今回解説していく通貨は豪ドル米ドル(aud/usd)です。テクニカル面でみると、短期は上昇トレンド・中長期は下落トレンド内での推移となっていますが、足もとで短期・中長期とも現状のトレンドをブレイクするチャンスを迎えており、今後の推移が注目されます。また、ファンダメンタルズを確認すると豪州は穏やかな金融緩和局面にありますが、豪準備銀行(RBA)は今後緩和ペースをさらに減速させる可能性もありそうです。
今後の豪ドル円の相場焦点:豪中銀の利下げ観測が後退する可能性も
まずは豪州の現在の金融政策状況を確認していきます。
豪準備銀行(RBA)は2022年5月に金融引き締めを開始。2023年11月に政策金利を4.35%まで引き上げて、2025年2月から金融緩和局面へと移行。現在の政策金利は3.60%です。
●RBAは9月に開催された直近の会合で政策金利の据え置きを決めましたが、その際の声明文では
・これまでの金利引き下げの効果が十分に現れるまでにはしばらく時間がかかる
・引き続き慎重な姿勢を維持し、データの進展に応じて見通しを更新していくことが適切であると判断
・見通しに関する不確実性の高まりに引き続き警戒を強めている
などの見解が示されました。
また、RBAのブロック総裁は今月の講演で「コア物価上昇率が7-9月期に予想より上振れた可能性が最近のデータで示唆されている」「金融政策運営は追加利下げが必要かどうかいったん立ち止まって検討する時期になった」と言及。
金利先物市場では現在、年内あと1回程度の利下げをほぼ織り込んでいる状況ですが、RBAの追加利下げ観測が今後さらに後退していくことになるのか、インフレ指標などを確認しながら見極めていく必要がありそうです。
豪ドル円の週足分析:下落トレンドが継続も勢いは穏やかに
下図のチャートは豪ドル米ドルの週足チャートになります。

現状は2021年2月高値を始点とする下落トレンド(チャート上の青色実線)が続いていると想定されますが、その勢いは足もとで減速気味。2023年1月高値を始点とするより穏やかな下落トレンド(チャート上の黄色実線)と捉えることも可能で、こちらの方が現状に即しているでしょうか。
チャート下部に追加した「DMI」で確認しても現在は-DI>+DI(下落トレンド)を示唆。9月には一時上昇トレンドへの転換を示す場面もありましたが、長続きはしませんでした。
今後はトレンドラインの上抜けを狙う場面もありそうですが、トレンド転換の判断は慎重にいきたいところ。これまで何度か「だまし」があったことも考慮すると、やはり直近の高値超えを果たせるかがポイントになりそうです。注目は昨年9月につけた直近高値の0.6942米ドル(チャート上の丸で囲った部分)となるでしょう。
豪ドル円の日足分析:2月からの上昇トレンド継続に黄色信号?
ここからは短期的な視点から見ていきます。下図は豪ドル米ドルの日足チャート(27日執筆時点)。

4月の一時的な下振れを米関税ショックによる「ノイズ」と考えると、2月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)にあるようです。
ただ、足もとの豪ドル米ドルを確認すると9月半ばから上値を切り下げる展開となり、今月中旬になって「DMI」も-DI>+DI(下落トレンド)を示唆。ここからは9月からの短期的な下落が上昇トレンド内の調整局面に過ぎないのか、それともトレンドの転換を迎えつつあるのか、見極める必要があるでしょう。
ここでもポイントになるのは直近安値を維持できるかどうか。10月14日と17日に2度下げ止まった0.6440米ドル台(チャート上の丸で囲った部分)がカギを握ります。
今後の取引材料・変動要因をチェック:政府機関の閉鎖で米指標の発表は延期が続く
最後に今後1カ月間の重要イベントを確認しておきます。注目は豪米両国の金融政策。米連邦公開市場委員会(FOMC)は利下げ、豪準備銀行(RBA)理事会は金利据え置きとなる見込みですが、声明文などで今後の金融政策についての方針を確認しておきましょう。
また、米国に関しては政府機関の一部閉鎖によって経済指標の発表がすでに1カ月近く延期されています。再開がいつになるかも不透明で、米経済への影響も懸念されています。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
10月29日 豪州 7-9月期消費者物価指数(CPI)
10月29日 豪州 9月CPI
10月28-29日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)
11月3-4日 豪州 豪準備銀行(RBA)理事会
11月13日 豪州 10月豪雇用統計
11月26日 豪州 10月CPI



