「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は2025年6月に上場した北里コーポレーション(368A 以下、北里コーポ)をみていきます。
同社は、不妊治療を行うための製品を開発・製造し、日本、欧州、米国、中国、インドなどの世界中のマーケットに自社製品を供給しています。
同社で扱う製品は、主に体外受精、顕微授精で利用する研究用試薬や医療機器であり、これらは高度生殖医療とも呼ばれており、一般的な不妊治療で使用する製品に比べて高度な専門性を必要とする製品とされています。
25.3期の地域別の売上高構成比は、日本33.9%、スペイン33.5%、米国9.9%、中国8.4%、インド4.5%、その他9.7%となっています。このように海外の販売地域はスペインに偏っており、特に米国市場の開拓を期待する声が出ていました。
同社の上場については、米国市場開拓などの潜在成長力が評価され、堅調な初値形成が予想されていました。一方で、「足元の業績が伸び悩んでいることを考慮すると、公開価格は割高にさえ感じる」との指摘もありました。では北里コーポの上場からの株価推移をみていきます。
北里コーポの株価推移(上場から2025年10月14日まで)
2025年6月25日に東証プライムに上場した同社の初値は2001円と公開価格1340円を大きく上回りました。上場初日は2158円まで上値を伸ばしましたが、その後は売りに押され終値は1812円となりました。なお、上場初日の高値2158円が現時点(2025年10月14日)での上場来高値となっています。
上場2日目からは売りに押される展開となり、上場3日目には1628円まで下落しました。その後は切り返しの動きとなり、7月14日に1975円まで上値を伸ばし、2000円の大台回復が期待されましたが、ここから下落トレンドに突入。ずるずると水準を切り下げ、株価は1500円台まで下落。そのタイミングで上場後初の決算発表を迎えます。
同社は2025年8月8日に26.3期1Q(4-6月)の決算を発表。連結営業利益は11億9500万円(前年同期比4.2%減)となりました。減益の要因は、製品構成の変化などにより売上原価率が上昇したことや、学会などの出展費用や認証に伴う支払報酬の増加などが挙げられています。
この決算を受けて翌営業日となる12日の株価は売り先行も終値では上昇しました。7月後半から株価が下げ続けていたので、いったん悪材料出尽くしとなったと思われます。
決算発表後は、一時的に切り返しの動きとなったものの、残念ながら続きません。その後は徐々に下値を切り下げる展開となり、10月14日に1353円まで下落。これが現時点(2025年10月14日)での上場来安値となっています。
【北里コーポの日足チャート(上場から2025年10月14日まで)】
今後について
同社は上場日に上場来高値を付け、その後に下値を切り下げて直近で上場来安値を更新、公開価格1340円割れが目前に迫っています。
26.3期1Q決算は小幅な増収と小幅な営業減益となり、懸念されていた業績の伸び悩みが確認されました。ただ、同社は26.3期通期の営業利益予想を53.7億円(前期比7.1%減)としていますので、1Qは計画通りの着地といえます。
26.3期1Qの地域別の売上高ですが、期待されている米国は2億4200万円(前年同期比6.0%増)でした。大きく伸びたのは、インドの1億4500万円(前年同期比2.2倍)、欧州の8億4400万円(前年同期比9.7%増)でした。
足もとの株価は公開価格近辺まで下落していますが、ここまで下げても今期の減益予想を考慮すると割安感は感じません。株価の本格的な上昇には、インドや欧州の売り上げがさらに伸びるなどにより、来期の増益期待が高まる必要があると考えます。