2024年からNISA(少額投資非課税制度)が変わることをきっかけに、投資信託デビューをする人もいるでしょうね。「わからないからお任せで」と言わずに、少しずつ理解していきましょう。
今回は、投資信託に関わっている金融機関について、説明します。
銀行や証券会社は、投資信託の小売店
投信の場合、銀行・信金や証券会社は「販売会社」、いわば小売店です。投信という金融商品をメーカーから仕入れて、店頭に置いています。販売会社は、実店舗もあれば、インターネットやアプリなどのオンライン店舗もあります。
実店舗は、駅前や市街地などに店を構え、窓口の従業員が来店客に金融商品の説明をしたり顧客から相談を受けたりします。その結果、顧客が投信を購入すれば、販売手数料が入ります。
オンライン店舗の場合は、顧客が自分で情報収集し、わからないことはサイト内で調べたり動画の説明を視聴したり、コールセンターに問い合わせたりしなければなりません。店舗の経費が掛からないほか、購入までの情報収集や端末の操作を顧客自身が行なうため、投信の販売手数料は実店舗より安く設定されるのが通常です。
投資信託の運用会社は、メーカーのようなもの
一方、投信の運用を行なっているのは、「〇〇投信会社」「△△アセットマネジメント」などの社名の「運用会社」です。顧客の資金が小売店である販売会社から運用会社に集められます。投資家から集めた資金を大きな財布に入れ、その資金で株式や債券、REIT(不動産の投資証券)などを購入し、財布全体の資産価値を増やすことが運用会社の役割です。
運用会社にある財布は、1つではありません。運用のコンセプトごとに、それぞれ財布を用意します。この財布1つひとつが投信です。それぞれの投信について「ファンドの目的・方針」を定め、投信ごとに作成される「投資信託説明書(目論見書)」や簡易なパンフレットに記載しています。
運用会社は、投信のメーカーと言っても良いでしょう。メーカーが作った商品を、銀行・信金や証券会社などの小売店に置いているのです。どのメーカーのどのような商品を取り扱うかは、小売店が判断します。
以前の金融業界では、運用会社が銀行や証券会社の子会社になっていることが多く、小売店の品揃えは子会社であるメーカーの投信だけ、ということもありました。現在は、独立系や外資系など、さまざまな運用会社が参入しており、小売店には複数のメーカーの投信が並んでいます【図】。
なお、運用会社は、自社が運用している投信ごとに、定期的に運用報告を行なっています。
決算期ごとに作成する運用報告書には、投信の会計書類とともに詳細な運用報告がなされます。毎月の簡単な投資家向けレポートでは、運用状況とともに基準価額が変動した要因などを解説します。この月次レポートは直近の運用状況が分かるため、投資判断の参考になる資料です。
これらは、投資信託を購入する前に投資家に交付される「投資信託説明書(目論見書)」とともに、メーカーが自社商品について情報提供する貴重な資料ですので、投信の購入前に目を通すようにしましょう。
なお、運用会社の中には、自社が運用する投信を投資家に直接販売(直販)している運用会社もあります。
直販では銀行・信金、証券会社などを通さないため、投信の販売手数料がかからず、コスト意識の高い投資家から歓迎されています。また、投信に組み入れている上場会社の説明会や工場見学などの投資家向けイベント、運用状況説明会など、投資家と直接触れ合う機会を設けている運用会社もあります。
投資信託の運用資産は、信託銀行という金庫に保管されている
投信の資産は、1つの財布で数億円、数十億円、1兆円近くにもなるので、厳重に保管されていなければなりません。保管、すなわち金庫の役割を担うのは、資産管理を専門にする金融機関、信託銀行です。
信託銀行は、投信の資産を保管しているだけでなく、運用会社から委託されて運用対象の資産を売買しています。運用の判断は運用会社が行ない、信託銀行にその指示を出します。運用会社は「委託者」、信託銀行は「受託者」です。投資信託説明書(目論見書)」などの資料には、この表記がなされています。
なお、信託銀行に保管される投信の純資産は、信託銀行の財産とは別に管理されています。万が一、信託銀行が破綻したとしても、投信の純資産は信託銀行自身の財産とは別勘定で、保護される仕組みになっています。