新型コロナウイルスが世界的に大流行したこともあり、近年は海外を旅行する機会もめっきり減ってしまいましたが、中国には世界遺産だけでも60カ所近くあり、魅力的な観光地は数え切れないほどあります。中国の株式市場には、本土市場を中心に景勝地の運営・管理を手掛ける企業が多く上場しており、代表的なものをいくつか紹介してみたいと思います。
「アジアのヴェネツィア」や大ヒット映画のモデル地も
まずは、上海市場にB株も上場している黄山旅游発展。安徽省にある「黄山」の独占開発権を持ち、入場料やロープウエー、ホテルなどが主な収入源となっています。黄山は独特の地形と神秘的な景観で知られ、古くから多くの山水画の題材となっており、雲海も絶景。近くには「屯渓老街」と呼ばれる古い建物が並ぶ商業地域もあり、合わせて立ち寄ってみるのもおすすめです。
麗江玉龍旅遊は雲南省麗江市にある「玉龍雪山」でロープウエーやホテル、レストランなどを運営しています。玉龍雪山では、日本でも有名な映画監督、張芸謀(チャン・イーモウ)氏が手掛けた「印象麗江」というショーが行われており、人気を博しています。また、少数民族の納西(ナシ)族が築いた「麗江古城」は、高倉健が出演した映画『千里走単騎(単騎、千里を走る。)』の撮影地としても知られています。
中青旅控股は中国の大手旅行会社ですが、子会社を通じて浙江省にある「烏鎮」などの運営を手掛けています。「江南」と呼ばれる江蘇省や浙江省の一帯には、水路を活用した古い街並み「水郷古鎮」が点在しており、「アジアのヴェネツィア」などと呼ばれることも。烏鎮も水郷古鎮の代表的な1つで、上海観光のついでに足を伸ばしてみるのもいいかもしれません。
香港上場銘柄では、チャイナトラベル・ホンコンが挙げられます。同社は寧夏回族自治区にある「沙坡頭景区」の運営を手掛けており、沙坡頭景区はタクラマカン砂漠などとともに中国5大砂漠の1つに数えられています。景勝地とは異なりますが、チャイナトラベル・ホンコンは深センにあるテーマパーク「世界之窓」や「錦繍中華」の運営も手掛けています。
このほかでは、仏教の聖地としても知られる四川省「峨嵋山」の管理・運営を手掛ける峨眉山旅遊や、映画『アバター』のモデルになったとされる湖北省「張家界」で旅行資源の開発などを手掛ける張家界旅遊集団、広西チワン族自治区にある「桂林」で川下りなどのサービスを提供する桂林旅遊、中国と北朝鮮の国境地帯にある「長白山」(別名、白頭山)で事業を手掛ける長白山旅遊などが代表的なものとして挙げられます。
連休中の旅行者数や観光収入はコロナ禍前の水準を回復
中国では22年12月に「ゼロコロナ」政策が終了し、国内の旅行市場は急速に回復しています。中国文化観光部などのデータによると、23年の国内旅行者数は延べ48億2000万人、観光収入は4兆9000億元に上り、前年比でそれぞれ90.6%、145.7%増加。ただ、コロナ禍前の19年実績(それぞれ60億1000万人、5兆7000億元)と比べると、まだ開きがあることがわかります。中国の証券会社は19年の水準に届かなかった原因として、コロナ禍に観光業の従事者が大きく減ったせいで、受け入れ側が需要の回復に十分に対応できなかったとの見方を示しています。
ただ、23年の労働節(メーデー)連休以降は、端午節や国慶節など各連休中の旅行者数と観光収入がともに19年同期の水準をほぼ回復。少し前に終わった24年の春節(旧正月)連休では、旅行者数が延べ4億7000万人、観光収入が6326億9000万元に上り、19年動機をそれぞれ19.0%、7.7%上回るなど、好調を記録しています。24年通期では、旅行者数が延べ60億3000万人、観光収入が6兆元に達し、24年の水準をほぼ回復できるとみられています。