「金利ある世界」に入り、ますます個人向け国債「変動10年」の魅力が高まっています。2025年2月発行の個人向け国債「変動10年(第179回)」の初回金利(2025年3月16日から9月15日までの半年分)は、年利率0.83%に決まりました。
個人向け国債とは
個人向け国債は国債の一種で、財務省が毎月発行しています。「国債は国の借金」と言われますが、政府が行なう事業の重要な資金源です。公共サービスのために投資家が期限付きで提供するお金で、期限が満了すると投資家に額面金額が償還されます。償還日までの間は年に2回の利子を受け取れるので、資産運用に利用されています。
個人向け国債は、通常の国債に比べて、個人投資家が利用しやすいようになっています。販売窓口は銀行、証券会社などの金融機関。最低1万円から、1万円単位で購入できます。
個人向け国債の中途換金は、通常の国債と異なり、元本割れのリスクがありません。国が額面金額で買い取ります。ただし、発行後1年経過していなければ中途換金はできず、直前に受け取った2回分の手取り利子が差し引かれるルールです。なお、災害救助法が適用される自然災害の被害者や死亡者は、発行後1年が経っていなくても中途換金が可能です。
個人向け国債は「固定3年」「固定5年」と「変動10年」の3種類
個人向け国債は、償還までの期限と金利タイプが異なる3種類があります。3年と5年は、発行時に決められた金利が償還まで続く固定金利。10年は、半年ごとの金利情勢によって利率が見直される変動金利です【表】。
個人向け国債の金利は、「基準金利」を基に、市場の実勢金利から決められます。
「固定3年」は「基準金利」から0.03%を引いた利率、「固定5年」は0.05%を引いた利率です。「基準金利」は、3年・5年のそれぞれの利付国債市場の利回りを基にして、募集期間開始の2営業日前に定められます。
「変動10年」は、「基準金利」に0.66を掛けた値を適用利率とします。発行後最初の利子については募集期間開始日前の10年利付国債の平均落札利回りを「基準金利」とし、その後は半年ごとの利払い期間の前月までの平均落札利回りを「基準金利」とします。
低金利では相対的に有利、金利が上がれば利子が増える「変動10年」
3種類の個人向け国債は、いずれも利率の下限が年0.05%と決められています。これは低金利の時期に大きなメリットとなります。しばらく続いたマイナス金利の時期でも、個人向け国債の適用利率は年0.05%でした。他の金融商品より相対的に高い利回りが得られたのです。
2025年9月15日に償還を迎える個人向け国債「変動10年(第65回債)」で確認しましょう。【グラフ1】の棒グラフが、10年間における半年ごとの税引後の受取利子です。
【グラフ1】の赤い折れ線グラフがこの個人向け国債「変動10年」の適用利率です。青い折れ線グラフは基準金利。2017年3月や2019年9月~2021年3月利払い時は基準金利がマイナスでしたが、下限利率0.05%が適用されていることがわかります。
一方、日本銀行の金融政策が変更になってからというもの、市場金利が上昇し、半年ごとに適用利率が上がっています。これに伴い、利払い金額も半年ごとに増加。最後の1年間は、100万円の額面に対して2025年3月が2,430円、9月は3,306円を受け取れることが決まっています。10年間の利子合計は、15,053円となります。
現在の計算方式では過去最高の年0.83%に
変動金利は、「将来受け取れる金利が不確実」と考えるとデメリットになりますが、現在のような金利上昇のタイミングでは、受け取るたびに利子が増えるため、変動すること自体がメリットといえます。
【グラフ2】は「個人向け国債 変動10年」の基準金利と適用利率です。個人向け国債は毎月発行されていますので、適用利率も毎月発表されています。
2025年9月に利払いがある「変動10年」の適用利率は、0.83%(税引前)です。
2011年6月までに発行された「変動10年」は利率の計算が現在とは異なります。現在の適用利率の計算式である「(基準金利)×0.66」になってからの最高になりました。
今後、「変動10年」の適用利率がどうなるかは、日銀の金融政策の影響を受けます。さらなる利上げがあるかどうかは、国内の物価や景気、為替相場などにもよりますが、株式や株式投資信託は苦手だと考える人や、ポートフォリオ内で元本割れをしたくない資金の運用先として、選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。
【関連サイト】個人向け国債(財務省)