トランプトレードと「有事の金」の一週間を振り返る

日本時間2024年11月6日、当初の接戦予測を覆し、「激戦州」で早々とトランプ氏有利の報道が目立ち始めます。6日夕方にはフロリダ州でトランプ氏が勝利宣言を行いました。翌日には対抗馬のカマラ・ハリス候補が敗北宣言を行い、トランプ氏の勝利が衆目一致のものとなります。


筆者は現在、金やプラチナなどの貴金属関連の仕事を多く受け持っています。本来の金は「有事の金」と呼ばれ、株や投資信託などの伝統的資産が下落した際、代わりに上昇する特徴がありました。いわゆる代替資産としての役割です。トランプ氏の再選決定により、アメリカは株高を迎えています。いわゆるトランプトレードです。その状況のなか、オルタナティブ資産のひとつである貴金属の動きはどうなっていたのでしょうか。


2024年になって「有事の金」はどうなったのか

有事の金には2つのリスクがあります。1つは戦争リスクです。2024年はロシアによるウクライナ侵攻と、中東のイスラエルによるガザ侵攻がありました。後者はイスラエルとイランとの紛争に発展し、一時的な緊張緩和はあれど、余談を許さない状況が続いています。


もうひとつは金利リスクです。本来、金利が上がると景気が落ち込むため、代替的資産である貴金属は上昇します。2024年、アメリカは秋にかけて政策金利の引き下げを何度も示唆し、市場は一喜一憂しました。


 

引用:なんぼや


2024年における金の上昇は、3月と10月に伸びています。前者はイスラエルのガザ侵攻、後者はFRB(連邦準備制度理事会)による金利引き下げのタイミングと合致します。ただ、そのあとの横ばいの期間、かつ11月以降の下落を見ると、戦争リスクも金利引き下げリスクも「織り込み済み」となっていることも読み取れます。


そのうえで、トランプトレードのとき、金の価格がどのように動いたかをあらためて見ていきましょう。


トランプトレードと金価格の推移


 

引用:なんぼや


11月7日に金は前日の選挙結果を受けて下落します。ただ翌8日には戻り、数日横ばいで動いた後、12日にかけて下落しました。トランプ氏の大統領復帰は戦争リスク、金利リスクではないですが、トランプトレードを受けた投資家がそれぞれの思惑で売買を進めた結果もみ合いとなり、12日に確定売りで一気に下落したと考えられます。金は代替資産ではなく、伝統的資産と一緒に上がり、一緒に下がる投資商品という定義の方が近いものです。


トランプトレードは空前の株高となっており、本来ならば金は大統領選の直後に大きく下落しているはずです。かつ11月のFOMCにて利下げが決定されており、本来ならば二重(株高+利下げ)の効果で著しく下がるはずです。貴金属の価格があらたな傾向のもとで動きを見せていることがわかります。


これから貴金属はどうなるのか

これから貴金属はどうなるのでしょうか。大統領選直後の動きのように、当面は選挙による株高の影響があまりなく、貴金属自体が期待できれば上昇、リスクが生じれば下落の動きが進むでしょう。


週が明けて、トランプ新政権は対中強硬派を政権中枢の大臣に招き入れようとしています。トランプ氏は中国を念頭に高い関税率を示唆している点と、4年間が空いたものの同氏が2期目となり再選を気にしなくていいことを考えると、大胆な経済策を進めることは十分に考えられます。


株高をはじめ、アメリカの景気浮揚効果があると市場が判断すれば貴金属は上がり、定期的に確定売りによる下落、という構図が繰り返されることになると予測されます。2024年に継続して見せている貴金属の動きです。確定売りを含めて考察すると、おのずから価格幅としてのボラティリティも大きくなるのではないでしょうか。



また2025年におよぶ長期的な視点でみると、トランプ氏の主張ベースではなく、アメリカ議会において、今回解説したような貴金属価格の推進になる、もしくは下落要因となる政策が打ち出されるかが論点となるでしょう。ただ大統領選と同時に実施された下院選において、共和党は多数派を維持する見通しです。既に多数派の上院と合わせ、ブルームバーグは「共和党が三冠を達成」と報じています。


共和党がアメリカ国内政治のパワーバランスにおいて主役になれば、現在同党のイニシアティブはトランプ氏であるため、景気浮揚戦略と保護主義が推進されます。貴金属においても高騰局面が続くと考えられるでしょう。


なお、同氏が現時点で紛争が発生しているところに積極的な介入を見せるならば、「織り込み済みとなっていない」戦争リスクが可視化され、貴金属の動きをより複雑にすることも予測されます。その点は、いま見えていないことを予測して、あらためて趨勢を読むことが重要です。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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