みんなどうしてる? 確定拠出年金(下)どんな運用をしている?

確定拠出年金の制度が始まったのは2001年10月。20年以上の間には、何度も制度が見直されてきました。今年も大きな改正が施行され、より多くの人が確定拠出年金制度に加入できるよう、環境が整ってきています。筆者も、個人の家計相談などの現場で、iDeCo(個人型確定拠出年金)に興味を示す方が増えていると実感しています。


そこで、国民年金基金連合会などの公表資料から、3回にわたって「みんなどうしてる? 確定拠出年金」と題して、現状をご紹介しましょう。今回は、運用についてです。


シリーズ 「みんなどうしてる? 確定拠出年金」

(上)加入者の状況

(中)掛金はいくら払っている?

(下)どんな運用をしている?(今回)


確定拠出年金の運用商品


確定拠出年金は、加入者自身自が掛金の運用を行ないます。運用がうまくいけば、将来受け取る一時金や年金が多くなりますし、うまくいかなければ、思ったほど多くないかもしれません。


企業型確定拠出年金(DC)でも、個人型確定拠出年金(iDeCo)でも、「運営管理機関(確定拠出年金を提供する金融機関)が用意した金融商品の中から、どの金融商品をどの割合で購入するかを決めるのは、加入者です。


運用対象の金融商品は、運営管理機関によって3~35商品(ただし、2023年4月末までは 35商品を超えている場合も)と、まちまちです。iDeCoを始めようとしている方から、「運営管理機関をどのように選んだら良いか」と聞かれることがあります。口座管理手数料の多寡に注目する人は多いですが、「どのような金融商品を運用ラインナップに取り揃えているか」も重要な選択基準ではないでしょうか。


運営管理機関を金融商品の種類は、大きく分けて「元本確保型の金融商品」と「投資信託」があります。


元本確保型は、定期預金や積立年金のような保険商品が代表的です。投資信託の投資対象は、国内株式型、海外株式型、国内債券型、海外債券型、バランス型などさまざまです。また、ターゲットイヤー型と呼ばれる、経過年数で運用対象の配分を変更していく投資信託を扱っている運営管理機関もあります。


加入者は、どんな金融商品を選んでいるか?


国民年金基金連合会が公表した、運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2022年3月末)」によると、投資信託を選ぶ加入者が増加しています。2022年3月末時点で、資産額全体に占める投資信託の割合は、企業型が58%、iDeCoが61%です。


各年度末時点における金融商品別の残高を、企業型は【グラフ1】、個人型(iDeCo)は【グラフ2】に示しました。



どちらも同じように見えますが、iDeCoの資産規模は、企業型の約5分の1です。しかし近年は、iDeCoの資産額の伸び率が高くなっています。


若い世代のiDeCoは、外国株投信に人気集中


次に、同じ資料から、2022年3月末時点における運用商品の選択割合を、加入者の年代別に見てみましょう。掛金の配分として、どの金融商品を選んでいるかを集計したものです。


まずは企業型です【グラフ3】。


どの年代も、預貯金の残高が他の金融商品を上回っています。企業型の掛金は企業が払い(マッチング拠出分の掛金は加入者である従業員が払います)、口座管理手数料も企業が負担します。加入者自身の現時点でのフトコロを傷めないせいでしょうか。それとも、iDeCoほど加入者が主体的でないからでしょうか。


それでも、企業型で元本確保型(預貯金・保険)のみで運用している人の割合は、年々減っています。同資料によると、2020年3月末は34.10%でしたが、2020年3月末は32.10%、2021年3月末には 29.10%にまで低下しています。


【グラフ4】は、個人型(iDeCo)の掛金配分です。企業型と異なる点がいくつかあるようです。


まずは、預貯金を選択する加入者は、若い人ほど少ないことです。iDeCoの口座管理手数料は、加入者自身が負担します。預貯金の低い金利では口座管理手数料をまかなうのは厳しいため、手数料を上回る運用をしたいと考えるのは自然なことです。また、資産形成にiDeCoを選んだ人は、運用に対して積極的に考えている可能性が高いと思われます。


iDeCoの加入者は、若い世代ほど投資信託を選ぶ割合が高く、その中でも外国株式型が多い傾向です。リスクを抑えるには、地域や通貨、投資対象についての分散効果が高いバランス型投信の方が適していると言えます。企業型ではどの年代でもバランス型が多い一方で、iDeCo加入者は、50歳代までの全ての世代で、バランス型より外国株式型の方が多い点が興味深いです。


以上、確定拠出年金の掛金を、どのような金融商品に配分しているのか、現状を見てきました。投資信託は、投資対象の市況によって運用実績が変わります。定期的に運用レポートや残高明細などをチェックするようにしましょう。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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