エムジーエム・リゾーツ、米国のカジノ大手
エムジーエム・リゾーツ(MGM)はラスベガスを代表するカジノ運営会社で、カジノリゾートを軸にエンターテインメント事業を手掛けています。米国でカジノ16カ所、マカオで2カ所を運営しています(2024年末時点)。
2024年12月期の売上高は前年比6.7%増の172億4100万ドルで、米国のカジノ銘柄で最大規模を誇ります。純利益は34.6%減の7億4700万ドルでした。
セグメント別ではラスベガス部門の売上高が0.2%増の88億1600万ドルと伸び悩みましたが、売上高全体に占める割合は51.1%で依然として5割を超えています。調整後EBITDAR(利払い・税引き・減価償却・賃借費控除前利益)は2.6%減の31億700万ドルで、依然として稼ぎ頭です。
ラスベガスで展開するカジノリゾートは「アリア」、「ベラージオ」、「コスモポリタン」、「MGMグランド」、「マンダレイベイ」、「ニューヨークニューヨーク」、「ルクソール」など。ラスベガス部門の特徴は何と言ってもカジノ事業の売上比率の低さです。カジノ事業の売上高は7.9%減の19億6000万ドルで、ラスベガス部門全体に占める割合は22.2%にとどまっています。この割合は年を追うごとに低下しており、ラスベガスがギャンブルの街からエンターテインメントの街に転身したことを象徴していると言えそうです。
ラスベガス部門ではホテルの客室売上高が31億5900万ドル、飲食が23億5700万ドルです。売上比率はそれぞれ35.8%、26.7%でカジノ事業を上回っています。このほかエンターテインメント・小売事業の売上高が13億4000万ドルで、売上比率は15.2%です。
地方部門はラスベガスを除く米国事業で構成されます。主なカジノ&ホテルには、「東海岸のラスベガス」と呼ばれるニュージャージー州アトランティックシティーの「ボルガータ」をはじめ、ミシガン州の「MGMグランド・デトロイト」、メリーランド州の「MGMナショナルハーバー」、マサチューセッツ州の「MGMスプリングフィールド」などがあります。
地方部門の売上高は0.9%増の37億2000万ドルで全体に占める割合は21.6%、調整後EBITDARは0.9%増の11億4400万ドルです。
マカオ部門は56.0%を出資する香港上場子会社、エムジーエム・チャイナを通じて展開しています。埋立地で巨大カジノが林立するマカオのコタイ地区への進出が後手に回り、マカオでは市場シェアで下位に沈んでいましたが、その後に巻き返し、3位に浮上しています。マカオ部門の売上高は27.5%増の40億2200万ドルで、全体に占める割合はそれぞれ23.3%です。調整後EBITDARは25.4%増の10億8700万ドルに達しています。
マカオ部門では売上高に占めるカジノ事業の割合は86.9%です。マカオのカジノ業界ではMICE(企業や団体の会議、旅行、展示会など)を強化し、ラスベガス型のエンターテインメント産業への転身を目指していますが、「ギャンブルの街」からの脱却には時間を要すると言えそうです。
シーザーズ・エンターテインメント、デジタル部門が成長エンジン
シーザーズ・エンターテインメント(CZR)は1973年に創業し、ネバダ州リノでエルドラド・ホテル・カジノを立ち上げてカジノビジネスに参入しました。2005年以降に企業合併・買収(M&A)を積極的に推し進め、2014年にMTRゲーミング・グループ、2017年にアイル・オブ・カプリ・カジノ、2018年にトロピカーナ・エンターテインメント、2020年にシーザース・エンターテインメント、2021年にウイリアム・ヒルを買収し、業容を拡大しました。2024年末現在、18州の53カ所でカジノを所有または運営しています。
主力事業はラスベガスを除く米国事業で構成する地方部門で、2024年12月期の売上高は前年比4.1%減の55億3900万ドル(売上比率49.3%)です。ネバダ州リノの「エルドラド・リゾート・カジノ」、メリーランド州にある「ホースシュー・ボルチモア」、ニュージャージー州にある「シーザーズ・アトランティックシティー」と「ハラーズ・アトランティックシティー」などが主なカジノです。
ラスベガス部門では「シーザーズ・パレス」、「クロムウェル」、「フラミンゴ」、「ハラーズ」、「ホースシュー」、「プラネット・ハリウッド」などのカジノリゾートを展開しています。2024年12月期の売上高は前年比4.4%減の42億7400万ドル、売上比率は38.0%です。
シーザーズ・エンターテインメントの成長エンジンはデジタル部門です。オフラインとオンラインのスポーツ賭博やポーカー事業、競馬事業、オンライン・カジノ事業などで構成されています。スポーツ賭博ではアメリカンフットボールのNFL、バスケットボールのNBA、アイスホッケーのNHL、野球のMLBなどの団体と提携しています。
ポーカー事業では世界最大のポーカートーナメント、「ワールド・シリーズ・オブ・ポーカー(WSOP)」を手掛けていましたが、2024年にブランドを売却しています。ただ、世界中からポーカープレーヤーが集まり、参加費1万ドルのメインイベントには1万人超がエントリーする巨大ビジネスだけに、今後20年の開催場所を決める権利はシーザーズ・エンターテインメントが保持します。
スポーツ賭博や競馬事業、オンライン・カジノ事業ではもちろん、モバイルアプリを通じてサービスを提供しています。デジタル部門の2024年12月期の売上高は前年比19.5%増の11億6300万ドルで、売上比率は10.3%に過ぎませんが、成長は続いています。