した成長が期待できる企業といえそうです。



珠海格力電器も移動式エアコンの販売は好調で、代理店の在庫はほぼ払底しています。ただ、海外売上比率は約15%にとどまる上、自社ブランドの欧州展開も美的集団や海爾智家ほど大きくはなく、現時点では欧州市場の需要拡大による恩恵は相対的に限定的との見方が大勢です。



欧州市場が中長期的な成長ドライバーとなる可能性

今回の販売急増だけで企業業績全体が大きく変わるわけではなく、半導体や電子部品価格の上昇などコスト面の課題も残っていますが、市場そのものの成長余地への期待は高まっています。


欧州の家庭用エアコン普及率は現時点で約20%にとどまっていますが、今後数年間で普及率が30%、40%へと上昇すれば、市場規模が大きく拡大することも考えられます。気候変動による猛暑の常態化に加え、設置工事不要の製品が普及することで、欧州は中国メーカーにとって、米国や東南アジアに続く有力な成長市場へ発展する可能性もありそうです。


現時点では、美的集団が製品開発力、販売実績、ブランド力のいずれにおいても一歩先行しており、欧州市場拡大の最大の恩恵を受ける企業と考えられます。海爾智家がこれに続き、格力電器については海外展開の拡充が今後の評価を左右するポイントとなりそうです。一方、欧州の冷房需要という新たな巨大市場が立ち上がりつつあることを考慮すると、中長期的な視点では、中国エアコンメーカーにとって新たな成長ドライバーとなる可能性があります。


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中国株情報部 アナリスト

竹内 なつ子

大学卒業後、日本の証券会社に勤務。中国・北京での語学留学を経て、日系証券会社の上海駐在員事務所や台湾の会計士事務所で翻訳業務に従事。2級FP技能士。

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