今回は中国の主要証券取引所である上海証券取引所に上場する主な企業を紹介していきたいと思います。上海証券取引所は時価総額ベースでニューヨーク証券取引所、ナスダックに次ぐ世界3位の規模を誇り、中国を代表する企業が数多く上場しています。
上海証券取引所には2つのボードがある
銘柄の紹介をする前に、上海証券取引所について概要を説明しておきます。上海証券取引所には、大・中型企業向けの「メインボード」と、ハイテク企業向けの「科創板(かそうばん:Star Market)」という2つのボード(市場)があり、このうち日本の個人投資家が投資できるのは、メインボードの方です。「科創板」は、2019年に設立されたばかりの新しい市場で、イノベーション能力の高いハイテク企業が上場していますが、今のところ日本を含む海外の個人投資家が直接投資することはできません。
上海のメインボードには7月25日時点で1700社が上場しており、時価総額は約851兆円に上ります。国有の大型企業が多く、重厚長大型の製造業のほか、銀行や保険・証券といった金融セクターが目立ちます。ざっくりと言って従来型産業が多いといったイメージです。業種別のウエートは製造業が22%、金融業が21%を占め、こうした銘柄の値動きが株価にも大きく反映されます。
時価総額上位10銘柄はいずれも中国を代表する企業
時価総額の上位銘柄を見ると、上位10銘柄のなかに銀行が4銘柄、保険が2銘柄と金融セクターが6銘柄を占めています。そして、特徴的なのは、香港市場にも重複上場している銘柄が多いという点です。上位10銘柄のなかで、上海証券取引所にのみ上場している銘柄は、貴州茅台酒(600519)の1銘柄だけです。中国長江電力(600900)も香港市場には上場していませんが、ロンドン市場に重複上場しています。
時価総額1位は白酒の王者、貴州茅台酒
上海証券取引所で時価総額1位は白酒の貴州茅台酒(600519)です。日本で時価総額トップのトヨタ(約35兆円)を大きく上回る規模です。白酒は穀物のコーリャンを主な原料とした蒸留酒で、アルコール度数は50度前後と高く、なかには60度を超えるものまであります。中国での宴席には欠かせないお酒です。値段はピンキリですが、中国の通販サイトを見てみると1本当たり80万元(約1600万円)もする高級酒まで売られています。希少性のある茅台酒は投機の対象となり、オークションで高値がつくこともあります。
最近では茅台酒の入った白酒のカップアイスを発売し、SNSを通じて大きな話題となりました。ネックは最低取引単位の100株を買うだけでも400万円近くかかってしまうことでしょうか。これから中国株投資を始めようという人には、いきなりハードルの高い銘柄です。
時価総額2位は総資産で世界最大の銀行、中国工商銀行
時価総額2位の中国工商銀行(601398)は総資産で世界最大の銀行です。総資産は日本最大の三菱UFJフィナンシャル・グループの2倍近い規模になります。
もともと中国の中央銀行に当たる中国人民銀行が行っていた民間銀行業務のうち、商工業向け銀行業務を引き継いで1984年に設立されました。かつて中国では、中国人民銀行が中央銀行の役割と民間銀行の役割を全て担っていたのです。
筆者は北京で働いていた時、電気代やガス代の引き落とし口座として中国工商銀行を利用していました。メインで使っていたのは、家から最も近いところにあった中国銀行(601988)でしたが、どちらの銀行もあちこちに窓口やATMがあったので非常に便利でした。日本にいて中国工商銀行のサービスを利用する機会はほとんどないとは思いますが、日本では東京や大阪に中国工商銀行の支店があります。
時価総額4位は中国最大の石油グループ、ペトロチャイナ
時価総額4位は石油・天然ガスを手掛けるペトロチャイナ(601857)です。日本の新聞にもたびたび登場するので、聞いたことがあるという方もいると思います。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が、2003年から2007年にかけて保有していたこともある銘柄です。
国内外に油田の権益を保有し、採掘から精製、販売までを一貫して手掛ける中国石油メジャーの一角で、2021年末時点の原油確認埋蔵量は約60億6400万バレル。全国で運営するガソリンスタンドは2万2800カ所に上ります(日本は2021年度末で全国に約2万8500カ所)。
中国政府が2060年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指すなか、近年は新エネルギー事業を強化するなど石油依存からの脱却を進めています。今後の発展が見込まれる水素エネルギー事業などにも力を入れており、中国政府の政策実現を後押する国策銘柄とも言えます。
次回は上海証券取引所に上場する主要銘柄の続きを紹介したいと思います。お楽しみに。