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「映画市場」:23年興行収入は4年ぶり高水準、国産映画が圧倒的存在感

2024年は2月10-17日が春節(旧正月)で連休となりますが、大型連休が近付くと、投資テーマの1つとして映画関連が大きな注目を集めるようになります。中国で新作の公開が増えるタイミングは春節、夏休み、国慶節の計3回に大きく分けられ、オンラインチケット最大手の猫眼娯楽(01896)がリアルタイムで作品ごとの興行収入や上映回数などを公表していることもあり、「記録更新」や「大台突破」といった見出しが並べば、関連銘柄の株価が大きく動くこともしばしば。新型コロナウイルスの感染拡大と厳しい防疫対策を受けて映画館が全面的な営業停止に追い込まれるなど、中国の映画産業は一時、壊滅的な打撃を受けましたが、コロナ後はハイペースでの回復が続いています。


23年興行収入は83%増、観客動員数は83%増

猫眼娯楽が年初に発表したリポートによると、中国の2023年映画興行収入は549億1500万元、観客動員数は延べ12億9900万人に上ったことがわかりました。コロナ前の19年(興行収入は641億4800万元、観客数は17億2800万元)の水準には届かなかったものの、興行収入と観客数は前年比でそれぞれ83.4%、82.7%増え、4年ぶりの高水準を記録しています。




市場回復の背景には、コンテンツの充実や多様化に伴ってファミリーや女性の観客が増えたことが挙げられるほか、地方都市の開拓が進んだこともあるようです。というのも、23年に新たに建設された映画館は613館にとどまり、前年(827館)から23.9%減少。ただ、新たに開業した映画館のうち、3線都市・4線都市と呼ばれる地方都市が占める割合は近年、1線都市(北京、上海、広州、深センの4都市)と2線都市(1線都市に次ぐ規模の都市)の割合を上回る状況が続いており、23年は3線都市が全体の21.9%、4線都市が35.7%をそれぞれ占めています。



興行収入トップ10は国産映画が独占、1位は『満江紅』

一方、中国映画市場の特徴として、国産映画の占める割合が高いことが挙げられます。興行収入に占める国産映画の比率は、19年は64.1%にとどまっていましたが、23年は全体の83.8%まで拡大し、外国映画(16.2%)の5倍超に上りました。また、23年に興行収入が1億元を超えた作品は計73本あり、うち50本が国産映画で、国産映画が興行収入トップ10を独占しました。


具体的に作品をみてみると、23年の興行収入トップは、張芸謀(チャン・イーモウ)監督が手掛けた『満江紅』で45億4400万元。南宋の武将・岳飛が残した詩がモチーフとなっており、春節に合わせて公開されました。2位は香港の大スター、劉徳華(アンディ・ラウ)も出演するSF映画、『流浪地球2』で40億2900万元、3位は特殊詐欺がテーマの『孤注一擲』で38億4800万元などとなっています。


年末年始の興行収入は過去最高、24年春節は楽観ムード優勢

続く24年については、2月10日(旧暦1月1日)に複数の作品が公開されることが決まっており、中国の人気アニメ『熊出没』の劇場版、『熊出没・逆転人生』や、19年に公開された大ヒット映画、『飛馳人生』の続編、『飛馳人生2』などの作品への関心が高くなっているようです。近年の春節シーズンをみてみると、興行収入は21年が78億4200万元、22年が60億3900万元、23年が67億6500万元といずれも高水準。ただ、市場では楽観ムードが広がっています。というのも、年末年始(23年12月30日-24年1月1日)の興行収入は15億3300万元に上り、21年(13億300万元)を超え、同時期として過去最高を更新していることが理由。中国の証券各社は、春節もこの流れが続くとし、春節でトップ2の作品は興行収入がいずれも20億元を超えると予想しています。証券会社は、中国の映画産業はコロナ禍を経て全面的な回復の段階にあると指摘。24年は映画製作のペースアップや観客のニーズに合った作品の増加、人工知能(AI)技術の活用なども大きく進むと期待しています。


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中国株情報部 アナリスト

竹内 なつ子

大学卒業後、日本の証券会社に勤務。中国・北京での語学留学を経て、日系証券会社の上海駐在員事務所や台湾の会計士事務所で翻訳業務に従事。2級FP技能士。

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