証券会社の口座乗っ取り、ネット証券は被害額の半分を補償へ 個人投資家の対処法とは

2025年初頭から、オンラインの証券会社の口座への不正アクセス被害や乗っ取り被害が急激に増加しました。5月に証券会社10社は補償をする方針であることを明らかにし、ネット証券会社の多くは50%を補償、対面型証券会社のほとんどは原則原状回復と対応が分かれています。

「ネット証券会社を使っているけど、乗っ取り被害が不安」という個人投資家は多いでしょう。


今回は、証券会社の口座乗っ取り被害と証券会社の補償について、個人投資家の対処法を解説していきます。


証券会社の口座乗っ取り、ネット証券と対面型証券会社で補償が異なる

2025年初頭から続いている証券会社の口座乗っ取り被害は、保有する有価証券が第三者の不正アクセスにより勝手に売却され、別の有価証券が購入されているといった事例が確認されています。

4月に被害件数がピークに達し、不正アクセス件数は5,407件、不正取引件数は2,970件に上りました。


 

出典:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引による被害が急増しています」


5月には日本証券業協会は証券会社10社が補償をすることを公表しました。

補償の内容は、ネット証券は50%を補償する証券会社が多く、対面型証券会社は原則原状回復と発表されています。

ただし、ネット証券会社の中でも三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム証券)は、「個別の事情に応じて原状回復を含めて対応」と発表しています。


主なネット証券会社の補償について詳しく見ていきましょう。


出典:楽天証券SBI証券マネックス証券松井証券ホームページより


続いて、対面型証券会社の補償は以下の通りです。


出典:野村證券大和証券三菱UFJモルガン・スタンレー証券ホームページより


対面型証券会社では、顧客の過失やワンタイムパスワード設定の設定有無などが判断材料となる企業もあります。利用している方は、セキュリティ設定を確認し多要素認証など最新のものに対応しておきましょう。


証券口座乗っ取り補償により各社が損失計上へ

2025年7月SBIホールディングスと楽天証券は、証券口座の乗っ取り事件による補償について特別損失を計上すると発表しました。SBIホールディングス(傘下にSBI証券)被害に遭った顧客への金銭補償で80億円程度計上する見通しで、楽天証券は2025年1~6月期連結決算で10億5800万円の特別損失を計上しています。


野村ホールディングスは傘下に野村証券があり、被害対応の費用として66億円を計上したことを第1四半期の決算とともに発表しました。

ネット証券会社の2025年4~6月期決算においては、主要5社のうち4社が減益となっています。


なお、2025年8月15日のBloombergでは、「日本証券業協会内部組織のインターネット証券評議会で口座乗っ取り後の売買で不正に利益を上げている口座特定の可否や、特定した場合の対処方法について検討を始める方向で調整」と報道されています。



個人投資家はどう対処すれば良いのか

個人投資家としてまずできることは多要素認証、定期的にID・パスワードを変えるなどセキュリティ対策を万全にしておくことです。

口座がある証券会社のログイン・取り引き時の設定を確認し、まだ設定していない場合はセキュリティを強化しておきましょう。


個人投資家にとって、ネット証券は対面型証券会社より手数料が安く気軽に取り引きできることなどが支持され、若年層を中心に口座数を増やしてきました。


しかし今回の乗っ取り被害への補償という点においては、基本的に原状回復をする対面型証券会社に軍配が上がるでしょう。

対面型証券会社はネット証券会社より手数料が高いものの、店舗があり営業担当者と連絡が取れることが顧客にとってメリットとなりますので自身で投資対象や方針を決めコストをおさえるネット証券会社とはビジネスモデルが異なります。


「乗っ取り被害の補償が、手数料などコストの安さよりも気になる」という方は、対面型証券会社に移行するという選択肢もあります。ただし、5月以降は証券会社がセキュリティ対策を行ったため被害件数が減少傾向にありますので「迷っている」という方は今後の動向を見守っていきましょう。


口座乗っ取り被害だけではなく、リスク分散のためにも証券会社はある程度分けた方が良いと言われています。

「面倒だから」と全ての金融資産を1つの証券会社に預託する行為は、リスクが高いためおすすめできません。

1つの証券会社にまとめている方は「iDeCoはA証券会社、NISAはB証券会社」「住宅資金と老後の備えで証券会社を分ける」といった使い分けを検討してみましょう。


ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

大学在学中に2級FP技能士の資格を取得、CFP(R) 全科目合格。 会社員を経て独立し、金融・投資・相続・法律などの記事を執筆している。 自身でも米国株やETF・投資信託等を運用中。

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