「投資って、やった方が良いの?」と聞かれますが

「投資って、やった方が良いのですか?」と尋ねられることがあります。「周りの人が投資をしているから」「投資をしていないと時代に置いて行かれるから」という理由で聞いてくる人が多いようです。


へそ曲がりの私は、「必要性を感じないならやらなくていいんじゃない?」とか、「懐疑的ならやらなければいいでしょ」と思ってしまいます。みなさんは、いかがでしょうか。


「NISAやiDeCoをきっかけに投資を始めた人」が約3割


日本証券業協会では、毎年、「個人投資家の証券投資に関する意識調査」を行なっています。個人投資家による証券保有の実態や証券投資への意識等を把握し、資産形成の施策などに役立てるためです。2022年7月中旬にインターネットで日本全国の20歳以上の証券保有者5,000人に行った調査結果が、公表されています。


その中に、「有価証券への投資について検討したり、興味・関心を持ったきっかけ」を尋ねた設問がありました。複数回答で、最も多かったのは「投資に関する税制優遇制度(40.1%)」。ふむふむ。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)が貢献しているようです。


さらに、回答の多い順に「今の収入を増やしたい(32.6%)」「株主優待(32.3%)」と続きます。このように見ていると「なるほど、そうだよね」で終わってしまいそうになるのですが、この設問をじっくり見ていると、ある傾向が見えてきたのです。


主体的に投資を始める人が増えている


この意識調査は、日本証券業協会によって毎年行われており、この設問は、2021年調査と2022年調査の結果を比較できます。2022年調査で回答した割合が、前年より増えたものと減ったものを分けてグラフを作成してみました。


回答した人の割合が増えている選択肢を集めたものが、【グラフ1】です。「税制優遇制度」を知り、「将来不安により必要性を感じ」、「少額でも始められる」し「リスクを抑える方法がある」なら、やってみようじゃないかと自ら行動をする姿が浮かび上がります。



黄色い棒グラフで示した「資産形成の重要性について学んだ」は、2022年に初めて提示された選択肢のため、黄色で示し、便宜上、増加した項目と同じグラフの中に収めています。


一方、前年より回答した割合が減少した選択肢を集めた【グラフ2】には、自分以外の誰かが登場しているケースが多く見られます。「周囲の人」「証券会社や金融機関」「相続・贈与をした人」の影がちらつくものが減少しています。



投資を始めるきっかけとして、少しですが主体的になっていると見て良いのではないでしょうか。この傾向は、喜ばしいことです。周囲の人が投資をしているからといって、必ずしもあなたが投資をしなければならないとは限りません。ましてや、金融機関の勧誘やキャンペーンによって行動が促されて投資を始めたなどという人は、投資をしたところで、結果が目に見えています。


また、証券投資で今の収入を増やそうとするならば、短期的なトレーディングになりがちですが、この回答も減っています。株主優待については、投資のきっかけとしては重要な役割を担っていることと思います。しかし、それよりも本来の資産作りに関心が向いてきているのでしょう。


金融リテラシーの高い人ほど、投資方針を立てている


もうひとつ、興味深い結果をご紹介しましょう。この「個人投資家の証券投資に関する意識調査」は、金融に関する複数の質問項目についての正誤を用いて回答者の金融リテラシーを測定し、金融リテラシーを3段階にレベル分けしています。回答者の金融リテラシーの高低によって、投資行動や考え方に違いがあるかを調べるのです。


回答者のうち、株式を保有する3,782人に対して投資方針を尋ね、金融リテラシーのレベルとのクロス集計を行った結果が【グラフ3】です。



金融リテラシーの高い人ほど、赤色で示した「特に決めていない」という回答者が少なくなっています。金融リテラシーの低い層のうちの13.6%が、「特に決めていない」と回答しています。


【グラフ4】は、投資信託の保有者3,048人に対し、投資方針を尋ねた結果です。株式保有者よりも、「特に決めていない」と回答した人は多いですが、同じように、金融リテラシーが高いほど「特に決めていない」人の割合は少ない傾向です。金融リテラシーが低い層では、24.6%の人が投資方針を決めていないようです。



選択肢のどれを投資方針に掲げるかは、投資家それぞれの投資に対する考え方やマネープランによります。どれが良いかは、その人しだい。正解はありません。


問題なのは、「特に決めていない」という人。自分なりの投資方針を柱に据えることが大切です。


投資ですから、相場しだいで思わぬ値動きになる場合もあります。自分の投資方針に固執し過ぎず、状況に合わせて臨機応変に対応することも必要です。この柔軟な考えを持つこともなく、「特に決めていない」という姿勢では、リスクコントロールができないのではないでしょうか。周囲に惑わされないためにも、視野を広げてさまざまな見方に触れ、自らの考えを持って投資に向き合いましょう。


【参考】

個人投資家の証券投資に関する意識調査について」(日本証券業協会)

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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