特定の銘柄の値動きを追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は九州電力を取り上げます。証券コードは9508で、プライム市場に上場しています。
2024年に入って株価が急上昇
まずは、九州電力の値動きを見てみましょう。
2024年に入ってから、強い動きが長期にわたって続いています。2023年の年末の株価は1021.0円でした。2024年5月29日の終値は1880.5円で、この間の上昇率は84%となっています。
TSMCの熊本進出で注目度が高まる
株式市場で九州電力の注目度が高まった要因の一つは、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出です。TSMCは2月に、日本初の生産拠点となる熊本工場を稼働させました。巨大な工場ができたことで九州経済への恩恵が期待され、関連ニュースが大きく取り上げられた際には、同社や九州フィナンシャルグループ(7180)などが人気化しました。
半導体工場では大量に電力を消費するとの期待から、同社株はその後も上昇が継続しました。折しも国内では次世代半導体の開発・量産を目指して設立されたラピダスが北海道を拠点とすることが伝わったことから、電力株の中でも九州電力と北海道電力(9509)は「隠れ半導体関連」といった見方が強まり、上昇基調を強めていきました。
24.3期は最終黒字に転換
業績の方も好調で、1月の3Q決算発表時には通期の利益見通しを引き上げています。24.3期の着地は最終損益が1664億円の黒字となり、23.3期の564億円の赤字から黒字転換を達成しました。1月に引き上げた見通しの1500億円も上回りました。
今25.3期の計画は最終利益が前の期比52%減の800億円と大幅減益見通しとなりましたが、市場の期待は上回ったことから売り材料とはなりませんでした。
過熱感はあるものの期待値も高い
九州電力の5月29日の終値は1880.5円でした。100株単位で最低購入代金は18万8050円となります。今回はこのタイミングで購入したと仮定して、1カ月後の株価と見比べます。6月29日は土曜日ですので、7月1日(月)の株価と比較します。手数料・税金等は考慮しません。
こちらは日足のチャートですが、最近では半導体需要増の恩恵を受けるという成長性と、電力株本来が持つディフェンシブ性の両面を持つ銘柄として人気になっている分、日々の値幅が大きくなることも増えています。その点では過熱感がないとは言えません。
一方、株価は高値圏にあって今期は大幅最終減益見通しにもかかわらずPERは10倍台前半で、バリュエーション面ではそこまで割高ではありません。今期見通しのハードルを低くしている分、先々では業績上方修正などの期待も高まります。
一時的な急騰にすぎないのか、それとも電力株に対する評価がさらに良くなってくるのか、非常に興味深い局面です。北海道電力や東京電力ホールディングス(9501)、関西電力(9503)など他の電力株がここからどう動いてくるかも要注目です。