日本証券業協会では、3年に1度、「証券投資に関する全国調査」を行ない、国民の投資についての現状や意識などを調べています。本コラムでは、2024年6月~7月に18歳以上の全国7,000名に対して実施した調査結果を4回に分けて紹介しています。最終回の今回は、証券の保有額、地域別の保有率、インターネット取引の利用についてお伝えします。
みなさんは、投資にいくら回しているのか
「投資はどれくらいまでやったらいいの?」とよく聞かれます。このご質問に対しては、一言で答えることは難しいです。その方の資産全体の額や資産の配分、収入の有無や多寡、生活費や将来の支出、家族構成、さらにはご本人の価値観や性格などによって、適切な投資金額が決まるものだからです。
とはいえ、「みなさんどれぐらい投資に回しているか」が気になる方は多いようです。
2024年度の「証券投資に関する全国調査」によると、有価証券(株式、投資信託、公社債)を保有している1,719人の保有額は、「100万円~300万円未満」が最多で22.8%。72.3%の人が500万円未満となっています【グラフ1】。
全体としては、まんべんなく幅広い金額に分布していると言って良いでしょう。このように、「みなさんどのぐらい投資をしているのか」と聞かれても「まちまちです」としか答えようがありません。なお、この分布の傾向は、2021年度の前回調査とほぼ変わりありませんでした。
地域別では、沖縄の株式保有率が2.65倍に
全回答者7,000人のうち、株式、投資信託、公社債のいずれかでも有価証券を保有している人は24.1%。種類別に見ると、株式が14.1%、投資信託が12.6%、公社債が2.3%でした。
これらは地域別に集計されています。株式、投資信託、公社債のそれぞれについて、保有率の高い3地域を【表】にまとめてみました。
なお、日本証券業協会がこの調査で採用した地域区分のうち、【表】中の地域は以下のとおりです。
「京浜」=東京特別区、武蔵野市、三鷹市、横浜市、川崎市。
「阪神」=大阪市、堺市、豊中市、吹田市、守口市、八尾市、寝屋川市、東大阪市、池田市、神戸市、尼崎市、明石市、西宮市、伊丹市、芦屋市。
「東海」=岐阜県、静岡県、愛知県、三重県。
「中国」=鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県。
「四国」=徳島県、香川県、愛媛県、高知県。
「北陸」=富山県、石川県、福井県。
「関東」=茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、京浜ブロック以外の東京都・神奈川県。
京浜地域は、3種類の有価証券のすべてがベスト3入り。北海道と東北は、どの有価証券も他の地域より保有率が低めです。株式は3大都市圏での保有率が高く、中国、四国、九州の3地域は、株式より投資信託の保有率が高くなっていました。
これらを2021年度の前回調査と比較すると、以下の点が目立ちました。
株式の保有率が急拡大したのが沖縄(沖縄県)です。前回4.3%が今回11.4%へと2.65倍になりました。また、株式保有率第2位の阪神は、前回の13.9%から18.7%へと拡大しています。投資信託は、多くの地域で増加した中、東北(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)と北陸では、前回調査より保有率が低下しました。
若年層は9割近くがインターネット取引
最後は、証券会社の取引方法です。現在証券会社と取引をしている1,045人のうち、「店頭営業員との対面、店舗等への電話」で取引をしている人は34.0%で、前回調査の42.8%から減少しています。「PCやタブレットからのインターネット取引」は31.6%。前回は30.1%で微増です。「スマホからのインターネット取引」という人は28.1%、前回は20.1%でした。
このうち、「店頭営業員との対面、店舗等への電話」と「PC・タブレット・スマホからのインターネット取引」を年齢層別に集計したものが【グラフ2】です。
見事に傾向が出ています。60歳代を境に、若年層はインターネット取引、高齢者層は対面や電話での取引となっています。前回調査との比較では、全ての年代でインターネットでの取引が増加していました。特に50代については、前回調査ではインターネット取引が56.6%でしたが、今回は71.2%にまで増えています。
また別の質問では、証券会社に対するイメージを尋ねており、「敷居が高い」と回答した人が前回調査の42.1%から40.1%に減少しています。取引単位や手数料の引下げなども影響しているかと思いますが、インターネットで取引する人が増えたことも一因ではないかと考えています。
【出典】日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」