株式や投資信託などを長年続けていると、「取引金融機関を替えたい」と思うこともあるでしょう。
よくある例としては、手数料や取引ルールなどが変更され、現在利用中の証券会社や銀行より有利な金融機関が出てきた場合や、投資信託などの商品ラインナップが魅力的な金融機関がほかにある場合などです。
今回のコラムでは、取引開始後に別の金融機関に預け替えをしたくなった場合の「移管」の手続きについて、説明しましょう。
まずは金融機関選びのポイント
初めて投資をする人から「どこの金融機関がお勧めですか?」と聞かれることがあります。その人が何を重視し、どのような考えなのかによって適した金融機関は異なります。
次のような点で、自分の考えに合う金融機関を選びましょう。
●リアル店舗(対面型)かインターネットやアプリでの取引か
●取扱商品のラインナップ(投資信託、単元未満株、外国株式、ポイント投資など)
●手数料(有料/無料、有料の手数料率、取引の都度か定額か、口座管理料など)
●投資信託などの購入ルール(積立投資、口数指定・金額指定、最低取引額など)
●決済方法(積立投資の自動振替や即時入金・出金などのルールなど)
●サポート体制(コールセンターやチャット、動画配信、情報提供ツールなど)
口座開設時に、これらのことを十分に検討して選んだとしても、金融機関は、随時、サービスを見直しています。その結果、取引開始時にはベストだと思っていたけれど、いつの間にか他社の方が条件が良くなっていた、などというケースはよくあります。
金融機関間のサービス競争にまどわされ、その都度、取引金融機関を変更するのは現実的ではありません。まず、口座開設の際に、自分が何を重視して金融機関を選択するのか、考えを明確にすることが大切です。
「移管」とは、証券を換金せずに他の金融機関に預け替えること
それでも、何らかの理由で金融機関を変更したい場合もあるでしょう。全てを切り替えなくても、複数の金融機関で取引をすることは可能です。ただし、NISA(少額投資非課税制度)は複数の金融機関で利用することはできません。また、いくつもの金融機関に分けると管理しにくくなるため、一社にまとめて取引したいと考える投資家もいます。
金融機関の変更や、1つの金融機関に取引をまとめる場合、保有している株式や投資信託を現金化せず、運用中のまま別の金融機関に移す手続きができます。
これを「移管」といいます。また、元の金融機関から移管する証券が出ていくことを「出庫」といい、新たに預かる金融機関側では「入庫」といいます。
「移管」の手続きや注意点
【図】は、移管の手続きのイメージです。
現在、証券取引の多くは証券保管振替機構(ほふり)を通しているので、移管はスムーズです。現在取引している金融機関に移管したい旨を申し出て、必要書類に記入し、返送するだけです。
ただし、移管に際し、出庫する側の金融機関が手数料を徴収するケースがほとんどです。入庫側では無料の場合が多いです。出庫の手数料は金融機関ごとに異なりますが、1銘柄につき税込み1,100円と定める金融機関が多いようです。別途、1件につき税込み550円や1,100円を上乗せしたり、20銘柄程度の一定銘柄数に手数料の上限を定めたりするケースがありますので、取引金融機関に確認しましょう。
移管に際し、注意点があります。
●移管元(出庫側)と移管先(入庫側)で口座の区分(一般口座・特定口座)が同じであること
●移管する証券は、移管先(入庫側)の金融機関でも取り扱いがあること
●NISA口座は移管できない
などです。
特に、移管したい銘柄が、移管先でも取り扱っているかどうかについては、事前によく調べておきましょう。銀行では上場株式やETF(上場株式投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)の売買ができません。これらは証券会社でなければ移管できません。
また、投資信託や外国株式は、金融機関が取扱銘柄を定めています。各金融機関では、すべての投資信託を取り扱っているわけではないのです。移管先で取り扱っていない銘柄は、移管できません。なお「投信積立」などの累積投資契約を移管する場合、移管先でも累積投資サービスを行っていなければなりません。
移管には日数を要します。通常、一連の流れに2週間程度かかるといわれています。金融機関が混雑していれば、手続きにかかる日数が長くなることもあります。また、投資家自身が書類に記入する時間をかけてしまい、返送が遅くなればその分日にちはかかります。余裕をもって手続きしましょう。