気になるあの企業の給料は?

(7)コロナ禍からの回復進むJR東海

新幹線利用は回復傾向


JR東海は12月15日、12月28日から1月5日までの年末年始の東海道新幹線の予約数について、同日時点で130万席となったと発表しました。この数字は2021年の約1.2倍、コロナ禍前である2018年度と比べて、約7割ほどにまで回復してきたことになります。


同社によれば、年末年始に限らず秋口以降は回復傾向が顕著で、コロナ前の2018年度に比べて、10月が79%、11月が81%、12月については7日時点で84%と、徐々にコロナ前の水準に戻りつつあります。


これは10月以降に開始された「全国旅行支援」の影響も大きいとみられます。旅行のために新幹線を利用する人が増えたわけですね。


また、全国旅行支援が始まる前の時点においても、回復傾向は実際の数字に現れています。今23.3期上期(4-9月)業績では、営業収益が6341億円(前年同期比64%増)、最終損益は969億円の黒字(前年同期は445億円の赤字)と、最終黒字を回復しました。


コロナによる影響がピークだった21.3期には2000億円を超える最終赤字を計上したことを思うと、大幅に改善したことがわかります。では、この間の同社の平均給与はどのように推移していたのでしょうか。


コロナピーク時よりも給与が減少


同社有価証券報告書よりDZHフィナンシャルリサーチ作成


実はコロナ禍の影響がピークだった2021年3月期よりも2022年3月期の方が平均給与が減少しています。直近5年では、コロナの影響が限定的だった2020年3月期がもっとも高く736万円。2019年3月期、2018年3月期と続き、2021年3月期までが700万円台を維持。一番新しい期である2022.3期は700万円台を割り込み、687万円となっています。


この要因はおそらくボーナスの額にあります。同社では2022年3月期は業績不振を理由に取締役は賞与ゼロとなっているのですが、社員の賞与額も減額されているのです。


有価証券報告書によれば、2021年3月期の賞与引当金の当期減少額は207億円であるのに対し、2022年3月期は157億円にとどまっています。その分社員の賞与も減額され、平均給与額の減少につながったのでしょう。とはいえ、23.3期の上期時点では賞与引当金は前年同期より増加していますので、今期についてはおそらくボーナスも増額されているものと思われます。


実は、同じJRグループであるJR東日本の平均給与も同様に2021年3月期の674万円から2022年3月期に639万円に減額されています。同じく賞与の減額が影響していると思われます。


なぜコロナのピーク時よりも、そのあとの方が賞与が減額されたのか。これはさまざまな要因があるとは思いますが、2021年3月期の業績悪化はある程度予想出来ていたものであるのに対し、2022年3月期は当初業績の回復を織り込んでいたにも関わらず最終赤字が継続してしまったこともあったと思います。


想定していた以上にコロナの影響が長引いたことで、賞与額を減額させなければならなくなったということでしょう。


とはいえ、前述したように2023年3月期は上期時点で最終黒字を回復。新幹線の利用も回復基調が続いており、同社業績に対する懸念は後退しつつあります。ここからは再び平均給与もコロナ前の水準を回復していくことでしょう。


この連載の一覧
家電ノジマ 業界最高水準の初任給30万円に引き上げへ
伊藤忠商事が給与を大幅引き上げか SNSでも拡散
2024年もっとも賃上げされた業種は?
賃上げに加えて株式給付も実施 リゾートトラストの取り組み
会社設立以来初 全社員を対象にベア実施したくら寿司
コンテナ運賃上昇でボーナスも大幅増 商船三井
平均年収1000万超でもさらに賃上げを実施する大林組
年収を最大37%引き上げるユニチャーム
給与引き上げ相次ぐゲーム業界 人材獲得競争が激化
新卒初任給を20%引き上げたラクス
2024年はバブル高値更新? 盛り上がるをみせる証券業界の給料は?
賃上げが進む外食産業 松屋フーズHDの平均年収は?
社長が個人資産50億円を社員に贈呈 太っ腹企業の平均給与は
プログリットが給与を50万円引き上げる理由
2023年上半期IPO企業の給与をチェック(後編)
イトーヨーカ堂の再編を進めるセブン&アイ
新卒年収を560万円に引き上げたSansan
メガバンクとネット銀行の給料を比較
組合要求を上回る賃上げを実施するキッコーマン
(10)国内最多の40万人を対象に賃上げへ「イオン」
(9)アルバイトを含む2万人を対象に賃上げを実施するオリエンタルランド
(8)初任給30万円に引き上げるファーストリテイリング
12月IPO企業の給与をチェック
(7)コロナ禍からの回復進むJR東海
気になるあの企業の給料は?(6)半導体製造装置で世界トップクラス 東京エレクトロン
気になるあの企業の給料は?(5)コンテナ特需で過去最高益の日本郵船
気になるあの企業の給料は?(4)大企業にも負けないベンチャーのメルカリ
気になるあの企業の給料は?(3) 時価総額日本一のトヨタ自動車
気になるあの企業の給料は?(2) 巨額赤字が話題のソフトバンクグループ
気になるあの企業の給料は?(1) 初任給42万円超えのサイバーエージェント

日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

斎藤 裕昭の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております