あなたは、どこの金融機関で投資信託を買っていますか?
投資信託を取り扱っている主な金融機関は、証券会社、銀行、信用金庫、投資信託会社の直接販売など、業態はさまざまです。あなたは、取引金融機関に満足していますか?
何をもって「満足」とするかは人それぞれ。金融機関選びの指標として真っ先に思いつくのは、手数料でしょう。マネー情報では、低コストランキングばかりが目につきます。しかし、本当に顧客のためになるサービス提供は、良質な金融商品を提供したり、顧客の利益を優先したりする対応ではないでしょうか。
手数料がいくら安くても、利益を出す運用ができなければ、本末転倒です。
顧客の利益を優先しているか
金融庁は、「顧客の立場に立って、顧客の利益のために、良質な金融商品を提供する」という基準で、金融機関に目を光らせています。顧客本位に立っている金融機関かどうかは、取引顧客が妥当な利益を得ているかという点を判断基準にしています。
投資信託の販売の場合、金融庁が各金融機関に対し、顧客本位の業務の取り組み方針や、各金融機関が自主的に設定する顧客本位の指標(自主的KPI)、販売会社間で比較可能な指標(共通KPI)を公表するよう、要請しています。
しかし、これらの公表は金融庁からの強制ではなく、各金融機関の自主性に任されています。指標を公表している金融機関は、金融庁のホームページ(『顧客本位の業務運営に関する情報』)に掲載されています。ここに掲載されていれば、世間一般に信頼性が高いと認識されます。
販売姿勢の「見える化」
投資家が金融機関を選ぶには、金融機関同士を同じ基準で比較した方が良いわけです。手数料なら数字なので比較しやすいですが、顧客対応などサービスの側面は数値化しにくく、比較するのは困難です。
比較可能な共通KPIは、金融機関の販売姿勢の、いわば「見える化」。具体的な指標は、金融機関ごとの(1)顧客の損益状況、(2)売れ筋商品のコストとリターン、(3)リスクとリターンです。3つの指標の概要を【表1】にまとめました。
短期間での売買を繰り返していると、顧客の利益は伸びません。(1)の指標を算出する際の顧客の損益は、口座開設時からの累計ではなく、基準日時点で保有している投信の購入から基準日までの損益を用います。
また、(2)コストとリターン、(3)リスクとリターンの関係は、顧客がコストに見合った利益やリスクに見合った利益を得ているか、という指標です。負ったコストやリスクに対して利益を得ているかどうかを判断します。
運用会社直販は、利益率プラスの顧客が9割
先日、金融庁は、2023年3月末時点の指標を集計し、分析結果を発表しました。
2023年3月末時点で公表している金融機関217事業者の単純平均では、運用損益がプラスとなっている顧客の割合は68%でした。2022年3月末時点の79%から低下しました。
業態別の単純平均は、投資運用業者(6事業者)が91%と最も高く、最も低かったのは、証券会社(63事業者)の59%でした。主な業態別に、運用損益率がプラスの顧客の割合が高い事業者を【表2】でご紹介しましょう。
(2)コストに対するリターンの比率、(3)リスクに対するリターンの比率は、全公表事業者ベースで、どちらも2022年3月末に比べると低下しました。これは、1年間でリターンが低下した影響と思われます。
本稿では、共通KPIを公表した金融機関のデータを、金融庁がまとめた全体的な資料をご紹介しました。公表事業者は、各事業者のホームページ内「企業情報」などのページに詳しいデータを掲載しています。また、共通KPIのほかに、顧客本位の業務が伝わりやすい資料も独自に公表しています。
2018年3月末の初回から公表している金融機関の多くは、過去データも閲覧できます。顧客や投資家に向けて、図表を使ったりわかりやすい表現を使ったりして、工夫している金融機関が多い一方で、いまだ公表していない金融機関もあります。
繰り返しますが、自主KPIや共通KPIは、自主的に公表する指標です。堂々と「顧客の利益優先の結果」を掲載している事業者は、安心して取引できるといえるのではないでしょうか。
【参考】