11年ぶり高金利「個人向け国債 変動10年」

2024年からの新しいNISA(少額投資非課税制度)を控え、金融業界の「NISA祭り」が過熱しています。NISAは株式や株式投資信託が対象。価格変動リスクを取りたくない資金では、NISAを利用することができませんよ。


では、手堅く運用したい人はどうしたら良いでしょう。そのような方に、朗報です。最近は、変動金利の個人向け国債の金利が上向きになっています。


「個人向け国債 変動10年」とは


個人向け国債は国債の一種で、財務省が毎月発行しています。「国債は国の借金」と言われますが、政府が行なう事業の重要な資金源です。公共サービスに使われる資金を、投資家が期限付きで貸し付ける投資で、満期が来ると、投資家には額面金額が償還されます。


国債には様々な種類があります。個人向け国債は、その名の通り、購入できるのは個人のみ。通常の国債と比べて、個人投資家が利用しやすい特徴です。販売窓口は銀行、証券会社などの金融機関。最低1万円から、1万円単位で購入できます。


個人向け国債は、「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類。いずれも、償還日までの間は年に2回の金利を受け取れるので、資産運用に利用されています。金融市場の金利によって半年ごとに国債の利率が見直されるのが「変動10年」。「固定5年」「固定3年」は、発行時に決まった利率が償還まで適用されます。


個人向け国債の詳しい説明や、利率の決まり方については、『個人向け国債「変動10年」の利率が7年半ぶり高水準』をご参照ください。


資金が確実に償還される可能性


前述の通り、個人向け国債「変動10年」は、半年ごとに適用利率が見直されます。利率を決める前月までに行われた10年固定利付国債の入札を参照し、落札された平均利回りが「基準金利」となります。この「基準金利」に0.66を掛けた値が、個人向け国債「変動10年」の利率となります。


2023年は、みなさんが実感している通り物価が上昇し、それに伴い市場金利も上昇しました。毎月発行されている個人向け国債「変動10年」について、募集前に決まる最初の半年間の適用利率、および基準金利の推移を【グラフ1】に示しました。



個人向け国債の利率は、最低ラインが決められており、年0.05%です。市場金利がマイナスだった時期を基準にした利払時期(2016年10月~2017年6月、2019年9月~2020年10月)でも、個人向け国債は年0.05%の利子を受け取ることができました。


2022年9月の利払いは、約6年ぶりに0.1%台に乗りました。2023年には適用利率が徐々に上昇しています。執筆時点で2024年6月利払分(2023年12月16日~2024年6月15日)の適用利率が公表されており、年0.6%となっています。


ゼロ金利時代を含む10年間の利子はどうだったか


では、約10年前に「個人向け国債 変動10年」を購入していたとしたら、どれだけの利子を受け取ることができたでしょうか。


【グラフ2】は、2024年6月15日に償還を迎える「個人向け国債 変動10年 第50回債」の受取利子(税引後)と基準利率の推移です。2014年6月16日に発行されたこの国債を、額面100万円購入した投資家は、半年ごとに棒グラフで示された金額を受け取っています。最後の半年間の適用利率は、すでに年0.6%に決まっています。最後の2024年6月15日に、半年分の利子として税引後2,390円が受け取れる予定です。




10年間、この個人向け国債を持ち続ける間、基準金利がマイナスになる2回の場面を挟み、最低保証である年0.05%が適用される利子を10回受け取っています。


なんと、10年間の運用中、半分の期間が最低保証の利率。当時は定期預金金利が0.015%でしたから、約3倍の利率です。利率の最低保証ルールが効いていましたね。


この個人向け国債を10年間持ち続けた投資家は、合計12,184円の利子を受け取ることになります。


「超低金利」と言われる時期をくぐり抜けてきた「変動10年 第50回債」。あと半年で償還を迎えるわけですが、振り返ってみるといかがでしょうか。実際に購入した投資家は、変動金利の特徴を体験できたことでしょう。


「低金利だから、NISAをやらなければ損」といったトーンが声高になっていますが、金利上昇場面においては、変動金利の金融商品は選択肢の一つになり得ます。リスクを取りたくない人や、NISAとは別に安全性重視の運用先として、検討してみてはいかがでしょうか。




【関連記事】『個人向け国債「変動10年」の利率が7年半ぶり高水準


【関連サイト】個人向け国債(財務省)


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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