ファイナンシャル・プランナーとして日ごろ家計相談に応じている筆者の肌感覚では、2024年からの新しいNISA(少額投資非課税制度)をきっかけに、初めて投資信託を買う人は相当数に上ると感じています。
気になるのは、NISAで積立投資を始めたいという方から時々聞かれる、インフルエンサーの動画やブログを鵜呑みにしたような発言。せっかくなので、基本をきちんと理解しませんか? そこで、不定期ですが、「投資ビギナーのための〇〇入門」シリーズをお届けします。第1回目は「投資ビギナーのためのインデックスファンド入門」です。
「インデックスファンド」とは
まるで「インデックスファンド」という名称の個別の投資信託があるかのような理解をしている方がいらっしゃいますが、インデックスファンドとは、インデックス運用を行なう投信の総称です。
インデックスとは、株式市場や債券市場などの金融市場全体や、あるカテゴリに属する株式や債券などのカテゴリ全体の値動きを示す指標。その指標の値動きに連動する運用がインデックス運用、その手法を使った投信が、インデックスファンドです。
インデックスファンドについては、「インデックスファンド、基本のキ」でも詳しく解説しています。
対象のインデックスが違えば、投信の性格も違う、運用の結果も違う
世の中には、たくさんのインデックスが存在します。
米国株なら「S&P500」、日本株なら「TOPIX(東証株価指数)」、新興国株は「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」が代表的です。さらに、債券市場やREIT(不動産投資信託)に連動するインデックスなどもあります。
また、世界の主要市場をひとまとめにしたインデックスもあります。例えば世界株なら「MSCIオール・カントリー・インデックス」や「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」。これらは、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社)やFTSE(フィナンシャル・タイムズ社とロンドン証券取引所の合弁会社)がそれぞれ算出している、世界の株式市場全体の値動きを示すインデックスです。
投信のタイプは、投資信託説明書(目論見書)の表紙にも書かれています【図表1】。
なお、【図表1】では、●●投信株式会社が運用する異なるタイプの投信を並べましたが、世界中の運用会社が、同じインデックスを対象にした投信をそれぞれ作っています。例えば米国株のS&P500について、「●●S&P500インデックス」「▲▲S&P500ファンド」「■■米国株オープン(S&P500)」というふうに、運用会社がそれぞれインデックスファンドを運用しています。
すべてのアクティブファンドが積極果敢なわけではない
インデックス運用に対してアクティブ運用は、「市場全体の指数(インデックス)を上回る値動きを目指す運用」と説明されます。しかし厳密には違います。アクティブファンドは、「インデックスの値動きに連動させる運用“ではない”」投信。その全てが、市場全体の動きを上回る運用を目指しているとは限りません。
例えば、投資信託説明書(目論見書)に「ファンド全体のリスク抑制を目指します」「高い収益を追求するのではなく、値下がり時の不安を軽減する、守りの運用を目指します」と書かれていても、アクティブファンドに位置づけられます。アクティブというと積極果敢に運用するイメージですが、インデックスより保守的な運用目標でも、アクティブファンドに位置づけられます。
ちなみに、投資信託協会の投信分類には「インデックスファンド」と「アクティブファンド」という分類はありません。投資信託約款や投資信託説明書(目論見書)の商品分類でも、「補足分類」として「インデックス型」は記載されますが、「アクティブ型」という記載はありません。
補足分類に「インデックス型」と明記していない投信は、「インデックスか、アクティブか」と問われた場合、便宜上、アクティブファンドになります。
インデックスファンドを束ねた「アクティブファンド」
最後に、誤解しやすい例をご紹介しましょう。じつはアクティブファンドなのに、インデックスファンドだと思われがちな投信があるのです。
先に紹介したように、世の中には様々なインデックスファンドが存在します。日本株、米国株、新興国株、国内債券、海外債券、国内REIT、海外REITなどのインデックスファンドを複数持っていれば、リスク分散になります。
ですが、それぞれの投資対象ごとに、どの投信が良いかを選ぶのは至難の業。そこで「様々な地域、資産のインデックスファンドを買い集めて、1本の投信になっていたらお手軽だよね」という発想が生まれます。
それは「バランス型」と呼ばれる、世界各国の複数の資産に分散する投信。投資形態は「ファミリーファンド」か「ファンド・オブ・ファンズ」。インデックスファンドを束ねた投信です。詳しくは『「ファミリーファンド」と「ファンド・オブ・ファンズ」』で説明しています。
特定の1つのインデックスではなく、複数のインデックスファンドを束ねて作った投信の多くは、アクティブファンドという位置づけです。「インデックスの値動きに連動させる運用“ではない”運用」になるからです。このような投信は、つみたてNISAの対象商品でも、「指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ運用投資信託等)」に分類されます。
一方、前述した「MSCIオール・カントリー・インデックス」や「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」は、世界中の株式市場をひとまとめにしたインデックスです。これら全世界株のインデックスに連動する投信は、インデックスファンドです。
一口に「インデックスファンド」と言っても、対象のインデックスが違えば、投信の性格も違いますし、運用の結果も違います。どの市場を反映したインデックスファンドなのかを理解し、その市場を取り巻く経済環境はどうなっているのかを考えて投資をしましょう。