【日本株ピックアップ】キッコーマン:千葉県発の世界的醤油メーカー

日本食が世界的に受け入れられており、現在はいわば日本食ブームともいえる状況です。代表的な食べ物と言えば「すし」ですね。欧米では生魚を食べる文化がありませんでしたが、今では米国で数多くのすし屋が展開されています。日本食が広まっていくのは日本人としてもうれしいところです。


日本食、特に和食に欠かせない調味料として「だし」「塩」「みりん」「味噌」「醤油」などが挙げられます。和食は素材の味を大事にするといった日本独自の食文化なので、食材本来の味を邪魔しないような調味料が多いですよね。


なお、今使われているような醤油の原型が誕生したのは鎌倉時代と言われています。味噌を作ろうとしていたところ、謎の液体が出てきたことが始まりだとかなんとか。江戸時代には濃口醤油の生産が始まり、その生産地として選ばれたのが現在の千葉県野田市です。


野田は平野で、河川もあるので原材料となる大豆や小麦を育てやすかったことなどが理由とされています。当時の主な物資輸送は船だったので、江戸川から各地に運ぶことができたのも大きいといえますね。ちなみに、東武アーバンパークラインの野田市駅で下車すると、駅周辺には醤油工場が広がっています。


出所:野田市ホームページ


江戸時代から始まったキッコーマンの醤油づくり

江戸時代からキッコーマンという会社があったというわけではありませんが、前述のとおり野田では醤油生産が盛んでした。その後、1917年に野田のしょうゆ醸造家一族が合同し野田醤油株式会社が設立されることとなります。これがキッコーマンの前身となる会社です。


当時、野田醤油株式会社では醤油の商標が200以上あったそうですが、1940年には全国でキッコーマンに商標が統一されました。そして1964年にキッコーマン醤油株式会社へ、1980年に現在のキッコーマン株式会社となりました。ちなみに、商標の由来は亀の甲羅である「亀甲」、亀は長生きする動物「亀は万(萬)年」からきています。同社の説明では、醤油づくりを通して、みんなの健康や幸せに役立ちたいという願いが込められているとのこと。社名は奥が深いですね。


醤油は世界的調味料へ

日本の魂ともいえる醤油は、日本食ブームの追い風もあって海外での消費量が増えています。もちろん醤油単体で使うこともありますが、特に米国では「Teriyaki(テリヤキ)」が非常に人気のようです。


日本でいう照り焼きは、しょうゆをベースとした甘辛いタレを食材に塗って焼く方法です。一方、米国ではテリヤキソースという調味料に分類されており、日本人が思い描く照り焼きとは少し違います。とはいっても、醤油を使った調味料が海外で定着しているのはなんだか嬉しい気持ちになりますよね。



なお、キッコーマンは欧州、アジア・オセアニア、南米にも進出しており「キッコーマンしょうゆをグローバルスタンダードの調味料にする」といった会社の計画が着々と進められています。醤油を通して、社名の由来にもある「健康や幸せ」が世界中に広がることを願ってやみません。


気になる業績については下のグラフのように推移しています。



21年3月期に会計基準を変更した影響などから、一瞬売り上げが減少している時期もあります。一方で利益は着実に増加しており、コロナ禍だった20年3月期、21年3月期も増益。24年4月期は大きく利益が増加していますね。売り上げの順調な増加などが利益の増加につながっています。


<週足チャート>

出所:トレーダーズ・ウェブ


ちなみに、24年3月期では売上収益6608億円のうち国内が1575億円、海外が5090億円です。日本よりも海外の方が3倍以上なのは驚きですよね。キッコーマンは醤油だけでなく、さまざまな調味料や豆乳なども手掛けています。子会社にはケチャップ大手のデルモンテ、マンズワインなど、大豆以外の食品、医薬品を手がけるキッコーマンバイオケミファなど、手がける分野は幅広いですね。日本の食文化を先頭で発信し続ける企業として、今後も要注目です。



日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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