前回記事「投資や暗号資産の相談、投資詐欺などが増えています」では、特に「投資商品等」、「暗号資産(仮想通貨)」が増えていることをお伝えしました。今回は、全国の消費生活センター等や国民生活センターに寄せられている投資関係のトラブルについて見ていきましょう。
「ファンド型投資商品」と「デリバティブ取引」のトラブル相談が増えている
前回ご紹介した金融庁の「金融サービス利用者相談室」と同様、全国の消費生活センター等や国民生活センターでも、金融商品や投資のトラブル相談が増えています。消費生活センターは地方公共団体が運営し、国民生活センターは国が運営する、消費者問題に対応する機関です。全国の消費生活センター等や国民生活センターに寄せられた相談情報は、「PIO―NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)」と呼ばれるデータベースに蓄積されています。
PIO―NETによると、「金融・保険サービス」に分類される相談件数は、2023年度に大きく増えています。2021年度が57,881件だったのに対し、2022年度は60,525件。2023年度は2024年3月17日時点で60,635件です。年度末まであと2週間を残した時点で、前年度を超えています。
「金融・保険サービス」には、生命保険・損害保険等の保険、貯蓄・証券・債券、金融派生商品及び融資・振込・送金等の金融サービスなどが該当します。【グラフ1】は、これらのうちの「ファンド型投資商品」と「デリバティブ取引」に関する相談件数の推移です。
ファンド型投資商品・デリバティブ取引の相談事例
どちらも増加していますが、どのような内容の相談なのでしょうか。PIO―NETでは、国民生活センターが受け付けた最近の相談例を紹介しています。下記はその一例です。
【ファンド型投資商品】
●チャットアプリで勧誘されFX投資と金の先物取引で多額の代金を振込んだ。詐欺に遭ったため適した弁護士を紹介して欲しい。
●SNSで知り合った人物から投資話の勧誘をうけ、指示されたサイトに個人情報を登録したが怪しいと感じる。登録内容を削除したい。
●海外在住。SNSで知り合った現地女性から投資を勧められ、クレジットカードで金を購入し渡した。利益がなく返済できない。
●自分のSNSのアカウントに著名人を名乗り投資で儲ける手段があると投稿があった。金を振込むように言うが不審だ。信用できるか。
●友人が金利月5%元本保証の投資勧誘を受けているが詳細は全く不明らしい。怪しい勧誘だと思うがどうだろうか。
【デリバティブ取引】
●SNSで知り合った人から海外FXサイトを案内され口座を開設した。指示された個人口座に投資金を振り込んだが取り戻したい。
●マッチングアプリで知り合った外国人に投資を勧められ、個人口座に入金して詐欺と気付いた。個人情報の悪用が心配だ。
●FXの詐欺に遭い数百万円を振込んでしまった。警察や弁護士に相談したが被害回復は難しいと言われた。何かできることはあるか。
●SNSの勉強グループで勧められFX投資の取引所口座開設を申込んだが今躊躇している。渡した個人情報が心配だ。どうすべきか。
●マッチングサイトで知り合った人に金の投資を勧められ数回にわたり個人口座にお金を振込み詐欺と気付いた。返金して欲しい。
どれも、冷静になって考えれば「おかしい」と気づきそうですが、「儲かりそうだ」と舞い上がっている最中には、歯止めが利かなくなってしまうのでしょうか。
「高利回り」「値上がり確実」は怪しい
PIO―NETでは、勧誘や販売の手口ごとにも相談件数を集計しています。「金融・保険サービス」に関して、「利殖商法」という手口による相談件数の推移を【グラフ2】に示しました。
利殖商法とは、「高利回り」「値上がり確実」など、儲け話を強調して投資や出資を勧誘する手口です。3月17日時点で、前年度に比べて37%も多い相談件数が寄せられています。
「上場確実、必ず儲かります」「当方が後で高く買い取ります」「(投資商品であるのに)元本は保証します」「あなただけ特別です」などと持ち掛けられたら、疑うようにしましょう。それでもうっかり被害に遭ってしまったら、一人で悩まずに相談をすることです。
<困ったときの相談窓口>
《金融サービスに関するご相談》
●金融庁 金融サービス利用者相談室 0570-016811 平日 10:00-17:00
※IP 電話・PHS からは、03-5251-6811 におかけください。
《不審な電話などを受けたら》
●消費者ホットライン 局番なしの188(いやや!)
※原則、最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口などをご案内します。 相談できる時間帯は、相談窓口により異なります。
●警察相談専用電話 #9110 又は最寄りの警察署まで
※#9110は、原則、平日の 8:30-17:15
(※各都道府県警察本部で異なります。土日祝日・時間外は、24時間受付体制の一部の県警を除き、当直又は音声案内で対応)
【参考】「消費生活相談データベース」(国民生活センター)