気になるテーマ解説

AIラリーは半導体製造装置に回帰?

投資家の中では「AIラリーがいつまで続くのか?」といった疑問があると思います。米国のAI開発企業であるOpenAIが「ChatGPT」を公開したことを契機に、世界的にAI開発ブームが巻き起こりました。ちなみにリリース日は2022年11月30日なので、もうすぐ4年になろうとしているところです。


AI投資が始まった最初のころは、AI開発に必要とされるGPUを手掛けるエヌビディアが注目されました。日本では「一生一緒にエヌビディア」というワードも流行りましたが、その後に騰勢を強めたのはエヌビディア以外でした。エヌビディアの業績が良いのはもはやあたりまえであり、それ以上に伸びそうなのはどこか?ということでスポットライトが当たったのは半導体製造装置メーカーです。


半導体製造装置株が買われると、それに追随して電線株が上昇。そして2026年はメモリーやセラミックコンデンサなどの電子部品に波及していきました。それじゃあ次はどこか?AIラリーは終了か?という見方が強まってきたところ、なんと再び半導体製造装置に回帰する動きが見えます。


半導体メーカーの増産計画

AI向けに膨大な量の半導体が必要であり、当初はAIが学習するために最適とされるGPUが真っ先に注目されました。その後はGPUが高速でデータを出し入れできるようにするメモリーが必要、AIが自律的に行動するいわゆる「AIエージェント」にはCPUが必要というような状況です。


どの半導体も需給がひっ迫し、メーカーの生産が追い付いていません。需要に対応するには新工場を建てて供給能力を増やす必要があり、6月終盤に大規模な投資が発表されました。


大規模な増産投資を発表したのは韓国のSKハイニックスとサムスン電子。両社ともにメモリーの世界的な大手企業であり、両社で計800兆ウォン(約83兆円)を投じて4つの半導体工場を建設するとのこと。今後5年以内にメモリーの生産能力を2倍に増やす計画です。

 

※発表を基に弊社作成


半導体工場の建設にかかる費用が、ほかと比べてケタ違いであることが分かりますね。これだけ費用が膨大なのは工場の中身にあります。半導体製造装置は非常に高額で、1つあたり数千万円のものもあれば、上では数百億円のものも存在します。それらを何十と工場内に設置するため、とんでもない額になるということです。


ちなみに、東京スカイツリーの総事業費は約650億円です。オランダの半導体メーカーASMLが手掛ける露光装置(半導体基板に回路を焼き付ける装置)は、最先端モデルで約600億円と言われます。大きなコンテナ1つくらいの機械が634メートルの建物と同じくらい高額というのが半導体製造装置の世界です。


半導体増産の恩恵は装置メーカーに

最近の大きなニュースは上記のように韓国勢2社の大規模投資ですが、世界の半導体メーカー各社も需要の動向をみて増産に踏み切る可能性はあります。その恩恵をダイレクトに享受するのは半導体製造装置メーカーであるため、AIラリーは巡り巡って振り出しに戻るかもしれません。


製造装置では日本企業が高いシェアを持っていますので、今後も大きなリターンが狙える銘柄群として注目したいところです。


話は変わりますが、7月1日に、SNS大手のメタ・プラットフォームズがAIクラウドインフラ事業を立ち上げ、余剰となった計算資源を外部提供する計画との報道が伝わりました。先行投資を経て回収期に入るとの観測が強まり、AIインフラ関連として買われてきた銘柄が急落する事態となっています。アップルが中国製メモリーを調達することを検討しているとの報道も悪材料視されました。


AIラリーは急騰と急落を繰り返しながら上昇してきていますが、どこが天井となるかは分かりません。好材料があれば悪材料もありますので、衝動買い、狼狽売りはせず、冷静に見極めることが大切です。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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