過去の「あの銘柄を買ってみた!」で取り上げた銘柄について、その後の値動きがどうなったかを追跡します。今回は、2024年10月に取り上げた三菱重工(7011)、川崎重工(7012)、IHI(7013)の防衛大手3社について見ていきます。
3銘柄そろって一段高
2025年3月19日の終値は、三菱重工が2890.5円、川崎重工が9847円、IHIが1万1750円でした。
2024年11月8日終値との比較では、三菱重工が+24.1%、川崎重工が+40.1%、IHIが+28.2%となっています。
2024年10月2日から値動きを見た1カ月間でも3銘柄がそろって強い動きとなりましたが、高くなった1カ月後の終値で購入したとしても、そこから一段高となっています。なお、2024年10月2日との比較では、三菱重工が+30.8%、川崎重工が+57.7%、IHIが+53.1%となっています。
「トランプ・リスク」の高まりから防衛関連の存在感が増す
防衛関連銘柄に関しては、トランプ氏が米国の大統領に就任して以降、株式市場における存在感が高まりました。トランプ大統領はロシアとウクライナの停戦に注力していますが、その対応がロシア寄りと受け止められたことや、ホワイトハウスでの「トランプーゼレンスキー会談」が物別れに終わったことなどから、軍事的緊張が高まりました。
欧州でも防衛力強化の話が出てきており、これらを材料に日本では3月に入って3銘柄がそろって騰勢を強めています。最近では3銘柄が全市場の売買代金トップ3を独占する日もありました。
右肩上がりの上昇が続いた川崎重工
3銘柄の中で、右肩上がりの上昇が続いたのが川崎重工です。防衛関連としてはまず三菱重工が注目されますが、IHIも決算を材料に派手な動きを見せましたので、この2銘柄は日々の売買代金が高水準となることも多くなっています。川崎重工は株式市場での注目度は若干見劣りするものの、その分、過熱感もそれほど高まらず、着実に水準を切り上げています。2025年に入って3月18日の取引時間中には一時1万円の大台を上回りました。
三菱重工やIHIは3月に急伸
三菱重工やIHIは2024年の11月から2025年にかけては一進一退となり、三菱重工は2月は月間でやや大きめの下落となりました。先んじて上昇していた分、天井感も意識されました。しかし、3月に入って防衛関連の注目度が高まった局面では上に値幅が出る日が多くなっており、それまでとは動きが一変しています。
IHIは3月4日に1万円の大台を突破すると、3月18日には一時1万2000円台まで上昇する場面がありました。
株価上昇で分割期待も高まる
この先も株価の上昇が続くかどうかについては、軍事的緊張が今以上に高まるかどうか、各国が防衛力を一段と高めていくかどうかといった点が重要になってきます。3月に入ってからの株価急伸に関しては、防衛関連くらいしか資金の振り向け先が見当たらないくらい他の銘柄が買いづらくなったという消極的理由もあると思われます。株式市場で別のテーマが浮上してくれば、防衛関連は直近で強く買われた分、利益確定売りが強めに出てくる展開も想定されます。
一方、トランプ政権の政策などから不確実性がさらに強まるようであれば、防衛関連はさらに買われやすい銘柄となる可能性もあります。
外部環境だけではなく、各社のリリースも注目されます。三菱重工は2024年に1:10の株式分割を実施しています。株価上昇によって最低売買金額の水準が切り上がった川崎重工やIHIも、株式分割に対する期待が高まります。増配や自社株買いといった株主還元強化策を積極的に打ち出してくるようなら、業界全体の評価がさらに高まってくるでしょう。
また、これらは防衛関連として株式市場で人気になっていますが、インフラなど防衛以外の分野も手掛けています。ラリーが一巡した後は、防衛というテーマ以外にも買える要素があるかどうか、経営効率を高める動きが見られるかという点も、株価を見る上で重要になってくると思われます。