若くて勢いのある有望な企業がどれだけあるのか?といった点は、投資を考える上で重要な要素です。今回は米調査会社CBインサイツが発表している「ユニコーン企業」のランキングをもとに、中国の有望企業を見ていきたいと思います。
世界のユニコーン企業数、22年6月時点で1170社
ユニコーン企業とは、時価総額に相当する企業価値が10億米ドルを超える未上場のスタートアップ企業を指します。名前の由来は、伝説の生き物である「一角獣(ユニコーン)」で、「めったに現れることがない」という意味が込められています。
未上場で、なおかつ企業価値が10億米ドルを超えるような大きな企業は、もともと「ユニコーン」という名前の通り希少な存在でしたが、近年は世界的なカネ余りでベンチャー投資が活発化したこともあり、世界中でユニコーン企業が急増しています。CBインサイツによると、2022年2月に企業数が初めて1000社を突破。2022年6月時点でユニコーン企業は1170社に達しています。すっかり希少性は失われてしまいました。
なかには、企業価値が100億米ドルを超える「デカコーン」、1000億米ドルを超える「ヘクトコーン」などと呼ばれる超巨大スタートアップまで誕生しています。「ヘクトコーン企業」ともなると、その企業価値は、未上場にもかかわらず、日本の上場企業の時価総額トップ4に入ってくるような規模になります。
ユニコーンの国別企業数、中国は米国に次ぐ2位
次にCBインサイツで、ユニコーンの国別企業数を見てみましょう。22年6月末時点で、1位は米国の628社(全体の53.7%)、そして、2位が中国の174社(同14.9%)となっています。ベンチャー投資が活発な米国でユニコーンが急増し、ここ数年は米国と中国の差が開きつつありますが、米中2カ国のユニコーンが全体の約7割を占めているのです。
一方、日本は22年6月時点で6社しかなく、スイス、アイルランド、インドネシアと並んで全体で17位です。次のGAFA(グーグル、アマゾン、旧フェイスブック、アップル)、BATH(百度、アリババ、テンセント、華為)の地位を狙う、その予備軍とも言えるユニコーン企業が、日本で6社しかないのは寂しい限りです。
中国で多くのユニコーン企業が誕生している背景には、中国政府が「大衆創業、万衆創新(大衆による起業、万人によるイノベーション)」を掲げ、積極的にベンチャー支援を行っていることが挙げられます。
次々と生まれるベンチャー企業の中から、ユニコーン企業にまで成長できるのは、ほんの一握りですが、こうしたユニコーン企業の存在が、経済の新陳代謝を促し、新たな成長のドライバーとなっているのです。
世界最大のユニコーンは中国のバイトダンス
では、次に世界と中国のユニコーン企業上位10社を見てみましょう。
中国企業は上位10社に2社が入っており、トップは動画アプリのバイトダンス(字節跳動)。日本でもお馴染みの「TikTok」を運営しているあの会社です。中国と海外でブランド名を別にして運営しているため、中国企業のアプリとは知らずに使っている人もいるのではないでしょうか。企業評価額は1400億米ドルに達し、先ほど紹介した「ヘクトコーン企業(評価額1000億米ドル以上)」です。
世界3位のSHEIN(希音)も企業評価額がちょうど1000億米ドルに到達し、世界で3社しかない「ヘクトコーン企業」への仲間入りを果たしています。中国の新興アパレルブランドのSHEINはデジタル技術を駆使した販売で急成長しており、世界150以上の国・地域でサービスを展開。日本語サイトも運営しているので、読者の方の中にも利用しているという人がいるかもしれません。
(出典:SHEINの日本語ホームページ)
ほかにも、中国のユニコーンには魅力的な企業がたくさんあります。中国のインスタグラムとも呼ばれる「小紅書」は、若い女性を中心に利用者が2億人を超えています。「DJI」は世界最大のドローンメーカーで、日本の家電量販店でも同社製品をよく見かけます。無糖炭酸飲料の「元気森林(GENKI FOREST)」は健康志向を背景に急成長しており、昨年には日本でも輸入販売が始まりました。中国では次々と魅力的な企業が生まれ、そして急成長を遂げているのです。これらの企業は、未上場のため株式市場を通じて投資することはできませんが、いずれ上場となった場合には注目したい企業ばかりです。
(出典:元気森林のホームページ)
中国のユニコーンに関しては、7月に発売したばかりの「中国株二季報の2022年夏秋号」の巻頭で特集を組んでいます。ぜひ中国株二季報も併せてご覧ください。