ほったらかさない投資で力をつけよう

投資をする人のすそ野が広がり、「ほったらかし投資」という言葉も聞かれるようになりました。また、ロボアドバイザーなどAI(人工知能)に資産運用や資産管理を一任する、「おまかせ取引」の利用者も増えています。


「ほったらかし投資」や「おまかせ取引」のおかげで、投資の敷居はずいぶん下がりました。ですが、ずっと「ほったらかし」や「おまかせ」で良いのでしょうか?


投資をしない人の理由


日本証券業協会「証券投資に関する全国調査(2021年)」によると、証券投資が必要だと思っている人は約3割。残りの約7割の人は、証券投資は必要ないと思っています。証券投資が必要ないと回答した人の中で最も多い理由は、「損する可能性がある」となっています【グラフ1】。



値下がりリスクを低く抑える方法として、「長期・積立・分散投資」が提唱されています。それを実現するしくみが少額投資非課税制度(NISA)です。また、「金融や投資に関する知識を持っていない」人には冒頭の「おまかせ取引」が対応し、「価格の変動に神経を使うのが嫌」という人には「ほったらかし投資」が受け皿となっています。


このように、官民で投資を身近にする取り組みが進んでいます。


投資は自分のフトコロを肥やすだけのものではない


また、「ギャンブルのようなもの」と考えている人も多いようです。


投資は「金融」のしくみの1つ。「資本を投じるに値する」と考えるものに、資金がある人が融通するしくみです。必要なところへの資金提供という、社会の中で期待される、非常に役に立つ行為が投資なのです。


資金を受けた者が、そのお金を活用してうまくいけば、社会全体に恩恵が行き渡ります。従業員には給料が支払われ、できあがった優れた製品やサービスは消費者の生活を便利にし、政府や自治体には納税され、投資家には配当金が支払われます。


この循環を「ギャンブル」と捉えるか、社会活動と捉えるか。


「資本を投じるに値する」かどうか、投資家自身の目で確認し、社会の発展に必要だと思えばGOサイン。投じた資金の行く末をよく考えなかったり、理解できなかったりするならば、それはギャンブルのようだといえるでしょう。


おまかせし過ぎない


「資本を投じるに値する」かどうかは、投資家自身の考えです。


株式投資の場合、初めはその企業が好きか嫌いかで選んでも良いと思います。企業の理念が好きで、作っている製品を買いたいと思うなら、きっとそれは「資本を投じるに値する」企業でしょう。


投資信託は、株式や債券などをパックした金融商品です。さまざまな銘柄を組み入れた間接的な投資なので「資本を投じるに値する」という感覚が生まれにくいかもしれません。なので、最初は【グラフ2】のようにさまざまな投資対象に分散したオーソドックスなバランスファンドを1本購入してみましょう。「損する可能性がある」を低く抑える効果がありますが、損をする可能性をゼロにするものではありません。



だから、ほったらかさない


投資をしている間じゅうは、その資金を提供し続けて良いかを確認します。自分の考えに沿って、「資本を投じるに値する」かどうかを。


とはいえ、年がら年中、株価や投資信託の基準価額を追いかける必要はありません。むしろ、頻繁に確認しなければならないような投資対象は、そもそも「資本を投じるに値する」といえない場合が多いでしょう。


また、「価格の変動に神経を使うのが嫌」という理由が多いようでしたが、「ほったらかさない」とは、価格の変動を見続けましょうと言っているのではありません。「資本を投じるに値する」と見い出した価値に、変化がないかどうかをチェックするのです。


定期検診で経験を積み立てる


年に1回程度の定期検診でも良いです。何かニュースがあったときだけでも良いです。その時の経済環境下で、私の大切な資産はどうなっているのだろう、と気にする程度から始めてみましょう。


株式投資なら、投資先企業の様子や業績を見ます。消費者目線で十分です。


投資信託なら、月次レポートを見てみましょう。毎月発行されるレポートですが、毎月熱心に見なくても大丈夫。例として挙げたバランスファンドの場合、レポートには、どの分野が好調でどの分野がイマイチだったのかが分かるように示されています。


【グラフ3】の例では、過去1年間は、国内株式と海外株式が資産価値を高めたことがわかります。安定運用と言われているはずの国内債券や、配当利回りが高いことが多いREIT(不動産投資信託)は不調でした。



それはどうしてだったのか、過去1年間の経済環境を振り返って考えてみます。


「低金利が続いていた」「円安だった」などのように、特に経済に詳しくなくても気づく程度の振り返りで十分です。オーソドックスなバランスファンドの場合、よほどのことがない限り、慌てて解約をする場面はないと思います。だから「ほったらかし投資」と呼ばれるのです。


定期検診は、解約をするために行うのではなく、どのような環境下でどのような価値の変動があったのかを理解するためです。この定期検診を続けることで「金融や投資に関する知識を持っていない」は解消されます。


積立投資は、資金を積み立てるだけでなく、投資経験も積み立てているのですよ。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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