過去最高の残高になった投資信託市場

2024年は途中大きく相場が動いた時期もありましたが、世界の株式市場が活況で、円安・外貨高にもなり、投資信託に資金が集まった1年になりました。一般社団法人 投資信託協会が取りまとめている国内籍の投資信託について、2024年12月末時点のデータが公表されましたので、ご紹介しましょう。


公募投信の残高は約246兆円、うち株式投信は約230兆円でともに最高額更新


投資信託協会では、毎月、投資信託の残高や資金の流出入などのさまざまなデータを集計し、公表しています。2024年12月末時点の「統計データ」や「投資信託概況」によると、国内籍の公募投信全体の純資産総額は、2ヵ月ぶりに増加に転じて246兆115億円となり、過去最高額を更新しました。前年末に比べて24.9%の増加です。


このうち、株式投信の純資産総額は230兆2,936億円で前年末比27.0%増、同じく過去最高額でした。さらにETF(上場投資信託)を除くベースでは140兆9,198億円で前年末比32.4%増、4カ月連続で最高額を更新しました。ETFの純資産総額は89兆3,738兆円で前年末比19.3%増。この残高は、2024年6月の89兆6,119億円、同年3月の89兆5,696億円に次ぐ3番目の高水準です。


公社債投信の純資産総額は15兆7,180億円、前年末比1.0%増となりました。


近年、残高を伸ばしているインデックス型投信の純資産総額は139兆4,837億円(ETFを含むベース)で、公募株式投信全体の純資産の60.6%を占めています。


なお、ここで集計している「国内籍の投資信託」とは、日本国内で設定されている投資信託のことで、投資対象は国内に限りません。


海外株式で運用する投信の残高が増えた


【グラフ1】は、国内籍の公募株式投信(ETFを含むベース)の純資産について、投資対象別に分類した残高内訳です。



投資対象の地域別に残高の割合を見ると、国内が47.3%、海外が27.8%、国内と海外のミックス(内外)が25.0%です。2023年12月末時点では国内が50.9%で、海外23.9%、内外25.2%でした。2024年は特に海外株を対象にする投信の残高が増え、海外を含む投信(投資対象が海外+内外の合計)で残高の過半を占めるようになりました。


10月までの2024年純資金流入額が、2023年1年間の2倍超に


2024年の国内籍公募投信市場は、全体的に純資産総額が拡大した年となりました。投信の残高が増える要因は、主に2つあります。1つは投資している証券などの値上がりや通貨高による時価の上昇です。もう1つは、投資家が投信を購入し、新たな資金が入ることです。


追加型投信は、日々、投資家による購入と解約が行なわれています。また、償還を迎える投信もあります。投資家が投信を購入すると、その金額分の残高が増えます。投資家が投信を解約したり、既存の投信が運用を終わらせ償還したりすると、残高は減少します。


2024年の公募株式投信全体では、購入による投信の設定から解約・償還を差し引いて16兆6,294億円の資金が流入しました。ETFを除くベースでは15兆3,411億円の純流入です。


【グラフ2】は、国内籍の公募株式投信のうちの主な投資対象の年間の資金動向です。プラスの年は、購入額が解約・償還の金額を上回ったことを示しています。



2024年は、海外株式で運用する投信への資金流入が急拡大した年でした。


過去を見ると、2013年からの国内株式の投信の純流入の背景には、アベノミクス相場がありました。2018年にはつみたてNISAがスタートし、純流入額が急増しました。その後、新型コロナウイルスの感染拡大で外出が控えられていた時期に沸き起こった投資ブームで海外株式の投信に資金が集まり、2024年の新NISAで拍車がかかった形になっています。


【参考サイト】

●一般社団法人 投資信託協会「統計データ」

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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